アンエクスペクテッド・ゲスト #2

日本語版公式ファンサイト「ネオサイタマ電脳IRC空間」 http://d.hatena.ne.jp/NinjaHeads/ 書籍版公式サイト http://ninjaslayer.jp/ ニンジャスレイヤー「はじめての皆さんへ」 http://togetter.com/li/73867
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ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「総合棟が半壊しているぞ!ウサギ棟!ニワトリ棟もだ!」廊下からデッドエンドが叫んだ。KA-DOOOM!さらなる爆発。悲鳴。アラート。炎。銃声。「ちくしょうめ、いったい何が起こってやがる!」タフガイが唸った。彼はスポイラーにノボセの警護を任せ、即座にデッドエンドと飛び出した。 21

2015-11-11 14:51:25
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

『火の用心!火の用心!』威圧的な電子音声と非常ボンボリの回転。火災警報が発令され、一部の棟ではスプリンクラーが作動を開始していた。常に収容人数が数百パーセント超の過密状態にあり、数千人の犯罪者がスシめいてひしめくスガモ監獄島において、火災は最も警戒すべきインシデントである。 23

2015-11-11 14:56:36
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

ヨロシ・バイオサイバネティカ社の大型輸送機から墜落したその鋼鉄製カーゴは、まるで無力なショージ戸を破るかのように中央総合棟の老朽コンクリート壁を易々と突き抜けた。そして途中にいた何人もの囚人をネギトロじみた死体に変えながら滑り、囚人収容棟のひとつ、ドラゴン棟に突き刺さった。 24

2015-11-11 15:02:15
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

広いレクリエーション室内は一瞬にしてガレキと舞い上がる粉塵に満たされ、天井から吊るされたタングステン灯がバチバチと火花を散らす。ガゴンプシュー!鋼鉄カーゴが圧縮空気を吐き出し、ハッチが自動的に開かれた。囚人たちは廊下側まで避難し、目を大きく見開き、遠巻きに成りゆきを見守る。 25

2015-11-11 15:08:35
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「中に誰かいるのか!?」2人の看守マッポが暴徒鎮圧ショットガンを構えながら、じりじりと鋼鉄カーゴに接近する。『火の用心!火の用心!これよりコールされる棟の囚人は、グラウンドまで避難重点……』一度も聴いた事のない類の非常プログラム音声が、看守たちの心音を速め、汗をにじませる。 26

2015-11-11 15:14:22
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「凍っていたのか……?」看守の1人はカーゴ側面に触れ、一面を覆う白い霜と冷気に気づいた。払い退けるとそこには、白い字で書かれたバーコードと紋章、漢字に似た奇妙な言語。スキャンを行う。解読不能。唯一解ったのは、それがヨロシサン社内でのみ用いられるクリプト・カンジである事。 27

2015-11-11 15:22:02
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

カーゴの容量は大型トレーラーの積荷程度。それが冷凍保存に近い状態で、大型輸送機によって空輸されていた。それが墜落したのか。では積荷は。「一体、何が」看守が横を振り向くと、ハッチ付近に向かっていたもう一人が、いつの間にか姿を消していた。「おい、勝手に中に入るな!」返事が無い。 28

2015-11-11 15:26:43
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「おい!ヨロシサンと面倒ごとを構えたいのか!?ヤメロ!」看守はショットガンを強く握りしめながら、先程まで仲間が立っていた場所へと走った。CHOMP!GULP!SPLAT!SPLAT!SPLAT!コンテナ内から奇妙な音が聞こえてきた。そして弱々しい悲鳴。「アイエエエエエ……」 29

2015-11-11 15:32:50
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「おい、何だ!?何が起こっている!?」看守はハッチ部から距離を取りながら、その内側に向かってショットガンを構えた。「中に何がいたんだ!?」カーゴ内は暗い。制御UNIXの微かなLED光、破損したと思しき装置類の立てる火花。そして、邪悪な赤い3つの眼が輝いた。「アイエッ!?」 30

2015-11-11 15:39:14
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

看守のショットガンに装着された小型の漢字ライトが、一瞬、それを照らし出した。人型の何か、怪物としか呼べないものが、仲間の看守を、無造作に食っている。SPLAT!SPLAT!血飛沫が飛んだ。「アイエエエエエエ!」看守は悲鳴を上げ、逃げようとし、転倒した。片方の足裏に違和感。 31

