伏見稲荷奇譚

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あもみやすん @kazumi_amemiya

するとね、森の奥に白い何かが見えたの。よくよく目を懲らしてみると、それは真っ白な狐のお面だったわ。なんでこんな所に、と思って見つめてると、そのお面、女の子が被ってたのよ。紺色のセーラー服を着た、黒髪の女の子がね。 「ねえ、あなた……」 声をかけたらその子、森の奥に消えちゃったわ。

2015-11-04 17:16:32
あもみやすん @kazumi_amemiya

左側は傾斜のきつい森で、人がそこを歩くのはほとんど不可能に近かった。にもかかわらず、狐面の女の子はさも当然のようにそこをすいすいと歩いていた。光が届かない森の奥へ進んでいく彼女を、私はただ見えなくなるまで見守ることしかできなかった。 pic.twitter.com/6F3rhP4ShN

2015-11-04 17:30:14
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あもみやすん @kazumi_amemiya

やっと狐面の少女に追い付くと、少女はこちらにくるりと振り返って、はにかむ風に笑った。いや、本当に笑ったかどうかはわからない。何しろ彼女の顔は狐面に隠れているのだ。でも、そんな彼女の姿がとても魅力的で、私は彼女の姿を写真に収めていた。 pic.twitter.com/rGuKIRMQ15

2015-11-04 17:36:35
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あもみやすん @kazumi_amemiya

狐面の女の子はひたすら足が早かった。私がくたくたになってひーこらひーこら登っているというのに、少女はこちらを気にする素振りも見せずに軽快に階段を登ってゆき、そして途中でこちらに気がつくと振り向いて手招きするのだ。そう、こんなふうに。 pic.twitter.com/mO5EC9VOYW

2015-11-04 17:42:44
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あもみやすん @kazumi_amemiya

狐面の女の子に励まされながらなんとか歩いた。さっきから登ったり下りたりの連続だ。まるで同じ場所をぐるぐると回っている錯覚に陥る。何せずっと鳥居に囲まれているから、方向感覚もなにもあったものじゃないのだ。そうして、私はまた歩き出した。 pic.twitter.com/5iTCIEWjQr

2015-11-04 17:51:51
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あもみやすん @kazumi_amemiya

……さっきから、誰ともすれ違わない。いるのは、私と狐面の女の子だけだ。私は段々と怖くなった。そして、ああ、ここは、さっきも見た場所だ! やっぱり、やっぱり私たちは……! すると、少女が私の手を優しく握った。そうだ、とにかく、進もう。 pic.twitter.com/XXsdLcYmfg

2015-11-04 17:57:48
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あもみやすん @kazumi_amemiya

狐面の女の子が山を登り始めたが、斜面が急で私は登れない。少女がこちらに手をさしのべる。その手を掴むと体が軽くなり、すいすいと急な斜面を登れるようになった。このまま進めばここを出られるだろうか。電波が届かず、携帯も使えなくなりそうだ。 pic.twitter.com/yyddd3cBSI

2015-11-04 18:08:55
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あもみやすん @kazumi_amemiya

気が付くと、狐面の女の子はいなくなっていた。暗い森の中に、私は一人ぼっちになっていた。叫んでも、声は誰にも届かなかった。私は、ずっと森の中をさ迷っている。一人ぼっちは寂しかった。いつか、誰かに会えるように、私は森の中を歩き続けた。そして 「ねえ、あなた……」 やっと、みつけた。

2015-11-04 18:16:42
あもみやすん @kazumi_amemiya

一人の女性と出会った。彼女は私の姿を見つけ、声をかけてきたのだ。私は嬉しくなって、彼女が追いかけて来るように山の中を進んだ。そして、途中で立ち止まって彼女を待ち構えた。 「やっと……追いついた……」 彼女は息を切らしながら続けて言った。 「ねえ、なんで、狐のお面を被ってるの?」

2015-11-04 18:23:21