2015年11月12日

金融とブロックチェーンと FinTech の行方

最近、にわかに話題となっている「金融とブロックチェーン」の話だけでなく、金融を ICT により変化させる「FinTech」がどこに向かうことになるのかを、拙著からの引用なども交えて考えてみました。
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Kenji Saito @ks91020

最近、にわかに金融の分野でブロックチェーンが注目を集めているので、その可能性・限界と変化の行く末を見極めるべく、自著「未来を変える通貨 ビットコイン改革論」「インターネットと金融 (角川インターネット講座10「第三の産業革命」第9章)」から引用して考えてみます。

2015-11-09 14:13:35
Kenji Saito @ks91020

現在、私はOrb社のチーフサイエンティストとして、Orbシステムの開発に携わっており、その最初のバージョンではブロックチェーンを独自開発しました。金融とブロックチェーンについてはその渦中にいて、また、開発者ならではの知見もあって、ここで考えをまとめてみようと思い立った次第です。

2015-11-12 05:46:05

ブロックチェーンとは何か。そしてその応用とは?

Kenji Saito @ks91020

まずは「未来を変える通貨 ビットコイン改革論」から。前半はビットコインの技術について細かすぎる話が続きますが「4.2 自動化される世界」の辺りからそれっぽくなってきます。なお、拙著では「ブロックチェイン」と表記していますが、巷では「ブロックチェーン」が標準っぽくなってきました。

2015-11-09 14:15:46
Kenji Saito @ks91020

「ブロックチェーンは、簡単に言うとデータベースだ」と言う人がいます。果たしてその説明は本質を捉えているでしょうか。

2015-11-12 05:46:40
Kenji Saito @ks91020

『サトシによる設計文書では、ブロックチェインを導入するくだりのところで、「新聞に載せる代わりに」といった表現が出てきます。ブロックチェインは、新聞のように何かを日付とともに公知にして、その事実関係を証明する機能を持つわけです』#斉藤賢爾「未来を変える通貨」p.160

2015-11-09 14:19:10
Kenji Saito @ks91020

というわけで、ブロックチェーンとは何だ?と聞かれたら、私は「自動公知化マシン」だと答えます。おそらく最初の発想は、タイムスタンプサービスをどう管理者を置かずに群衆で実現するか、ということだったのでしょう。

2015-11-12 05:47:51
Kenji Saito @ks91020

『このことを応用して、例えば…ビットコインのブロックチェインの中に文書のダイジェストを埋め込み、その文書の存在を証明…できる…サービスが作られています…安価な公証サービスを個人で開設してしまったのです』#斉藤賢爾「未来を変える通貨」p.160

2015-11-09 14:21:57
Kenji Saito @ks91020

ですので公証サービスはブロックチェーンのむしろストレートな応用ですね。公知化の作用を安価に実現できるとしたら何に応用できるか、という問いと「通貨」という答えとの間には実はギャップがあるようにも思います。

2015-11-12 05:48:30
Kenji Saito @ks91020

『ブロックチェインに置けるのは、静的な文書(の存在証明)だけではありません。そもそもビットコインでは、BTCという「量」の支配の移転をブロックチェインに記録しています。何らかの状態の遷移を実現しているわけです…』#斉藤賢爾「未来を変える通貨」p.161

2015-11-09 14:26:55
Kenji Saito @ks91020

任意の状態遷移をブロックチェーン上で公知にすることにより、パブリックな分散コンピュータのようなものが実現できます。それを何に使うかというと、例えば「スマートコントラクト」と呼ばれる、資産の自動移転プログラムのようなものです。

2015-11-12 05:49:08
Kenji Saito @ks91020

『例えば、先に紹介した公証サービス…の応用例のひとつは遺言状の存在証明です。ある資産家の遺言が、その死後に捏造されたのではなく、生前に存在していたことを証明…できるだけでなく、その人の死を契機として、遺産の処分を自動的に処理…できます』#斉藤賢爾「未来を変える通貨」p.161