2015-11-11 15:45:54
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「アイエッ!?」大きさはピザ程度、灰色のオモチめいた粘着質の物体が、靴裏にべったりと張り付いていた。より正確に言うならば、それは奇怪な粘液を分泌し、看守用ブーツの革とゴム底を溶かし、靴下も足裏の肉も溶かし、骨までも溶かそうとしていた。そして恐るべき事に、痛みは感じなかった。 32

2015-11-11 15:50:50
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

看守はパニックに陥った。「アイエエエエエエエ!溶ける!」そして気付いた。粘着物体には蔦めいた触手があり、コンテナの中に伸びていることを。己は、魚めいて釣られたのだと。「yyyyyyRRRRysh」それは、闇の中で嘲笑うような声を上げた。看守はショットガンの引き金を引いた。 33

2015-11-11 15:57:31
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

BLAMN!だが散弾はトレーラー内の影ではなく、天井のタングステン灯に命中した。彼の足を捉えていた触手が一瞬で引き戻されたのだ。看守の体は無力なジョルリめいて仰向けに倒れ、ガレキに後頭部を強打し、闇の中へと足先から飛ぶように消えていった。CHOMP!GULP!SPLAT! 34

2015-11-11 16:06:34
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

全ては一瞬の出来事であった。「アイエエエエエ……?」「今、一体何が……?」遠巻きに見守っていた囚人たちは、巻き上がる粉塵を払いのけながら、目をこすった。「何をしている!各人の部屋に戻りなさい!」「ここは危ない!他の看守はどこへ行った!?」追加の看守2人が廊下からやってきた。 35

2015-11-11 16:12:38
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「さっきの銃声は何だ!?」「それが、皆あのコンテナの中に消えちまって」「おい待て、何か聞こえるぞ!」CHOMP!GULP!CHOMP!GULP!2人の看守はショットガンを構え、コンテナのハッチへと近寄った。投げ縄めいて触手が飛び、片方を絡め取って、コンテナの中へ飲み込んだ。 36

2015-11-11 16:18:44
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「アイエエエエエ!?アイエエエエエエエ!」BLAMN!BLAMN!BLAMN!残された看守はパニックに陥り、トレーラー内に向かって闇雲に射撃を行った。「おい看守さん!何がいるんだ!」「何を撃っているんだ!?」囚人たちはあまりの恐怖に凍りつき、その場から身動きができなかった。 37

2015-11-11 16:20:44
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

やがて銃声が止んだ。コンテナ内に残っていたUNIX機器は全て破壊され、バチバチと火花を放ち、煙を上げていた。「ハァーッ!ハァーッ!やったぞ!何だ、何だったんだ今のは!?」看守は完全な真っ暗闇に向かってライトを掲げた。次の瞬間、また赤い三つ目が輝き、跳んだ。「アイエッ!?」 38

2015-11-11 16:26:00
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

それは蛍光緑の血を滴らせながら、獣じみた前傾姿勢でコンテナから飛び出し、殴りつけた。あるいは不愉快そうに薙ぎはらった。ヘルメットを被った看守の首がラグビーボールめいて飛び、囚人たちの所へ。「アイエッ?」凶悪殺人犯の大男が、花嫁ブーケめいてそれをキャッチし、目を白黒させた。 39

2015-11-11 16:33:15
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

CHOMP!GULP!CHOMP!GULP!SPLAT!SPLAT!SPLAT!天井のタングステン灯がバチバチと火花を散らし明滅し、その怪物の影を囚人たちに詳らかにした。「yyyyyyyyyRRRysh」それは看守の死体を引き裂き、捕食していた。「「アイエエエエエエエ!」」 40

2015-11-11 16:36:50
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

ナムアミダブツ!殺されるのではない。食われるのだ。言葉の通じぬ何かに。その本能的恐怖によって、囚人たちは恐慌に陥った。押し合いながら、狭い廊下への入り口に向かって、我先にと逃げた。怪物が背後から飛びかかり虐殺を開始した。それは歓喜していた。ここはオレンジ色の餌に満ちている。 41

2015-11-11 16:42:48
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

オレンジ色ツナギを着た囚人達が既に5百人近くグラウンドに集まり、整列を始めていた。墜落した輸送機破片の直撃を受け、いくつかの棟で火の手が上がっている。マッポ消防隊員がホースを構え、そこかしこで放水を行う。囚人の多くは、ここでホースが己に苦痛以外の物をもたらす所を初めて見た。 43

2015-11-11 22:58:57