空想の街・ハンツピィ'15 一日目 #赤風車
「ぎぇあああああ!」 尻尾!尻尾掴まれた!じいちゃんにも掴まれたことないのに!もうお婿に……は行ける!全然平気! 洸太郎さんが謝ったけど、実華さんは息子になれって。マジですか?! 「僕の尻尾が目当てですか?!」 尻尾は死守! @nowhere_7 #赤風車 #天真少年 #空想の街
2015-10-24 23:37:32@Haruki_Non 額のあたりを押さえつつもう片手で少年の頭をさすってやりながら洸太郎は妻に言う。「実華さん、落ち着こう、それだけは、宿が落ち着いてからって相談してたよね。何よりこの子はよその子だよ、帰る場所があるんだよ」 「分かっとるよ」→ #天真少年 #赤風車 #空想の街
2015-10-24 23:40:38@Haruki_Non 実華は煙草の消えた息を雨に溶けさせ、少年の肩へ両手を置いた。「悪かったな天真よ。併し可愛らしいなァ、ずっとなでくり回したい!」そこで一旦、実華の声が落ち着く。「…なァ天真よ。お前はこの街が好きか?どうしてここに来るんだ?」 #天真少年 #赤風車 #空想の街
2015-10-24 23:43:11股からくぐらせたオオカミの尻尾を両手で抱きかかえながら、おそるおそる実華さんの質問に答える。 「この街は好きだよ。どうして来るんだ、って言われたら。来たいから来る、としか言えない。会いたい人たちがいるし、行きたい場所もある」 @nowhere_7 #赤風車 #天真少年 #空想の街
2015-10-24 23:48:06@Haruki_Non どこまでも真直ぐな少年の答えを受け、実華は数秒沈黙する。「――そうか、有難う。行きたいと思える場所があるのはいいことだ、お前さんに思われてこの街もさぞ幸福だろうよ」 その気持ちを大切にな、と実華は、少年の髪を撫で回した。→ #天真少年 #赤風車 #空想の街
2015-10-24 23:52:01@Haruki_Non 「さァて天真よ!ここからは大人の時間だ――尾にしがみつくような子供は早く帰ってゆっくり休め。風邪でもひいたら明日の宴に出られんぞ!」腰に手を当てる実華の長い尾も揺れる。洸太郎はひやひやしながら見ていたが、何とかなりそうだ。 #天真少年 #赤風車 #空想の街
2015-10-24 23:54:42どうやら、俺の尻尾は大丈夫?取られない?本当に? 「洸太郎お兄さん、大福ありがとう!」 俺は鞄の中から、LEDのペンライトをふたつ出して渡した。 「じゃあ、おやすみなさい!」 尻尾を巻いたまま、俺はボードに乗って走りだす。 @nowhere_7 #赤風車 #天真少年 #空想の街
2015-10-25 00:02:00@Haruki_Non 「気を付けていけよ!」有難うと叫びながら、実華は両腕を振る。それに併せ肩や腰の翼も揺れた。 「もうお兄さんなんて年じゃないのに、えへへ」洸太郎はというとまた角のあたりを掻いている。「やっぱり帰る場所があるんだね。よかった」 #天真少年 #赤風車 #空想の街
2015-10-25 00:04:35「見ろよ洸太郎、光るぞ、なんだろうなこれは」燐寸よりもガス灯よりも強い光に、実華は目を細める。先ほどの少年のようだ。 「ぼくらの知らないものだね。きっと暗いから気を付けてって意味なんだよ、いい子だね」 洸太郎の声に、実華がうなずいた。 #赤風車 #空想の街
2015-10-25 00:08:31「併し本当に可愛い奴だったな」光る棒のようなもので夜道を照らしながら、小雨の中ふたりは進む。 「そうだねぇ、あんなに純粋に息をしていられるんだから、ここはほんとにいい場所なんだよきっと。ぼくも頭もっと撫でたかったな」洸太郎がしみじみ言う。そこで実華が笑った。 #赤風車 #空想の街
2015-10-25 00:12:01「どうしたの、実華さん」罪のない顔で実華へ振り向く洸太郎に、肝心の実華はくつくつと笑い続ける。 「いいや? 寂しくなったかと思ってな」 そこで洸太郎も息を吐いて顔をくしゃりと歪めた。彼なりの一番の笑顔を見て、実華の持つ光が左右にぶれる。 #赤風車 #空想の街
2015-10-25 00:14:07「まさか。こどもは宿が復興してから、ってふたりで決めたもんね。まだ暫くぼくらは新婚夫婦だよ」 くしゃくしゃの表情で歩く夫に向け、随分長い新婚もあったもんだなァ、と実華は返した。「家族が減るのはごめんだ。増えるに限るよ」消える言葉を、洸太郎は受け止めている。 #赤風車 #空想の街
