菌(きん)の語源にまつわるあれこれ

自分で投稿した分のまとめ。つげったーのテストをかねて。
10
Y Tambe @y_tambe
「ばいきん」は漢字で「黴菌」。「黴」は訓読みで「かび」。「菌」は「くさびら」と読み、元々はキノコのことを指す。「茸」と同じ。
Y Tambe @y_tambe
「菌/くさびら」は、古くは「くさひら」と呼ばれた。「草片」、つまり草(植物)に近い仲間だと考えられていた。だから「菌」の字にはくさかんむりが付いてる。この辺りは、西洋でもキノコがかつて植物に分類されていたのと同じで、洋の東西を問わない発想。
Y Tambe @y_tambe
あくまで個人的な想像だけど、ひょっとしたら昔は、地面から生えるのを「草片/くさひら」、木から生えるのを「木ノ子/きのこ」とか呼んで区別してて、菌/茸は、それぞれに当てていた漢字なのかもしれない、とか思ってたり。
Y Tambe @y_tambe
滋賀県に「菌(くさびら)神社」という神社がある。これは昔、飢饉があったときに、この神社の地に、一夜のうちに沢山の「くさびら」が生えて、人々を飢えから救った、という故事にちなむ。小さな神社だが、微生物(特に菌類)に関わりがある神社として、造酒メーカーなどがお参りするという。
Y Tambe @y_tambe
狂言にも「くさびら(菌/茸)」という演目がある。山伏狂言と呼ばれるものの一つ。気味の悪い茸が生えたので山伏が調伏しようとするのだが、どんどん増えて、しまいには襲いかかってきたので山伏が逃げ出す話。
Y Tambe @y_tambe
一方、カビの語源については、「醸す(かもす)」が転訛してきたという説が比較的有力だが、古事記にある「葦牙(あしかび)」から来たという説もあり、よく判ってないようだ。葦牙は葦の芽吹きを意味し、「(枝葉が分化した)植物らしさを持たない」点では、カビの持つイメージに通じる。
Y Tambe @y_tambe
なので、まぁ今日的には、「黴」も「菌」も、どちらも菌類(特に真菌)を指すと言えるのだが…実は、この「菌」の扱いがちょっとややこしい。
Y Tambe @y_tambe
日本語での漢字表記の話ではあるのだが、その背景には、西洋の生物分類学における流れも絡んでくる。もともと西洋では、すべての生物は「動物」「植物」に分けられるという、二界説から始まり、やがて三界説、四界説と増え、五界説で「ある程度の落ち着き」を見せた、というのは周知の通り。
Y Tambe @y_tambe
五界説以降の、六界説、八界説、三ドメイン説は、ここでは本題から外れるので略。
Y Tambe @y_tambe
二界説以降の分類の変遷は、主に原生生物、菌類、細菌などの、いわゆる「微生物」をどう分類していくか、の変遷とも言える。
Y Tambe @y_tambe
これらの分類学上の変遷に伴い、日本での訳語も変遷していった。微生物のうち、運動性があり、動物的な要素が特に強いものには「原虫」の名があてられた。
Y Tambe @y_tambe
そして、残りの「植物的な」微生物の名称として「菌(きん)」が用いられるようになった。「茸・黴・菌」という語のうち、茸は大きな子実体をつくる「きのこ」、黴は糸状菌である「かび」、そしてそれ以外のもっと小さな、単細胞生物まで含むものが「菌」とされた。
Y Tambe @y_tambe
なお「植物的な」微生物の中でも、実際に光合成を行うもの(藍藻など)は、藻類の一種として、植物に分類されたわけだが、これはちょっと余談。
Y Tambe @y_tambe
当初「菌」とされたのは、主に真菌類。真菌類には、生活相において単細胞の状態を取りうるものがあり、これがいわゆる「酵母」。酵母は、特定の菌種を指したものではなく、菌類の「状態」の名前(ただし一般には通例、Saccharomyces cerevisiaeを意味する場合も多いが)
Y Tambe @y_tambe
おそらく、「茸」「黴」以外に、微生物に関わる漢字として存在した「菌」が、キノコやカビに近縁の、植物的な微生物を意味する用語に採用されたのだろう。
Y Tambe @y_tambe
さらに時代が進み、単細胞の原核生物であるバクテリア(モネラ)が、酵母とは大きく異なる生物であることが認識されるようになった。そこで、これらを「菌」から区別する必要が出てきた。このとき、バクテリアが酵母などより遥かに小さいことから「細菌」という名が用いられるようになった。
Y Tambe @y_tambe
ただし、当初はやはり「『細菌』とは言っても、大きくひっくるめたら『菌』の仲間」という認識の方が強かった。このため、さまざまな「細菌」の和名には「○○細菌」ではなく「○○菌」が採用された…大腸菌とか、ブドウ球菌とか。これがまた混乱に拍車をかけることに。
Y Tambe @y_tambe
現在、「一般的な文脈」でなく、生物学的な文脈において「○○菌」という個別の和名が出てきた場合、それは概ね、細菌の仲間であることが非常に多いです。
Y Tambe @y_tambe
(承前)…というより、純粋に生物学的な文脈だったら、ほぼ細菌だと思っていい。そして、現在「細菌」は、いわゆる菌類とは大きく異なる生物であることが判明してるので、「○○菌」という個別の和名があるものは、菌類ではなく、細菌であるという、ややこしいことになってる。
Y Tambe @y_tambe
(承前)…というより、純粋に生物学的な文脈だったら、ほぼ細菌だと思っていい。そして、現在「細菌」は、いわゆる菌類とは大きく異なる生物であることが判明してるので、「○○菌」という個別の和名があるものは、菌類ではなく、細菌であるという、ややこしいことになってる。
Y Tambe @y_tambe
しかも、そもそも「酵母菌」という和名の生物はいませんからね。俗称にすぎないです。 "@ALC_V センター試験的文脈だと酵母菌以外全部細菌です。 "
Y Tambe @y_tambe
古い文献などでは、「シイタケ菌」「マツタケ菌」などの表記をしてるケースは結構見かけた記憶があります。キノコの子実体「以外」の意味を強めるために、今も使っているケースがまれにあったように思います。

コメント

狂言たん @kyougen_tan 2015年9月24日
あれ、さすがにわいたんべ先生は狂言にも通じておられましたか。近頃なかなか「くさびら」が掛けられぬようなれど、教科書にはしばしば取り上げられてござりまする。映像も多々公開されておりますれば、皆様一度ごらんあれ。
ログインして広告を非表示にする
ログインして広告を非表示にする