ツイッター小説 お気に入りセレクト 2011/01/14 (ついのべの日)

毎月14日は ついのべの日! ということで今月のお題「アンパン」にちなんだお話や、その他通常のついのべの中から、面白かったものを選んでみました。 #twnvday のタグ付き作品、ついのべの日について詳しくは下記まとめを ・毎月14日は『ツイノベの日』 2011/1/14お題「アンパン」 http://togetter.com/li/88362
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@Hiyoko_T

#twnovel 「はいお駄賃」祖母から渡されたのは餡パン一個。「ゲームが欲しかったのに」少年は口を尖らせた。小石を蹴りながら歩いていると弱弱しい声で鳴く猫がいた。「食べるか?」差出した餡パンに噛付く猫。夢中でがっつく猫を見ていた少年の口元が緩緩と綻んでいった。 #twnvday

2011-01-14 13:05:37
あQ (CTT) @aquall

「お兄ちゃん、このアンパン餡が入ってないよ」後で食べようと言ったのに待ちきれず妹はパンを食べ始める。「もうすぐだから待ってろよ。パンはそれしか残ってないんだ」だって僕のパンは粉々だから。目指すは森の奥のお菓子の家、そこになら餡子もたっぷりある。 #twnvday #twnovel

2011-01-14 13:30:44
トーリン @1thorin

#twnovel アンパンという名で売られていたからといって、中身が本当に餡であるかどうかなんて割ってみないと分からないよ。手違いでカレーが入っているかもしれない。もしそうだとしたらコーラと間違えてめんつゆを飲んでしまったときのように、おどろいて体に悪いよ。ちぇっ、粒あんだった。

2011-01-14 13:51:04
@olive_sw

#twnovel ライオンは皆、胸の中にひまわりの花畑をもっている。その花畑がどれだけ大きいか、どれだけきれいかで、そのライオンが立派かどうかが決まってくる。群れのリーダーとなるライオンの花畑は広くてのびのびしていて、ひまわりたちがみんな気持ちよさそうに風にそよいでいる。

2011-01-14 14:07:49
@maikagami

#twnovel 流し台の紙コップに入ったしみない温度を口に含む。ねっとりとした不要な粘液をこそぎ落として吐き捨てた。にじみ出た血液と砕かれた虫歯の欠片は、パーティションで隔たれた左隣の老人と、右隣の少女と、1つの配管でまざり合い融合し、やがてまたどこかで産声を上げる…。

2011-01-14 14:37:21
江田・K【小説書き】 @koudakei

またあくび。今日何回目か数えるのもいい加減腹立たしい。折角のデートだというのに気は滅入る一方だった。私と一緒にいるのがそんなに退屈ならそう言えばいいのに。じいっと見ていると「どうかした?」と笑うその顔に騙されているような気がして私はむー、と唸ることしかできない。 #twnovel

2011-01-14 15:43:12
ぬこ @sakuranuko

母の作るアンパンは少し変わっていて生地にあんこが練り込んであった。「どうして中の餡にしないの?」「どこから食べてもあんこの味でしょ?」笑う母と同じ優しい味。その味が食べられなくなって十数年、再現を目指しパン生地をこねる。隣で娘が笑う昼下がり。 #twnvday #twnovel

2011-01-14 16:33:38
@wakegiorino

#twnovel 食いもんが底を突いた。流し台の下をあさったらパイナップルの缶詰が出てきた。今時要缶切りかよ、と賞味期限を見ると88って、1988年?昭和?まあ大丈夫だろうとキコキコ開けたらまた蓋。キコキコ開けたら蓋。とうとう底が抜けた。よく見ると、パイナップルの穴の缶詰だった。

2011-01-14 17:52:31
@_140

#twnovel アンパンにはねっとりと甘い黒色火薬が詰まっている。それはひと口かじれば分かる。食べかけのアンパンは画集が積み重なった上に置き、他人も爆発する様を想像しよう。散らばった残骸のひとつ一つの上にはやがて桜が生える。桜の塩漬けはアンパンの臍に埋めよう。 #twnvday

2011-01-14 18:24:00
いでゆのまち @ideimachi

#twnovel つぶ餡をパン生地で包み、オーブンで焼く、と。海外でひとりがんばる夫に、バレンタインは手づくりあんパン。ふんわり食感、ほどよい甘さ。「できた!」なんども試作したんだもの…あんパンみたいなお腹をなでて苦笑い。検診でも怒られちゃった。あ、蹴ったかな。 #twnvday

2011-01-14 18:29:31
@akemi_miura

#twnovel 今日、父親に生まれて初めて会った。やたら大きな家から出てきた父は、私を見て呆然としていた。「誰なの?」と言いながら彼の妻が出てきた。「あ、新しい庭師だよ。し、芝刈りに来たのさ。」私はにっこり笑って踵を返すと、庭の植木鉢を全部なぎ倒した。そして少し泣いた。

2011-01-14 19:40:31
simmmonnnn @simmmonnnn

#twnovel 息子が幼稚園で描いたという「パパの似顔絵」を貰う。輪郭はやたら丸く、鼻は無かった。ギザギザと描かれた髪は緑色だった。両目は焦点が合っておらず緑色だった。緑は彼の好きな色だった。わたしの宝物がまた一つ増えた。ありがとう。彼が恥をかかぬよう、整形外科に電話をかけた。

