薬学たんと十全大補湯
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予習用 薬学たんの陰陽虚実講座 togetter.com/li/501838 薬学たんの気血水講座 togetter.com/li/582050
2015-11-12 18:59:36では、時間になりましたのでまったり始めていきます! 漢方初心者にも分かるように説明したいと思いますが、漢方医学についてある程度の知識がある人の方がわかりやすいかも知れません 3~4分に1ツイートでお送りします!
2015-11-12 19:01:31テーマは十全大補湯というお薬ですっ! まず、十全大補湯(ジュウゼンタイホトウ)とはどのようなお薬なのか? このお薬は、特に疲労衰弱している方の気力や体力を補うお薬です このようなお薬は一般に補剤と呼ばれ、他にもいろんな種類のものがあります
2015-11-12 19:05:00具体的には、虚弱体質で疲れやすく、胃腸も弱っており、貧血などの症状も出ているような方が対象となります 漢方医学分かる勢向けに言えば、陰虚証向けで気血水の気と血を補うと言った感じですね
2015-11-12 19:08:23処方名は、生薬十種を用いた処方で、気や血の滞りを大きく補正し、病気を全快させるという意味から来ています 中国は宋時代、「和剤局方」という書物で紹介されたお薬なんですね
2015-11-12 19:11:55構成生薬は、黄耆(オウギ)、甘草(カンゾウ)、桂皮(ケイヒ)、地黄(ジオウ)、芍薬(シャクヤク)、蒼朮(ソウジュツ)、川芎(センキュウ)、当帰(トウキ)、人参(ニンジン)、茯苓(ブクリョウ)の十種です 滋養強壮作用を持つものが多いですかね
2015-11-12 19:14:03構成生薬のうち、地黄、芍薬、川芎、当帰は四物湯(シモツトウ)というお薬の構成生薬です 四物湯は、もともとはさらに昔の書物にある芎帰膠艾湯(キュウキキョウガイトウ)から艾葉(ガイヨウ)、阿膠(アキョウ)、甘草(カンゾウ)という三種の生薬を抜いたもので、婦人の聖薬とも呼ばれます
2015-11-12 19:17:01四物湯の構成生薬のうち、地黄、川芎、当帰は血を補う作用があるとされ、芍薬には血の巡りをよくする作用があるとされています 体力が低下していて、貧血や手足の冷えがあり、皮膚の色が悪く乾燥している方に向いています
2015-11-12 19:20:02漢方分かる勢に向けて言えば、四物湯は陰虚証向けの血虚に対する基本の方剤です 十全大補湯を含め、多くの血虚に対する薬のベースとなる構成なんですね!
2015-11-12 19:23:04また、蒼朮、人参、茯苓、甘草は四君子湯(シクンシトウ)という漢方薬に含まれる生薬たちです。 四君子湯として使う時は、普通はこれに加えて生姜、大棗を入れて使いますね
2015-11-12 19:26:50四君子湯は、胃腸が弱ってしまい、食欲がない時に使う処方です! この四君子湯に陳皮(チンピ)、半夏(ハンゲ)を加えた六君子湯(リックンシトウ)という処方は、四君子湯に体に溜まってしまった水分を出す働きを加えたもので、今日もよく使われるメジャーな漢方薬です♪
2015-11-12 19:29:03漢方分かる勢に向けて言えば、四君子湯は脾胃の気虚に対する処方で、補気剤の基本処方です! 気を補う時はまず胃腸から、という傾向と、その際人参が使われやすいことを覚えておくと、派生処方が覚えやすいですね
2015-11-12 19:32:27この四君子湯と四物湯を合わせた処方のことを、八珍湯といいます ここに滋養強壮作用を持つ桂皮、黄耆を加えて十全大補湯になります
2015-11-12 19:35:47よって、漢方分かる勢に向けて言えば 気血が足りず、脾胃が弱っており、冷え気味の方に向きますね 証について細かいとこは、これから原典を引用して話します
2015-11-12 19:38:06さて、十全大補湯は和剤局方(ワザイキョクホウ)という書物で紹介されたという話をしましたが、ここで実際和剤局方ではどのように紹介されているのか、引用してみたいと思います!
2015-11-12 19:41:24『 男子婦人諸虚不足、五労七傷、飲食進まず、久病虚損、ときに潮熱を発し、気骨脊を攻め、拘急疼痛し、夜夢遺精、面色萎黄、脚膝力無く、一切の病後、気旧の如からず、憂愁思慮、気血を傷動し、咳嗽中満、脾胃の気弱く、五心煩悶するを治す。並に皆之を治す。(続く)
2015-11-12 19:43:37(承前)此の薬性温にして熱せず、平補にして効あり。気を養い、神を育み、脾を醒し、渇を止め、正を順らし、邪を避け、脾胃を温暖して其の効つぶさに述ぶべからず 』(和剤局方巻五治諸虚より引用)
2015-11-12 19:46:23……何て書いてあるんですかね……? 簡単に読んでみますと、最初の方はどんな方に用いればいいのか書いてあるようです 「男子婦人ともに、様々な病気や過労で食欲の低下したもの。長い病気で虚証になったもの。潮の満ち干きのように規則正しい発熱が時折あり、身体が痛むもの。夢が多いもの(続く)
2015-11-12 19:50:24顔色が黄色く、足に力が入らないもの。一切の病気の後、気が滅入り元のようにならず、気血が衰え、咳が出て腹が張り、脾や腎をはじめとする体の機能が衰えているものを治す。」 こんなところでしょうか…… #古典不安
2015-11-12 19:54:06此の薬性温にして……以降はお薬の効能について書かれていますが、先程説明したようなことが書いてあるので省略します……! さて、こうして訳したものを参考にして、実際にはどんな時に使えるのか考えてみましょうか
2015-11-12 19:57:57病気で気力の低下した方には使えそうなので、例えば抗がん剤を用いて闘病中の時、手術の後の衰弱を防ぐ時、慢性肝炎などの慢性疾患で体力が奪われている時なんかには良さそうです! 家庭では、風邪が長引いて冷え気味であり、食欲がなくなってしまった時などに良いでしょう♪
2015-11-12 20:01:57では、最後に似たような処方を挙げて、使い分けを考えます まず挙がるのは補中益気湯(ホチュウエッキトウ)ですね! 他に人参養栄湯(ニンジンヨウエイトウ)もかなりよく似た使い方をします とりあえず今回はこの二つについて見てみましょうか
2015-11-12 20:05:10十全大補湯は貧血や手足の冷えの改善と、気力の補充を狙えるのに対し、補中益気湯は気力だけをググッと補充してくれます! 補中益気湯には、随分前に四物湯のとこで出てきた、芍薬、地黄、川芎といった、血を補ったり巡りを良くしたりする生薬が入っていないことからも、効能が想像できますね……!
2015-11-12 20:08:24漢方分かる勢に向けて補足すると、十全大補湯は陰虚証向けとなっていますが、補中益気湯は陽虚証向けになってます 疲れると熱が出てしまうなどという熱性の気虚に使います 陰虚証向けの補気剤としては、黄耆健中湯(オウギケンチュウトウ)なんかが良いですね! この話はまたそのうち……
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