mr_konnさんによる「イデアルとデデキント切断」の話

モデル理論の立場からの補足が最後にあります。
7
スマートコン @mr_konn

ノリと勢いで超現実数を創るConway

2015-10-22 02:03:54
スマートコン @mr_konn

高校の夏期特別授業ではコーシー列で実数作ったな

2015-10-22 02:18:11
スマートコン @mr_konn

いや、高校生向けに距離を導入するの大変だしデデキント切断だったな。

2015-10-22 02:26:00
スマートコン @mr_konn

デデキント切断は実数以外でも順序集合の完備化に使えるよ。

2015-10-22 02:26:29
スマートコン @mr_konn

あとだいぶ前に原子心母さんが圏論への一般化みたいなはなししてた気がする

2015-10-22 02:27:49
スマートコン @mr_konn

@__dingdongbell 圏の完備化でデデキント切断の一般化みたいになってるのがあるらしい。まあ順序集合は圏だしなあ

2015-10-22 02:30:58
スマートコン @mr_konn

現代的なイデアルの定式化もデデキント切断も考えたのは同じデデキントで、背景にある洞察は同じなんですよね。内包を外延で転換するという。「ある数で割れる」という順序で完備化したものが素イデアルの空間である、と乱暴に言う事もできる。

2015-10-22 02:30:05

※誤って消してしまいましたが、「素イデアルの空間」ではなく「イデアルの空間」とするのが正しいです。(by mr_konn)

スマートコン @mr_konn

イデアルの考え方の本質的な転換点は、数nと「nの倍数数全体」を同一視して見せることで、さらに「何らかの倍数全体になっていそうな集合」として新たな数を導入して見せた事にある。同様に、デデキント切断も、ある数nと「それより下の数全体」を同一視して見せたものだ。

2015-10-22 02:34:51
スマートコン @mr_konn

切断の場合は下だけじゃなくて上も含むけど、これは実数の構成において最大元や最小元がつけ加わっては困るというある種ad-hocな要請によるもので、空集合や環全体を通常イデアルと見なさないのと同じことだ。

2015-10-22 02:36:23
スマートコン @mr_konn

これらは決して単なるアナロジーではない。デデキント切断の概念を少し手直しして半順序集合に一般化すれば順序論におけるイデアルの概念が得られ、それはブール代数/ブール環に完備化すれば通常の可換環のイデアルと一致する。

2015-10-22 02:40:10
スマートコン @mr_konn

逆に、可換環のイデアルを検討してみれば、これは整除関係による擬順序集合の完備化になっている。

2015-10-22 02:42:32
スマートコン @mr_konn

だから、数学一般について、デデキント切断が実数の構成法にしか使えないのかというと、そんなことはなくて寧ろ本質的に同じ概念が至る所で使われているとも言える。

2015-10-22 02:45:20
スマートコン @mr_konn

それはなぜかと言えば、両方とも性質とその外延の同一視という、カントール-デデキント集合論の登場によって初めて可能になった強力な考え方が両者の根源にあるからというわけです

2015-10-22 02:47:02
意識 @concious77

デデキント切断で片方が空な場合も許すと拡張された実数が出てくるのか、

2015-10-22 02:46:15
スマートコン @mr_konn

最大元と最小元を持つ実数が出来上がりますね。束の完備化です。

2015-10-22 02:49:13
スマートコン @mr_konn

Dedekind-MacNeille完備化と言います

2015-10-22 02:51:15
スマートコン @mr_konn

この辺りの話、順序論をある程度やったことがあって、初歩の代数学を齧ったことがある人であればだいたいわかってることなんだと思うんだけど、いかんせん順序論って集合論とかのロジックか、せいぜいジェネトポの人くらいしか詳しくやらないし、ちゃんと関係を述べてる文献も見たことないんだよなあ

2015-10-22 03:01:33
スマートコン @mr_konn

順序集合、位相空間の(病的とは言わないまでの)変わった例を作るのにべんりという認識がある

2015-10-22 03:05:33

モデル理論より補足

モデル理論をやったことのある界隈には有名な話ですが、

  • 代数閉体k上の1変数多項式環のスペクトラム
  • 自己稠密な線形順序集合Lのデデキント完備化

はともに、(それぞれk,Lというモデルの)1-typeの空間の構成として捉えることができます。ただし、位相の入り方はZariski位相や順序位相より細かいものになっています。この空間の構成は“論理式集合を一つの元と見なす”という構成になっていて、任意のモデルに対して行えます。したがって、(mr_konnさんが言うところの)「性質とその外延の同一視」をロジックの立場から捉え直したものだと言えるでしょう。

参考文献
David Marker, Model Theory: An Introduction (Springer), Chapter 4.