男子凍結 第三部

第三部、開始です。 ---- 第四部はこちら→ http://togetter.com/li/978294
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まとめ 男子凍結 第二部 SF小説「男子凍結」第二部のはじまりです~ ・・・で、このあとどうなるの?(ぉぃ) ---- 第三部はこちら→ http://togetter.com/li/897436 3729 pv 40

第三部

三十五

夢乃 @iamdreamers

「ん?」 都心からは少し離れた街にある榊北ネットワーク・セキュリティ・リサーチのオフィスで、榊多ハルナはキーボードに走らせていた手をふと止めた。 (これって、もしかして、もしかする?) 「ハルナ、どうかした?」 #twnovels

2015-11-08 17:29:07
夢乃 @iamdreamers

ハルナのその動きを目に止めた、共同経営者の北架輪ミホが自分の席から声をかけてきた。 「ん?どうもしないよ。ちょっと目が疲れちゃっただけ」 ハルナは両のまなじりを手で擦りながら答えた。 「無理しないでよ。ハルナがいなくなったら立ち行かなくなるんだから」 #twnovels

2015-11-08 17:29:26
夢乃 @iamdreamers

「あー、それは酷いですよ。私たちだって、もうそれなりに力を付けてるんですよー。そりゃ、榊多さんのレベルには程遠いですけど」 ミホの言葉に、まだ若い社員の魅柳ランが、周りの同僚に同意を求めながら言った。 「うん。言ってることには同意する」 #twnovels

2015-11-08 17:32:37
夢乃 @iamdreamers

ランの隣の席の架武波ミノリが言った。 「でも、それをあんたが言うな。ウチの中じゃまだまだなんだから」 「えへ」 「笑ってるんじゃない」照れたように笑うランの頭をミノリが軽く小突く。 「はいはい、あなたたちにも期待してるから、手を動かしてね」 #twnovels

2015-11-08 17:33:10
夢乃 @iamdreamers

「はーい」 ミホの言葉に、このやり取りを眺めていた他の社員も自分の仕事に戻っていった。ハルナも、何事もなかったように自分の端末に向かった。けれど、頭の中では別のことを考えていた。 (いつかはこうなるか。注意しておいたほうがいいのかな・・・) #twnovels

2015-11-08 17:33:36

夢乃 @iamdreamers

「ただいま」 「おかえり~。ごはんできてるよ」 帰ってきたハルナをカスミはいつものように明るく迎えた。 「うん、解った。着替えてくるね」 ハルナはそう答えて奥の部屋に消えた。 #twnovels

2015-11-08 17:34:24
夢乃 @iamdreamers

ハルナが食堂に戻ってきたときには、テーブルの上に夕食の準備が整っていた。椅子に座って手を合わせる。 「いただきます」 二人の声が重なった。茶碗と箸を手に取り、料理に箸を伸ばす。 「うん、今日のも美味しいね。カスミ、どんどん上手になっているんじゃない?」 #twnovels

2015-11-08 17:35:04
夢乃 @iamdreamers

「そういってもらえると嬉しいな」 「お金とれるんじゃないかな」 「さすがにそこまではいってないよ」 いつもと同じ、他愛ない会話。けれど、ハルナの様子にいつもと違う感覚を、カスミは確かに捉えた、と思った。 「ハルナ」 そう言ってハルナの目を真直ぐに見つめる。 #twnovels

2015-11-08 17:35:34
夢乃 @iamdreamers

「ん、なあに」 ハルナもカスミを見つめ返した。 「ねぇ、ハルナ、今日、何かあったの?」 「え?何かって?」 「何があったかは知らないわよ。でも、なんだかいつもと違う気がする」 ハルナはたっぷり三十秒ほどの沈黙の後、口を開いた。 #twnovels

2015-11-08 17:36:08
夢乃 @iamdreamers

「カスミには判っちゃうか」 「判るわよ。もう一緒に暮らして長いんだもの。話したくないなら別に話さなくてもいいけど」 「そういう訳じゃないけど。カスミにも関係ないとは言いきれないし、話したほうがいいかな」 と言ってまた口をつぐむ。 #twnovels

2015-11-08 17:36:39
夢乃 @iamdreamers

「うん、やっぱりまだ話さないでおく」 「えー、私に関係あるって言っといてそれはないんじゃない?」 「うん。だけど、母さんにも関係あるからさぁ、二回別々に話すのも面倒だし、今度母さんのところに行ったときに話すよ」 「そう?じゃ、それまで待つわ」 #twnovels

