川内さんが提督と焼肉を食べに行くだけ

深海さかな @dzurablk_kai

川内さんが提督と焼肉を食べに行くお話 #今夜の川内

深海さかな @dzurablk_kai

「ねえねえ提督！ 今日は何食べに行くの？」 後部座席に座る那珂が、運転席の背もたれを後ろに引き倒す勢いで体を乗り出す 「そうだな・・・ 久しぶりに焼肉でもどうだ」 「ほんと！？」 「また無理しちゃって、月末になってお金貸してとか言っても知らないよ？」 #今夜の川内

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後部座席で歓声を上げる那珂や神通とは対照的に、助手席の川内からはからかうような言葉 「なに、心配いらん」 「だといいんだけどねー？」 だがいたずらっぽい笑みとは裏腹に、川内の声音も明るい 「せっかくの月１の外食だ 奮発したってばちは当たらないだろう？」 #今夜の川内

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「それもそうね」 そう返すと車窓に視線を戻す川内 「あーでも、服に匂いがついちゃうのは困るなあ・・・ こんなことなら制服脱いでくればよかった！」 「一応、消臭剤ならこの車にあったと思ったけれど・・・」 あいも変わらず後部座席はにぎやかだ #今夜の川内

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毎月こうして安月給をはたいて食事に出るのは、いつも補佐として自分を支えてくれる川内たち三姉妹への、提督なりのほんのささやかなお礼だった だがそれ以上に、日頃の激務では決して垣間見ることのできない、家内と義妹の可愛い笑顔が見られるということが、提督にとっての楽しみだ #今夜の川内

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やっぱり、焼肉にして良かったな・・・ そう一人心中でごちて顔をほころばすと提督は、小雨に濡れそぶつ路面にカラフルなネオンが映るのを尻目に、アクセルを踏み込むのだった #今夜の川内

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「やっと着いたー！」 「うわあ、まだ降ってる・・・」 「傘を忘れないようにしないとね」 三者三様に陸自払い下げのパジェロから降りる川内姉妹 「悪い川内、先に行っててくれ ちょっとコンビニで金下ろしてくる」 「はいはーい」 「ねえ提督、食べ放題でいいんだよね！」 #今夜の川内

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「ああ できれば飲み放題もつけといてくれ」 「帰りの運転はどうするんですか？」 「代行頼めば良いだろ」 「はーい！！」 会話もそこそこに那珂が姉たちの背中を押しながら店に入っていくのを見届けると、幹線道路を挟んで向かいにあるコンビニめざし、提督も横断歩道を探しに出た #今夜の川内

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「ねえねえ、コースはどれにする！？」 「あんまり高くないほうが・・・」 「あ、私牛タン食べたーい」 「タンは無いみたいですね・・・」 「あ、この特上ホルモンコースいいなあ！」 「おー、こりゃ提督、月末は自炊コースだわ」 「大丈夫かしら・・・？」 「はい、注文ー！！」 #今夜の川内

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「あ、私ホルモンは無理だから神通よろしくー」 「じゃあ姉さんには、豚バラ少し分けましょうか」 「あーいいよ別に 那珂ー、ビール頼んでー」 「神通ちゃんは？」 「あ、じゃあこのシャンディガフで・・・」 「わー、お洒落ー！ そしたら頼むねー！」 #今夜の川内

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「ねえねえ神通ちゃん、サラダ取りに行こ！！」 「そうね 姉さんは？」 「あー、私いいわー キムチあったらよろしくー」 「わかりました」 「わー！ アイスクリームも取り放題だよー！」 「あっ那珂ちゃん、待って」 #今夜の川内

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「はあ・・・ 提督ったら見栄張って、無理しちゃって ほんと、子供なんだから」 #今夜の川内

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「ぶえっくし！！ ・・・あいつら、特上コースとか頼んでないだろうな 全く、あの三人にかかったら食べ飲み放題でも金がかかって・・・ うわ、こりゃ今月も厳しいなあ」 #今夜の川内

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「ねえー、提督ー？」 「うん？」 隣からほろ酔い加減の川内の声 向かいでは焼肉を食べ過ぎたのか、那珂がお腹を押さえながら仰向けに寝転がり、その隣では日本酒のとっくりの山を前に神通が頭を抑えて俯いている #今夜の川内

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どうやら二人とも、うたた寝しているようだ 「提督ってー、私のこと、好きー？」 からからと芋焼酎のロックを手の中で転がしつつ、肩ごしに上目遣いな視線を寄越す川内 「ああ」 「どれくらいー？」 酔っ払い相手に言葉は不要、と唇を奪う 「えへへー、私も好きー！」 #今夜の川内

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そう言って再度、唇を重ねる 今度は川内のほうから、強引に舌を捻じ込むようなキス 川内の舌からは、焼肉屋だからだろうか、レモンとネギの風味が香った 「提督、お酒臭いよ？」 「キスしてきたのはそっちだろ」 「提督が先だもーん！」 「悪酔いしたらお前のせいだからな」 #今夜の川内

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口に残った川内の飲んでいる焼酎の香りをビールで流し込みながら提督は笑う 「・・・提督」 「ん？」 「ありがと」 急にしおらしくなる川内 「提督いっつも私たちに気を使ってくれるし、こうしてご飯とかも・・・ いつも感謝してるよ」 「おいおいやめてくれよ、らしくもない」 #今夜の川内

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「本当だよ」 川内は肩に柔らかく抱きつくと、肩に頭を預ける いつものクールな印象からは想像のつかない、二人きりの時だけに見せる顔 「本当に、感謝、してるんだから・・・」 「・・・川内？」 見ると川内はうつらうつらと船を漕いでいた 「やれやれ、困ったやつだな」 #今夜の川内

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食べ放題の終了の電話で起こさないよう、先に会計だけ終わらせようと提督が立ち上がろうとしたときだった 「ん・・・」 「川内・・・？」 服の裾を掴む川内の手 「待って・・・」 「おいおい、会計だけ・・・」 「ダメ」 寝ぼけているのか川内は手を離そうとしない ＃今夜の川内

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「提督は、行っちゃだめ・・・」 「だめったって、どうするんだよ？」 「・・・私のそばから、離れないで ずっと、そばにいて・・・？」 その言葉に提督も、川内の肩を抱くと耳元で囁きかける 「ああ、もちろんだ」 #今夜の川内

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そこでようやく横になり、本格的に眠り始めた川内を見届けてから、提督はレジカウンターへ向かう なけなしのフクザワを店員に渡す折、ふと口の端からもれる笑み 「なにか良いことでもあったんですか？」 「いや、なに」 提督は恥ずかしげに頭を掻きながら、答えた #今夜の川内

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「今日はせっかく来たのに飲まされてばかりで肉にありつけないわ、なけなしの食費もなくなるわで・・・ ただ、今日この店に来たおかげで、嫁のことが一層好きになったんでね それだけで、お腹いっぱいだよ」 ＃今夜の川内

深海さかな @dzurablk_kai

おしみゃー #今夜の川内