ミイラレ!SS集その1(実況付き)
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昆虫怪異たちとの戦を終わらせたその日の夜。四季はすでに寝室で寝息を立て、いつもは夜通し暇を潰しているはずの幽霊、小夜子も疲れ果てたか姿を消している。つまるところ、居間には現在一人しかいない。御伽 巡。四季を百鬼夜行『山ン本組』の長へ押し上げた張本人である。1 #4215tk
2015-10-26 21:24:17彼女は暗い部屋の中、古ぼけたノートPCを前に顔をしかめている。「……まったく。面倒事を増やしてくれたもんだねえ」『そう憎まれ口を叩くもんじゃねえだろうよ、巡』音もなくディスプレイ上に文字が出力される。『よかったじゃねえか。あれだけ手塩にかけてたんだからよ』2 #4215tk
2015-10-26 21:27:05巡の眉間のしわが深くなる。彼女は声で返事をする代わりにブラインドタッチ。『それとこれとは別問題。またあいつらの世話をしなきゃならないと思うと胃が痛い』少しの沈黙。『贅沢な悩みじゃねえか。どうせまたすぐに仲睦まじくなるんだろ』『それが一番面倒なんですよ』3 #4215tk
2015-10-26 21:29:57ああ、チャットでしたか。巡姐さんを呼び捨てにする相手………しかもけっこう頻繁にチャットしている?今までも割とよくPC開いてたよね #4215tk
2015-10-26 21:31:39タイピングをする指に力が入り、キーボードが小さな音を立てる。今度の返事は早かった。『観念して最後まで面倒見てやんな。それが上にいるもんの務めだからな』ばたん。勢いよくノートPCが閉じられ、スリープモードに移行する。音を立てて溜息をついた巡は宙を睨んだ。4 #4215tk
2015-10-26 21:32:58まあ。まあ、確かに。巡は頭を冷やすためにも思考する。また赤城たちの力を使えるのであれば、それは喜ばしいことではある。まだ未熟で自分の想定する敵には到底及ばぬ連中とはいえ、それ以外の雑用を任せるには充分だ。故に、あの少年の判断は渡りに船。そう思うことにしよう。5 #4215tk
2015-10-26 21:35:58彼女はふと寝室の扉へ目を走らせる。いくつか不愉快なことを押し切られはしたものの、あの少年も案外役に立ってはくれている。天狗や山姫、ないしは大悪魔の力を借りられたは実に僥倖。それに。巡りはふと、自身の腹に手をやった。こちらの『切り札』を成長させるには最適の環境だ。6 #4215tk
2015-10-26 21:39:03副官位のポジションで暗躍したいんだろうなぁ…その辺の地位が一番自由に動けそうな気がする。 そして、前向きな事は良い事だ。 #4215tk
2015-10-26 21:39:16彼の提供する霊気は質も量も申し分なし。まだ力の足らぬ連中にもそれとなく霊気を供給させ、戦力にできるよう頑張ってもらわねばならぬ。あとは……自分に憑かせたこの子にも。腹の奥でわずかに動きを感じ、巡は微笑んだ。が、その表情はすぐに険しくなる。彼女は後方に糸を放った。7 #4215tk
2015-10-26 21:42:07「ひゃっ」予想通りの声。溜息をついて振り向くと、床に倒れていたのは赤黒縞装束の女。先ほど飛ばした糸で簀巻きにされている。「まぁた夜這いか、貴崎ィ……」「あ、あははー」ごまかすように笑った貴崎 茜は、ゴロゴロと転がって巡の元まで。「落ち着いてよめぐりん。話聞いて」8 #4215tk
2015-10-26 21:45:15