【Jamバンド】御手師マリー視点

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☪︎NeM @NeM_e_Ne

@the_smallest226 23 「あ〜泣かしちゃダメニョロよ、マキちゃん。」 「えぇ!?私!?えっ、えっと、泣かないで〜!」 「すいません。なぜか涙が溢れてくるんです。止めようと思っても、まったく...止まらなくて。」 ぼくは涙を拭く。しかし涙はとめどなく溢れてくる。

2015-11-06 20:33:53
☪︎NeM @NeM_e_Ne

@the_smallest226 24 「好きなだけ泣けばいいニョロ!泣くことは自分に正直になっている証拠!無理に止める必要はないニョロ!」 ぼくは泣く。思えば泣くことは随分と久しぶりな気がした。嬉し泣きと言うものは初めてなのかもしれない。

2015-11-06 20:38:42
☪︎NeM @NeM_e_Ne

@the_smallest226 25 先輩達は、ぼくが泣き止むまで黙って待ってくれた。 短かったのか長かったのか、ぼくにはわからなかったが、とにかくぼくは泣き止み、話を再開した。 「あっ、そうだ!楽器!楽器決めないと!マリーちゃん!得意な楽器とかある!?」 「楽器ですか?」

2015-11-06 20:40:57
☪︎NeM @NeM_e_Ne

@the_smallest226 26 「弦楽器は色々弾けますけど...あっ、そうだった...」 「?どうしたニョロ?」 ぼくは考える。ギターを野蛮な音楽だと言う母が、バンドをすることを認めるだろうか。 ...いや、認めさせる。絶対に。 「マキ先輩。」 「なに?」

2015-11-06 20:42:09
☪︎NeM @NeM_e_Ne

@the_smallest226 27 「楽器はもう少し考えさせてください。」 「...そうだね。大事な第一歩だ!ゆっくりと考えるといいよ。」 「はい!あっ、そうだ。」 と言いながらぼくはバッグを漁る。 「どうしました?」 カノン先輩は首を傾げながら覗き込む。

2015-11-06 20:50:12
☪︎NeM @NeM_e_Ne

@the_smallest226 28 「入部届けです。ぼくの...覚悟の証です!」 「そういえばそんなものもあったニョロ。」 「...お姉ちゃん、時間。」 「おっと、もうこんな時間かニョロ」 時計の針はちょうど6時半を指し示し、もう帰れとチャイムが鳴り響く。

2015-11-06 21:07:34
☪︎NeM @NeM_e_Ne

@the_smallest226 29 ぼくは急いで入部届けを書き、先輩方と校門へ走る。 校門を抜けた時、ぼくは車が一台停まっていることに気づいた。と同時に車から誰かが降りてくる。ぼくはその人と車に見覚えがあった。 あれは... 「何をしているの。マリー。」 母だ。

2015-11-06 21:16:43
☪︎NeM @NeM_e_Ne

@the_smallest226 30 「迎えが来ていたみたいで...。先輩、今日は楽しかったです。」 「楽しんでもらえたようで良かったよ。明日もよろしくね。」 「はい!お疲れ様でした。」 ぼくはお辞儀をし、そそくさと車の方へ向かう。

2015-11-06 21:26:31
☪︎NeM @NeM_e_Ne

@the_smallest226 31 「...あの」 母はぼくが言葉を発する前に腕を掴み、無理やり車に押し込んだ。車は走り出す。 「痛いです!」 「今日を何の日だと思っているの!大事なパーティがあるというのに何をしていたんだか。」 「パーティ?」

2015-11-06 21:38:00
☪︎NeM @NeM_e_Ne

@the_smallest226 32 「ちゃんと披露する曲の練習はしてたんでしょうね。」 そうだった。すっかり忘れていた。今日だったのか。 正直、ぼくにはどうでも良かった。母がどうしてここまで焦っているかは知らないが、ぼくにとっては、中学校の文化祭の発表と同じようなものだった。

2015-11-06 21:46:55
☪︎NeM @NeM_e_Ne

@the_smallest226 33 「練習はしています。あの、私の話を聞いてください。」 「なに?」 「部活に入りたいです。」 「だめよ。遊ぶ暇があるなら練習をしなさい。話は終わり。さぁ、着替えてきなさい。」 パーティ会場に着いたようだ。大きな庭まである豪邸だ。

2015-11-06 22:04:26
☪︎NeM @NeM_e_Ne

@the_smallest226 34 既にパーティは始まっているようで会場からは美しい音色が聴こえてくる ぼくは正装に着替える。出番が刻一刻と近づく。ぼくは演奏の前にもう一度母に頼んでみることにした。