2015-11-08 17:37:19

夢乃 @iamdreamers

次の土曜日。夕日で空が赤く染まる頃、ハルナとカスミは、キリナの家を訪れた。 「いらっしゃい。待ってたわよ」 キリナは、いつものように笑顔で二人を迎えた。 「少し早いけど、晩御飯にする?」 「私はそれでいいけど、カスミは?」 「うん、私もお腹空いた」 #twnovels

2015-11-08 17:38:36
夢乃 @iamdreamers

「じゃ、二人共手を洗ったらダイニングに来てね」 キリナはそう言って先に食堂へ入って行った。 「ああいうところ、わざわざ口に出して言うのって、まだまだ子供扱いよね。もういい大人だってのに」 「親ってそういうもんじゃないの?」 #twnovels

2015-11-08 17:39:19
夢乃 @iamdreamers

そう言ったカスミの声は心なしか、寂しそうだった。ハルナは内心 (マズったな) と思いながらも口に出しては 「あんまり待たせないうちにダイニングに行こっか」 とカスミを促して洗面所へとスリッパに収めた足を向けた。 #twnovels

2015-11-08 17:39:54
夢乃 @iamdreamers

夕食の後、食堂から居間に移動して紅茶を楽しんでいた。その場で、ハルナがそれまでの話題を変えるように話し出した。 「ところで、この間ちょっと気になることに気付いたんだけど」 「ん?何?」 キリナが聞いた。ハルナは紅茶を一口飲んでから続けた。 #twnovels

2015-11-08 17:40:44
夢乃 @iamdreamers

「ここのところ、寄那濱市の警察からだと思うんだけど、ネットワークへのアクセスパターンが変わってるみたいなのよね」 「え。そんなこと判るの?」 カスミが聞いた。 「まあね。そういうのを調べるのが仕事だから」 「寄那濱って、カスミのいたセンターがあるところよね」 #twnovels

2015-11-08 17:41:41
夢乃 @iamdreamers

キリナの言葉にカスミが少し身を固くした。それに気付いたのかどうか、ハルナは何もなかったように言葉を続けた。 「そう。10月に入った頃からだったかな、今までにないくらい、監視カメラとかIDカードの使用状況へのアクセスがやたら増えたのよ」 #twnovels

2015-11-08 17:42:16
夢乃 @iamdreamers

「あの子が亡くなった、その調査のためね」 「そう考えるのが妥当ね。しかも、頻度からして一々令状を取っているとは思えないから、超法規的・・・と言ったら言い過ぎだけど、通常の規則を無視した調査が行われていると考えて間違いないと思う」 #twnovels

2015-11-08 17:42:45
夢乃 @iamdreamers

「でも、何で今になってハルナがそれを気にするの?」 「うん、それがね、ここ数日、アクセス先にちょっと変化が見られるのよね」 ハルナはカップの紅茶を眺めながら考えるように言った。 「監視カメラ情報なんかへのアクセスが減って、別のものが増えている感じ」 #twnovels

2015-11-08 17:43:37
夢乃 @iamdreamers

「具体的にはどんなところにアクセスしているの?」 「それがねぇ、よく解らないのよ。なんか、手当たり次第にいろんな情報にアクセスしている感じで。きちんと分析すれば何か傾向が解るかもしれないけれど、おおっぴらに調べて私の足跡を残す訳にもいかないし」 #twnovels

2015-11-08 17:44:02
夢乃 @iamdreamers

「要するに、警察の捜査が次の段階に入った、ってことでしょ。これが早いのか遅いのかはわからないけど」 キリナは何でもないことのように言った。 「そう言うけどね、母さん、それって警察の手が母さんやカスミに近付いたってことでしょ。気をつけないと危ないんじゃない?」 #twnovels

2015-11-08 17:44:41
夢乃 @iamdreamers

「普通にしてれば大丈夫。警察が捜しているのはシンイチであってカスミじゃないんだから。カスミとして生活して、接していれば問題ないわよ」 「・・・そううまくいけばいいんだけどね。でも忠告はしたわよ」 母の反応に呆れながらも、ハルナは不安を拭い去れなかった。 #twnovels

2015-11-08 17:45:15
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