- RiverInWestern
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影たちは互いに呼びかけ、てきぱきと茜をどこかへ運んでいく。「失礼いたします、巡隊長」小さな影の一つが巡の前まで近づき、敬礼する。黒基調の軽装をした、褐色肌の少女。蟻の怪異、蟻塚 家鳴である。「緊急事態であったため、確認なしの入室をお許しください」16 #4215tk
2015-10-26 22:09:04「ああ、ああ。それくらいはいいさ」巡は疲れたように言う。家鳴はなおも生真面目に報告を続けた。「回収した貴崎 茜は軍曹の手により懲罰を課す予定であります」「キツく絞るように言っておきな。まあどうせまたやるんだろうがね、まったく」「はっ」家鳴が了承の返事をする。17 #4215tk
2015-10-26 22:12:04巡はちゃぶ台に戻ろうとし……動こうとしない家鳴を見て、足を止めた。怪訝に見下ろす彼女の前で、家鳴はヘルメットを脱ぎ、なにか期待するような目を巡に向けている。「あー……」巡は頭を掻き、屈み込んだ。「今回はよく迅速に行動してくれたねえ。ありがとうよ」18 #4215tk
2015-10-26 22:15:07そして手荒に家鳴の頭を撫でた。家鳴はくすぐったげに目を瞑る。「あ、ありがとうございます!ではこれで失礼いたします!」満足したのか、ヘルメットを被り直した家鳴がお辞儀をし、足早に退室していく。巡は溜息混じりにそれを見送った。褒めてやらねば人は動かぬというが…… 19 #4215tk
2015-10-26 22:18:04巡はその足でキッチンへ向かい、ヤカンに入ったままの茶を湯飲みに入れて一気に飲み干す。またあの一癖も二癖もある連中をなだめすかしながら従えねばならぬ日々が戻ってくるのだ。なんと煩わしいことか!(若旦那も面倒ごとを押し付けてくれる……)彼女は再度溜息をついた。 #4215tk
2015-10-26 22:21:11上に立つ事で発生する面倒事を四季君を頭領にする事で押し付けたハズが、 奇しくも中間管理職的な立場になってしまい、より面倒な事になったのが巡さんのインガオホーを感じる。 四季君が横暴な頭領じゃないのがせめても救いだ。 #4215tk
2015-10-26 22:26:08シャープペンシルが紙の上を滑る音だけが教室に響き渡る。四季は額に手を当てつつ目の前の紙切れを睨んでいた。物理の小テストである。彼の手は最後の文章題で止まっていた。どこから何を計算したものやら、まるで見当がつかない。彼にとって高校のテストはまだ難しいのだ。1 #4215tk
2015-10-27 21:24:26