2015-11-09 14:30:40
Kenji Saito @ks91020

遺言状にデジタル署名を施すだけのことなら既にできますが、その人の死後に改ざんされることは防げません。秘密鍵の秘匿性が失われるからです。ブロックチェーンでダイジェストだけでも公知にしておけば、改ざんは検出できることになります。この辺の発想はタイムスタンプサービスそのものです。

2015-11-12 05:51:21
Kenji Saito @ks91020

遺言の証明とその執行が自動化できるなら、証券一般にも応用できるでしょう。話は少しずつ金融っぽくなってきます。

2015-11-12 05:52:00

ブロックチェーンとサイバーフィジカル。ブロックチェーンが実世界で応用されることへの課題。

Kenji Saito @ks91020

『…少なくとも一部の業種については、企業の機能をスマートコントラクトの考え方でプログラムとして記述できる…その延長上に、企業の経営さえも自動化できるという考え方が生まれています』#斉藤賢爾「未来を変える通貨」p.162

2015-11-09 14:33:36
Kenji Saito @ks91020

『例として…自動化された保険会社は…互助会のように機能し…インターネット上で自律動作しているプログラムが、参加者から定期的に掛け金を自動送金により受け取り、自動で資産運用し、自動車事故などの場合に、対象となる参加者に自動で保険金を送金…』#斉藤賢爾「未来を変える通貨」p.163

2015-11-09 14:35:50
Kenji Saito @ks91020

企業の経営さえ自動化されうる、というのは、激しすぎる展開かも知れませんが、ブロックチェーンの技術は、このように自動化の文脈に置いて考えることができます。ただし、後述するように実世界における応用には課題があります。

2015-11-12 05:53:22
Kenji Saito @ks91020

企業という存在自体はパブリックなものなので、それを自動化することは公知化を担う従来のブロックチェーンを念頭に議論できるのですが、企業内・企業間で業務を自動化する応用となると、公知化よりも「共有化」の話になってくると思います。

2015-11-12 05:53:48
Kenji Saito @ks91020

ただし、公知化は共有化の激しい例だと考えることもできるので、その最も激しい条件に向けて作られている技術を共有化に応用することは可能でしょう。いわゆる permissionless (参加許可不要) と permissioned (参加許可制) の議論になります。

2015-11-12 05:54:42
Kenji Saito @ks91020

Permissioned なブロックチェーン、すなわち参加を許可制にして制御可能にできる前提ならば、野生の P2P システムよりも作りやすくなるでしょう。ただ、その際には実世界での応用における課題を認識しておく必要があります。

2015-11-12 05:55:18
Kenji Saito @ks91020

そして、実世界での応用における課題を出発点にして設計するなら、むしろブロックチェーンは選択肢としては捨てた方がよいというのが私の意見です。

2015-11-12 05:55:41
Kenji Saito @ks91020

『そうした仕組みが正しく動作するためには、スマートコントラクトのためのプラットフォームが、物理的な世界と接続されている必要があります…スマートコントラクトの実用化には、「サイバーフィジカル…」な環境が前提になるということを意味します』#斉藤賢爾「未来を変える通貨」p.163

2015-11-09 14:37:34
Kenji Saito @ks91020

『…大きく2つの懸念…ひとつは、ブロックチェインがビザンチン将軍問題の解だという単純な考え方…合意形成のプロセスに対する攻撃への脆弱性を残す…』#斉藤賢爾「未来を変える通貨」p.164 → ネットワークを分断する攻撃に対する懸念です。

2015-11-09 14:42:03
Kenji Saito @ks91020

ビザンチン将軍問題とは、メッセージが正しく届かない場合でも動作することを要求する、複数の主体の間での合意の問題です。複数の将軍が、誤っているかも知れない伝令だけを頼りに、攻撃か撤退かに合意します。

2015-11-12 05:56:55
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