2015-10-25 00:17:26魔法をのみほす夜
@tokyosanfish 談笑がふと途切れたところで、丁度場所は馬頭琴という店の目の前だった。ふたりは示し合わせたわけでもなく、どちらともなく光を仕舞う。 「失礼しよう!是非とも酒を頂きたいんだが、今宜しいかな!?」実華は勢いづき飛び込んだ。 #喫茶馬頭琴 #赤風車 #空想の街
2015-10-25 00:27:05.@nowhere_7 「いらっしゃいませ。ああ、とても華やかな方がご来店されましたね」シェイカーがカウンターへ誘導する。 「どうぞこちらへ。お連れ様も」 #喫茶馬頭琴 #赤風車 #空想の街
2015-10-25 00:29:39@tokyosanfish 「おうすまんな!外は冷えて適わんぞ!」酒と見るや否やこれだ。実華は外で見せた空気なぞ一瞬で消し、店主へ真直ぐ握手を求める。「私は実華という。一足早く実を食べたらこんな鳥になってしまってな!連れは夫だ。おい、洸太郎」→ #喫茶馬頭琴 #赤風車 #空想の街
2015-10-25 00:31:55@tokyosanfish 「今晩は」わぁすごい雰囲気たっぷり、と洸太郎は破顔する。 座った実華が口を開いた。「ん、店主よ、何とも洒落た姿だな。便利なんじゃないか?私もそんな姿になりたいもんだなァ――、おすすめのカクテルはあるか?強いもので」 #喫茶馬頭琴 #赤風車 #空想の街
2015-10-25 00:34:47.@nowhere_7 「一般頭様向けのレパートリーは少ないのですが…そうですね、強いものがお好きでしたら…」シェイカーが何やらゴソゴソとカウンターを探る。その間にカウンターにストンと時計卿が腰掛けた。「やぁこれは見目麗しいな」#喫茶馬頭琴 #赤風車 #空想の街
2015-10-25 00:39:01@tokyosanfish 「ん」「ん?」先に唸ったのは洸太郎だ。夫の小さな息を聞き逃さなかった実華だが、彼女は生憎と目の前に並ぶ酒や店主の姿に興味津々である。と、頭が懐中時計になっている男性に声をかけられ、実華は挨拶をする。「何だ、私に用か」 #喫茶馬頭琴 #赤風車 #空想の街
2015-10-25 00:42:37.@nowhere_7 「これは失礼。ポムの実でそこまで華やかになる人はなかなかいないものでつい」「時計卿、夫婦の夜を邪魔するのは野暮というものですよ」カクテルの用意を終えたシェイカーが釘を指す。「これは失敬」→ #喫茶馬頭琴 #赤風車 #空想の街
2015-10-25 00:46:34.@nowhere_7 呆気無く時計卿は元の位置へと戻る。「失礼しました。彼は一般頭様に特に友好的でしてね、すぐ声をかけてくるのです」 #喫茶馬頭琴 #赤風車 #空想の街
2015-10-25 00:48:45@tokyosanfish 「いや構わんよ、時計卿とやらは随分紳士的だろう。社交界にはひどいのがわんさといるぞ、あー思い出したくもない!そして洸太郎」快活に言う実華が不意に店主から顔を背け、夫の頬を挟んで自分のほうへ向けさせた。→ #喫茶馬頭琴 #赤風車 #空想の街
2015-10-25 00:50:55@tokyosanfish 「私はお前がくれた時計のほうが好きだがなァ、何をそんなに拗ねている?」 艶然と言ってのけた実華の瞳と、実華のみを映す洸太郎の目が数秒通い合う。瞬間洸太郎は慌てふためいた。「分かってますとも、ここ人前だよ実華さん!」→ #喫茶馬頭琴 #赤風車 #空想の街
2015-10-25 00:53:47@tokyosanfish 「変わらんなァ我が愛しい夫は」おっとすまん、と実華は店中のものたちに手を振った。 バーは基本、静かに嗜むべき場所だ。あまり騒ぐのもよくないだろう。「失礼、煙草を吸わせて頂くよ。さァどんなに強いものも呑み干すぞ!」 #喫茶馬頭琴 #赤風車 #空想の街
2015-10-25 00:55:27.@nowhere_7 「ふふ、仲がよろしいですね。では…」 実華の前にシェイカーはグラスをひとつ出す。中には青い青い液体。飴玉のようなものをひとつ取り出すと、彼はそれを迷うことなくグラスへダイブさせる。シュワワ…ぱちぱち。→ #喫茶馬頭琴 #赤風車 #空想の街
2015-10-25 01:00:10