2015-11-06 22:09:51
☪︎NeM @NeM_e_Ne

@the_smallest226 35 「ぼくは部活動をしたいんです!あの人たちと一緒に演奏がしたいんです!」 「演奏?」 しまった。 「一体何の部活なの?」 「ば、バンド...です」 母はすごく怒った。

2015-11-06 22:17:18
☪︎NeM @NeM_e_Ne

@the_smallest226 36 「バンドですって!?ダメよ!あんな野蛮な音楽!あなたは私の言うことだけをやっていれば良いの!」 「でも...」 「今日はあの天音家も来ているのよ。目にもの見せてやるんだから!ほら!行ってきなさい。」 ぼくは走った。ステージとは逆の方向に。

2015-11-06 22:20:44
☪︎NeM @NeM_e_Ne

@the_smallest226 37 無我夢中で走る。どこに行くかなんて考える余裕はなかった。とにかくここから逃げたかった。母に恥をかかせたいという気持ちもあったのかもしれない。

2015-11-06 22:25:48
☪︎NeM @NeM_e_Ne

@the_smallest226 38 気付くとぼくは、住宅街の公園にいた。ぼくはブランコに座り、静かに漕ぐ。そしてぼくは今日あった出来事を思い出す。 何かに駆り立てられるように体育館に走ったこと。そこで聴いたマキ先輩の力強く美しいギターの音色。温かい部室。...母への、抵抗。

2015-12-04 18:08:34
☪︎NeM @NeM_e_Ne

@the_smallest226 39 ...今日はよく走ったなぁ。よく走って...よく泣いた。 初めてのことが多すぎて、これからのことを考えられない。...ぼくは、どうなるのだろう。ブランコの上で膝を抱える。

2015-12-04 18:09:58
☪︎NeM @NeM_e_Ne

@the_smallest226 40 空気が冷たい。シーンと静まりかえった夜。バイクが近づき、公園を通り過ぎ、そして止まる。...止まる? 「あれ?マリーちゃん?」 その声に、ぼくは条件反射で顔を上げる。 「マキ...先輩?」 やっぱりぼくは泣いていた。

2015-12-04 18:13:40
☪︎NeM @NeM_e_Ne

@the_smallest226 41 場面は変わり、ぼくは座布団の上に座っている。正座している。 何故こんなことになっているのか、未だ理解出来ていない自分がいたが、遠からず望むことになる願いが叶った。 ぼくはマキ先輩の家にいた。憧れの先輩の家にいた。憧れの先輩の部屋に座していた

2015-12-04 18:22:14
☪︎NeM @NeM_e_Ne

@the_smallest226 42 まぁ、ただ連行されただけなのだが。強制連行されただけなのだが。 話は家で聞く。風邪をひくから。 そんなことを言われ、ぼくは、大丈夫です。と、そんなことを言った。―――が、無駄だった。

2015-12-04 18:27:04
☪︎NeM @NeM_e_Ne

@the_smallest226 43 ぼくはヘルメットを被せられ、訳の分からないまま、バイクに乗せられた。二人乗りだ。 開放感に溢れ、風を感じる。なんて考える余裕はなかった。なんせ初めてのバイクだ。恐怖しかなかった。...マキ先輩は相当遅く走ってくれていたようだけれど...。

2015-12-04 18:35:13
☪︎NeM @NeM_e_Ne

@the_smallest226 44 時折あげていた「グェ」という悲鳴は何だったのだろう。ぼくは落ちないようにマキ先輩にしがみつくこと以外、何もしていないのだが。 まぁ、そんな訳でぼくはこの部屋にいるのだった。

2015-12-04 18:39:07
☪︎NeM @NeM_e_Ne

@the_smallest226 45 「ごめんね。私の家、お菓子とかないんだ。これでダメかな?」 そう言いながら、マキ先輩は部屋に入り、机にお茶と―――――― 「みたらし...団子...。みたらし...まる...」

2015-12-04 19:07:30
☪︎NeM @NeM_e_Ne

@the_smallest226 46 「あれ?みたらし団子嫌いだった?」 「いえ...お団子は大好きです。...丸いですし...」 「丸?」 なんということだ。ここでみたらし、お前が出てくるとは...

2015-12-04 19:09:54
☪︎NeM @NeM_e_Ne

@the_smallest226 47 ぼくの名前は御手師。つまりみたらし。ぼくは名前で弄られるというのが、どうにも苦手らしく、みたらし団子は嫌いだった。いや、実際は嫌いではない。丸いから。

2015-12-04 19:10:44