DedicateToSkating ‏@DedicateSkatingさんによるエラジ・バルデ選手インタビュー・記事翻訳

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【エラジ・バルデ～ルーツをたどる旅】７月、Skate Canada に掲載されたビバリー・スミス氏執筆の記事です。エボラ出血熱が流行し政府が渡航自粛を求めるさなか、まだ見ぬ祖父を西アフリカ・ギニアまで訪ねた旅で彼が得たものとは・・・ pic.twitter.com/zIlHZ0XO8P

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①昨年２月の暑い日、エラジ・バルデは９９歳の祖父と対面し、ルーツに触れた。西アフリカ・ギニアの山あいの村のムスリム指導者（イマーム）の祖父とは生後２４年間会ったことがなかった。電気も水道も通らず牛やヤギが闊歩する自給自足生活の村。水がいるならバケツで深い穴に降り、汲んでくる。

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②工業汚染とは無縁で、商業やや先進文化からもほぼ閉ざされている。まさに純な自然環境。バナナやマンゴー、オレンジがたわわに実る。「見たことのないような、美しい世界がそこにはあった」とエラジは言う。エラジの名は、祖父にちなむ。エラジは父・イブラヒムの長男、父もまた長男である。

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③長男というのは色々ややこしい物だがそれが前代未聞の旅に駆り立てたと言っていい。西アフリカではエボラ出血熱が流行し、カナダ政府はギニアへの渡航自粛を警告。治安当局も政情不安、政治腐敗、反政府テロや強盗団の危険性を指摘していた。だがエラジたちには行かなければならない理由があった。

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④宗教指導者であるエラジの祖父は、村だけでなく北西アフリカ地域で名高 いモスクの聖職者、若いイマームの師でもある。高貴すぎてスケーターがやるようなハグなどもってのほか。触れることもおそれおおいのだ。父のイブラヒムは周囲の期待に応えるように育ち、ずっとクラス一番の秀才だった。

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⑤ギニアの大学で優秀な成績を修め、ソ連（現ウズベキスタン・タシケント）に国費留学。半年間ロシア語を学び、医学部へ進み、そこでもトップだった。エラジ曰く、父は幼いエラジにいつも「宿題をしっかりやりなさい。済んだらもっと先に進みなさい」と言っていた。父の気質をエラジも受け継いでいる。

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⑥父はソ連で気象学専攻のマリアと結婚した。そして生まれた長女は７歳で白血病に罹患。モスクワ生まれのエラジが１歳の時、姉の治療のため一家はドイツのボンに移った。治療の甲斐なく姉は１年後に死去。バルデ家は難しい決断を迫られた。ソ連崩壊の混乱期。父の奨学金がどうなるかも分からなかった。

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⑦ロシアに戻るのが最善とは思えず、そこからカナダに渡り、モントリオールに定住することにした。年老いた祖父は、遠く離れたギニアで「死ぬまでに一度、孫のエラジに会いたい」と願っていたが、１３年末、昏睡状態に。２週間後、目を覚ましたのは奇跡と言ってもいい。「父に会いに行かねば」。

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⑧イブラヒムは翌年２月２２日のフライトを予約した。エラジは父に「渡航は待ってほしい」と請うた。ナショナルが迫っており、四大陸とワールドを目指していたからだ。だが父は「行く」と言って聞かない。「いつまで生きられるかわからないから」と。キングストン・ナショナルは無念の結果に終わった。

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⑨６位に終わり、四大陸とワールドを逃し、特別強化メンバーからも外れ、連盟の資金援助も途絶えることに。頭によぎったのは祖父のことだった。さんざんなフリーを演じた日、ギニア行きのフライトを予約し「僕も一緒に行く」と父に伝えた。「事は起こるべくして起きる。こうなる運命だったんだ」と。

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⑩猛威をふるうエボラ出血熱。医師を含む多くの人が思いとどまるよう説得したが「もしエボラで死ぬなら、それも運命」。長く、大変な旅だった。二人はモントリオールからパリ経由でギニアの首都・コナクリに渡った。空港では親戚一同（父は４人の妻を持ち２９人の兄弟が存命）の熱狂的出迎えを受けた。

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⑪遠く離れていても、みなギニアでおなじみ名で活躍するスケーターを知っていた。エラジはギニアのスポーツ大臣とも面会した。旅はさらに続く。祖父のいる村まで車で１０時間、岩だらけの道なき山道を進んだ。１時間に５マイルも進めない区間もあった。村に着き、祖父の家でいよいよ対面の時を迎えた。

