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「プリベンション・イズ・ベター・ザン・キュア」

短編な。
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ジュセー @shiroboshi2

「プリベンション・イズ・ベター・ザン・キュア」 #S57Ninja

2015-10-05 21:22:37
ジュセー @shiroboshi2

その日、ストリート暮らしの少年カズキは、胡乱な老人と出会った。老人は兎角酒好きで、カズキに駄賃を渡し、酒を買わせた。釣りはとっておけ、と言いながら。みすぼらしい身なりの老人ではあったが、その目には確かな光が宿っていた。1 #S57Ninja

2015-10-05 21:27:51
@hiiragi_r_t_d

酒代どこから出てるんだろうね #S57NINJA

2015-10-05 21:31:28
ジュセー @shiroboshi2

老人はギスヤンキと名乗った。胡乱な態度とは打って変わった丁寧なアイサツだった。ギスヤンキは、己をニンジャだと言った。妙な説得力があった。彼はカズキにインストラクションをやる、俺様のアプレンティスにしてやる、と言った。カズキは断り、その日は住処へと帰った。2 #S57Ninja

2015-10-05 21:32:32
@hiiragi_r_t_d

普通は断る。アプレンティスって、コイツはザイバツの………? #S57NINJA

2015-10-05 21:33:26
ジュセー @shiroboshi2

翌日、カズキはギスヤンキの前を通り過ぎた。粗末なタタミに穴だらけのテントを張った、如何にもネオサイタマの浮浪者、といった住処だ。カズキは労働施設へと赴く。老人は、確かな光を携えた眼で、カズキを見ていた。その翌日も、またその翌日も、同じだ。3 #S57Ninja

2015-10-05 21:36:21
ジュセー @shiroboshi2

ある日、カズキは気まぐれからか、あるいはギスヤンキの眼光に射抜かれたか、再び彼の前で立ち止まった。老人は駄賃を渡し、酒を買ってこいと言った。釣りはとっておけ、と言いながら。カズキは酒を買い、釣りを懐に入れ、ギスヤンキの元へと戻った。4 #S57Ninja

2015-10-05 21:40:05
ジュセー @shiroboshi2

「それで。ギスヤンキ=サン、俺は何をすればいい」カズキは年齢不相応の落ち着き払った態度で、ギスヤンキと向かい合う。両親の稼ぎがなく、学校にもいけない彼は、幼い頃から労働施設でカネを貰い、生計を立てていた。知人はいれど、友人はいない。それが彼だ。6 #S57Ninja

2015-10-05 21:48:01
ジュセー @shiroboshi2

心が擦り切れた、というほど大袈裟なものではない。だが同年代の少年少女と比べると、その心が摩耗されていることは明らかだろう。「かっはっは……ガキのクセに、アサシンみてぇな眼をしてやがる……だからこそ俺様は、テメェをアプレンティスにしてやるってんだよ」7 #S57Ninja

2015-10-05 21:53:24
ジュセー @shiroboshi2

「何を。すればいい」「そうさなあ……ちょっとそこで、カラテ振るってみろぉ」「カラテ?」「そうだ、カラテだ……ア?カラテもわかんねぇのか?カラテってのはな、……イヤーッ!」ギスヤンキが立ち上がり、渾身の右ストレートをカズキに向けて放った。拳が彼の頬を掠める。8 #S57Ninja

2015-10-05 21:59:51
@hiiragi_r_t_d

工場勤めにカラテを求めるな #S57NINJA

2015-10-05 22:03:02
ジュセー @shiroboshi2

カズキの頬に、赤い筋が一筋走った。ギスヤンキが拳を引くと、カズキは無言で頬を拭い、そして「イヤーッ!」渾身の右ストレートをギスヤンキに放つ。「イヤーッ!」ギスヤンキはその腕を引っ掴むと、カズキの身体を勢いよく投げ飛ばす。「グワーッ!」彼は地を転がった。9 #S57Ninja

2015-10-05 22:04:23
ジュセー @shiroboshi2

「イディオット!先を読め先を!応用の効かねえガキだ!」ギスヤンキは腰を叩きながら座り込り、ゴワゴワとした白い髭を弄りだす。「ガキ、俺様に一撃当ててみろぉ。インストラクション・ワンは、カラテを知れ、だ!」「……」カズキは無言のまま、駆け出す。「イヤーッ!」10 #S57Ninja

2015-10-05 22:10:19
@hiiragi_r_t_d

ただの労働者にカラテを教えようと思ったらまずはそこからだよね〜 #S57NINJA

2015-10-05 22:11:51
ジュセー @shiroboshi2

「いいかあ、カラテを知ったならな」ギスヤンキは鼻血を拭い、言う。「インストラクション・ツーは……そうさなあ……死にかけてみろ……いや違うなこれは……ウーム」彼は腕を組み、何やらブツブツと独り言を呟きながら思案する。カズキは黙ってその様子を見つめる。12 #S57Ninja

2015-10-05 22:18:06
ジュセー @shiroboshi2

「インストラクション・ツーは……そうだな。敵を知れ、だ」「敵」「敵だ。いいかぁ、この世の中でな、テメェを救えるのはテメェだけだ、テメェのカラテだけだ……他はみんな敵だぁ。闇社会……ヤクザ……ソウカイヤ……そういうのが敵だぁ」カズキは無言で老人の言葉を聞く。13 #S57Ninja

2015-10-05 22:22:55
@hiiragi_r_t_d

ソウカイヤがまだある………この爺さん何者だ #S57NINJA

2015-10-05 22:24:49
ジュセー @shiroboshi2

「いいかあ、ガキ、ソウカイヤってのはマジでヤバイだ。一番の敵だ。それ以外は敵は敵だが、大したこたぁねぇ……オイ」ギスヤンキが手を差し出すようにジェスチャーする。カズキは手を差し出した。ギスヤンキの皺くちゃの手が、カズキの手に駄賃を握らせる。14 #S57Ninja

2015-10-05 22:26:56
ジュセー @shiroboshi2

ギスヤンキが何か言う前に、カズキは無言で立ち上がり、酒を買いに行く。「へっ、へっ……ようやく賢くなったな、少しだけな……」ギスヤンキは嗄れた声で呟くと、テントの中へと入る。「次のインストラクションは何にするか……あのガキはニンジャではないから……ウーム」15 #S57Ninja

2015-10-05 22:32:05
@hiiragi_r_t_d

…………もしかしてここまでのインストラクションって自主性を育むとかじゃねえだろうな #S57NINJA

2015-10-05 22:33:02
ジュセー @shiroboshi2

ギスヤンキは目を閉じ、思案する。実際のところ、彼がインストラクションを授けてきたのはカズキだけではない。これまでにも、様々な人間に、気まぐれに、インストラクションを授けてきた。だがギスヤンキの横暴に耐えきれずに逃げ出す者ばかりだった。カズキは違う。16 #S57Ninja

2015-10-05 22:36:36
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