グラウンド・ゼロ、デス・ヴァレイ・オブ・センジン #2
ネオサイタマのニンジャ戦力には戦争初期から手を焼いてきた。彼らは大っぴらな作戦行動はとらぬが、要所要所で用いられ、思うままに戦況のバランスを調整してきた。キョート上層部は現在のパワーバランス状況に満足していない。カブキコムとデスドレインの存在が全てを変えるだろう。 48
2015-11-16 00:37:56「俺は実際楽しみだぜ、ミコシ=サン」デスドレインは呟いた。ミエザルがその呟きを聞き取った。ジュー・ウェアがフラフラと電磁柵に近づいてきた。マジックモンキー同士のコミュニケーションは推奨されている。「暴れるんですかい、デスドレインの旦那ァ。いいよなあ。俺も好き放題やりてえなあ」49
2015-11-16 00:45:21「好き勝手やりてえのか?」デスドレインは透明のニンジャに顔を向けた。「やりゃいいじゃねェか」「残酷な事言うなよ、俺のやりてえ事わかってんだろ。ここは人生の終着駅だよォ」「なあお前、夢は見るか」「何だよ急に」「金色の太陽……太陽じゃねえな……箱か?あれは」「アンタも神秘主義か」50
2015-11-16 00:52:12「感じるんだよなあ」デスドレインはミエザルに言うともなく、呟いた。「ヘヘヘ……気分いいンだ、俺は。頭がよ……冴えてンだよな……」「冴える?」「もういいや」デスドレインは目を閉じた。「チェッ、どうせ気の利いた事言えねえよ、俺は」ジュー・ウェアが離れてゆく。 51
2015-11-16 00:57:21目を閉じると、上方に金色の箱、そして水平方向、近づきつつある感覚。「ガイオン・ショージャノ・カネノコエ……」『なに?』ミコシが聞きとがめた。デスドレインは続けた。「ショッギョ・ムッジョノ・ヒビキアリ。タダハルノヨ……ユメゴトシ……ヒトエカゼ……チリオナジ」彼は眠りについた。52
2015-11-16 01:02:27「そういや、おかしな夢を見てよ」ガンドーがタクティカルゴーグルを覗きながら呟いた。アズールはガンドーを見た。「どんな夢」「まあ、夢の内容は大した事じゃねえが。俺はお前と、クソッたれ探索行をもう一度なぞっていた。疲れちまった」彼はアズールにゴーグルを手渡した。「見えたぜ」 54
2015-11-16 01:08:00二人は断崖のふちにうつ伏せになり、キョート軍の前線をかろうじて確認する。サイバー馬は谷間に待機させている。「私も見た」「見えたか?こっからは慎重を期して徒歩だぞ」「見たのは、夢」アズールがゴーグルから目を離した。「それからずっと感じる。近づいているのがわかる。あいつに」55
2015-11-16 01:12:10「感じるのか」「……」アズールは頷いた。「そうか」そういう事もあろう。二人は断崖を滑り降りた。「やれやれ。とんでもない所まで来ちまったもんだ」ガンドーはタバコを咥え、火をつけた。最後の一本だ。断続的な頭痛は消えない。この頭痛は厄介だ。敵に仕込まれたトロイだ。 56
2015-11-16 01:14:33敵陣に潜入を果たし、まず行うべきことは、このトロイの懸念の排除である。仕組みは完全に把握できてはいないながらも、支援者の元老の情報を通じ、ガンドーはある程度の対応策をあらかじめ検討してある。敵陣にはトロイを管理するコマンド・マトイが必ず存在する。それを見つけ出さねばならぬ。57
2015-11-16 01:19:06潜入した先で敵のマジックモンキーとひとまとめにガンドーが操作されるようなマヌケを冒せば、この探索行の何もかもがおじゃんになる。それは避けねばなるまい。そして標的を見つけ出す……やるべき事は幾つもある。「行くか」「乗って」アズールが言った。「何?」彼女は透明の獣の背をなでた。 58
2015-11-16 01:21:39