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⑫ハグなどしたことがなかった祖父がエラジの頬に手をあて、「神に感謝します」と繰り返していた。「人生で最高の瞬間だった」とエラジ。「僕たちは抱き合って離れなかった。多分５分ぐらいね」。見ていた者はみな衝撃を受けた。祖父が「今なら心穏やかに死ぬことができそうだ。本望だ」と言ったのだ。

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⑬祖父の心臓は弱っていたが、心は健在だった。「神よ、私を天に召して下さってもかまいません」と。エラジは「自分のルーツを誇らしく思った」と言う。アスリートとしてではなく、人として。出自を知ることができ、ほんとうに幸せだったのだと。村での１１日間の日々は、エラジを大きく変えた。

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⑭かの地の人たちは裕福とは言い難いが、とても明るく幸せそうだ。「心の奥深いところで何かが変わった。生きていると、思っても見ない出来事がある。自分にとって人生最高の経験になった」。５月、祖父は亡くなった。この体験を通して一番大切な物に気づいた。何よりも家族との関係に変化があった。

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⑮エラジは（練習拠点のデトロイトから）モントリオールに戻り、両親と住み始めた。ブルーノ・マルコットとマノン・ペロンに師事。彼のスケートも変わった。コナクリの従兄弟はもう６年間求職中だ。選手として滑れる機会があるのがどれほど幸せか、気づき、感謝するようになった。滑ることは喜びだと。

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⑯アフリカ紀行を経て、エラジは、人は誰もが、この広い世界で､一人の人として生きているのだという根本に立ち返ることができた。出自を知り、深い家族の絆を再確認できた。「人はみな幸せになるために生きている。それがすべて。最も大切なことなんだ」（訳ここまで）

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【エラジ後記】陽気なパフォーマーとして知られるエラジ。母がロシア人のハーフ・アフリカンであることは有名ですが、単に「父はフランス語圏のアフリカのどこかからケベックに来たんだろう」ぐらいに思っていました。この記事で詳しいルーツに触れて俄然、今年のエラジの滑りが楽しみになりました。

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【エラジ後記】記事には、今季からモントリオールに拠点を戻し、ペアのパワーハウスかつロシェットの拠点でもあったサン・レオナールで練習しているとのこと。コーチはメーガンの夫・ブルーノさんと、ロシェットの師で、２００９年GPFでは成美・マービンのキスクラに座っていたマノン･ペロンさん。

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【エラジ後記】若手が台頭する中、ワールドと四大陸、強化指定を逃した昨年のナショナルは大きな挫折だったでしょう。しかし、それが人生において最も大切なことに気づく旅につながりました。致死率の高い感染症の流行地に赴くことは、普通のトップアスリートでは考えられない暴挙にも映ります。

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【エラジ後記】多民族・移民国家のカナダではアウシュビッツの生き残りと子孫、紛争地から逃れた難民一家、連盟国側とみなされ強制移住を強いられた日系移民の子孫など歴史を背負う人々にふつうに出会います。エラジのルーツは高名なムスリムの聖職者の一家で、父は超のつくエリートでだったのですね。

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【エラジ後記】生きていることへの喜び、支えてくれる家族への感謝の念。目の前のことにとらわれてばかりいると、つい忘れてしまいがちです。氷の上に人生を描くフィギュアスケート。心の奥深くで何かが変わった、というエラジは今季、どんなプログラムを見せてくれるのか、実に楽しみです。（終）

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【エラジ補足】エラジ、父・イブラヒムさんと祖父。エラジは"Ellagj" 、祖父の名は読めないのですが"Elhadj"さん。確かに似ています。ナム君はベトナム系、アレインは父方のフランス系の名でルーツを残しているのが興味深いです。 pic.twitter.com/A0oxTekobt

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エラジ バルデ選手の記事の趣味訳を思いの外、多くのスケートファンの方々に読んでいただきました。ありがとうございます。お恥ずかしながら誤植が散見され、すみません。icenetworkにも3月に別記事が上がっています。近々ざっと読み、付記がありましたらツイートしたいと思います。

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【エラジ・バルデ優勝インタビュー】ネーベルホルンでほぼ完璧なフリーを演じ、見事な逆転優勝を遂げたエラジ・バルデ選手。何とシニアの国際大会に５年参戦して、初の表彰台とのこと。優勝後の大会公式インタビューを大まかに訳してみたいと思います。 pic.twitter.com/ZqOO0lqouH

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