2011-01-14 20:29:54
Shimada Yuichi @chimada

#twnovel トントン。「お兄ちゃん。開けて。このドアを開けて。」「……。」トントン。「なんで部屋に鍵を掛けるのかな?大丈夫だよ、お兄ちゃん。何も怖いことはない。私が守ってあげるよ。」「じゃあ、俺の部屋のドアをノックするのをやめてくれ。もう一時間以上続いているぞ。」トントン。

2011-01-14 20:37:49
@K_Ichida

#twnovel 恋愛ドラマばかり見ていた天使は天帝の逆鱗に触れた。「罰として地上でドラマチックな人生を送ってもらう」「それは…うれしいです」「お前は余命1ヶ月の花嫁に生まれ変わり、婚約者に看取られるのだ」「ありがたいです」「それを100万回繰り返してもらう」「ええーっ」

2011-01-14 20:42:32
@K_Ichida

#twnovel 気がつくとまぶたや口が開かない。接着剤でくっついているようだ。子供の笑い声がする。瞬間接着剤でいたずらされたようだ。立ち上がろうとしたら、両手の掌もくっついていた。冷たい液体と刺激臭が鼻腔に広がった。「鼻より先に耳の穴をふさぐの」妻の声と子供の笑い声がした。

2011-01-14 21:08:10
layback @laybacks

あんパンの親子が一列縦隊でぴょこぴょこと行進している。お母さんあんパンの後ろには、ひぃふぅみぃよぉいつむぅななやぁ、8匹の子あんパン。道行くサラリーマンやOLも足を止め、のどかな光景に目を細めている。今はまだ大丈夫。早く巣に帰るんだよ。ランチタイムが始まる前に。 #twnovel

2011-01-14 21:14:09
泥辺五郎 @dorobe56u

#twnovel 野球場では今日も無観客試合が開かれている。試合の結果は新聞に載るが写真も映像も残されない。試合中の様々なドラマを記事は伝えてくれない。町の中心にあるその野球場の周りを僕らはぐるぐる回るだけ。おかげでこの町に住む者達の想像力は逞しい。生きるのに不自由するくらいに。

2011-01-14 21:18:15
高山 環 「ふたりの余命 余命一年の君と余命二年の僕(宝島社文庫)」より発売中 @Takuya11

#twnovel 十年ぶりに東京へ戻ってきた。新しくできた施設や美術館を周り終えると、好きだった都会の景色が空虚に見えてきた。ため息をついて街を歩くと夕暮れになっていた。夕陽に照らされたビル群が幻想的に浮かび上がる。求めていたものかどうか分からないけど、この景色を美しいと感じる。

2011-01-14 21:41:03
ひらばるまなぶ(平原学)@もの書き @chocolatesity

#twnovel 「もう一遍練り直せ、新人!」ビリビリに破られる原稿。一から執筆再開し、残業は深夜にまで及ぶ。ようやく書き終えたとき、昼間の上司が「お前、好きだろ」と僕に差し出したもの。アンパン、覚えて貰えたんだ。食べると思わず涙が零れる…ジャムの味がした。 #twnvday

2011-01-14 21:55:23
@hinoib

#twnovel ブログの写真は後ろ姿ばかり。なんかはがゆい。もしかしたらと思いモニタの後ろに回った。けれどやはり顔は見えるはずもない。可愛いだろうなぁ。美人さんになったかなぁ。別れて5年。娘はこの春中学生になる。もう一度モニタの後ろに回りそうになった。そしてちょっとだけ笑った。

2011-01-14 22:16:46
nohironogi on earth @nohironogi

#twnovel #twnvday 「アンパン」刑事部屋に、沈黙が漂う。「あ……」先週、殉職した刑事のあだ名が、アンパンだった。「先輩、張り込み中、うまそうに、アンパン食べてたっけ」「他人もアンパン好きだと信じてたんだな」「まさか、アンパンと人質を交換しようとするなんてなあ……」

2011-01-14 22:23:13
高山 環 「ふたりの余命 余命一年の君と余命二年の僕(宝島社文庫)」より発売中 @Takuya11

#twnovel 友人は常に一人としている。一人分が僕が友人に使える時間だ。もっと良い友人ができたら前の友人とは疎遠にしていく。ある日最高の友人に出会った。彼とは心の底から分かり合える。一生友人でいよう。「もっと素敵な友人ができた。もう君とは会わない」その最高の友人が僕に告げた。

2011-01-14 22:40:07
トーリン @1thorin

#twnovel こし餡派と粒餡派に分かれてのアンパン同士の一大決戦が始まった。戦いは熾烈を極め、両派は次第に傷つき、身体が裂けていった。辺り一面にムッとするような甘い臭いが漂っているのは、飛び散った臓腑のせいである。審判役の貴婦人はカフェ・ラテを片手にクロワッサンを食していた。

2011-01-14 22:53:01
音は舞い月を奏でる @mai_otowa

高校の時、隣の席の男の子は毎日購買部でアンパンを買って食べていた。「糖分は脳の栄養だ」とか言って、試験前になると食べる量も増えていた。今日は旦那が社内で担当する大事なプレゼンの日。朝の食卓には山積みのアンパン。 #twnovel #twnvday

2011-01-14 22:58:42
@hiyoto1225

蛹が一つ玄関の前にある。朽ち果てた汚い色をしている。靴の先で蹴り飛ばした。地面に叩き付けられた蛹は割れ蝶が孵った。蝶の姿をしていますが精霊なんですとそれは言った。随分酷いですね、私を蹴り飛ばすなんて。貴方に禍が降り掛かります様に。そしてひらひらと飛んで行った。 #twnovel

2011-01-14 23:16:28