「潜る感覚」

病理診断のために、顕微鏡を覗きこんでいる時の感覚について、「病理専門医・ヤンデル」先生が語っています。 病理診断の面白さの一端が見えてきます。 ドラマ「フラジャイル」でも、病理医が感じている、こんな感覚が描写されて欲しいものです。
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病理医ヤンデル @Dr_yandel

昨日は細胞診専門医試験にむけて、細胞検査士(臨床検査技師さんの資格)用の模擬試験をお金払って受けさせてもらったんだけど、大学の講義室に顕微鏡30個ならべてあって、それぞれプレパラートが置いてあるのね。で、それを5分とか1分半ずつ見ていく。標本じゃなくて人が動いて受ける試験(続く)

2015-11-16 10:39:55
病理医ヤンデル @Dr_yandel

そしたらさ、大学の顕微鏡って30台に2,3台くらいの割合で、「左右の光軸がずれてる」のよ。わかりやすく言うと、いくらピントあわそうとしても「乱視」みたいに見えちゃう。もう視界ぐらんぐらんで激烈につらいわけ。あのね、あんな顕微鏡で学生実習したらね、そりゃ学生も顕微鏡嫌いになるわ

2015-11-16 10:41:03
病理医ヤンデル @Dr_yandel

今日はそんな顕微鏡のせいかどうかは知りませんが首のこりがひどくて、ああ俺はいつもいかに恵まれた顕微鏡で診断させてもらってるってことなんだけども、もうつかれました。医学生に言っとくけど顕微鏡って診断用のホンモノはまず「酔わない」からな。酔うのはそれ、顕微鏡が悪いか使い方が下手なだけ

2015-11-16 10:42:03
病理医ヤンデル @Dr_yandel

ところで、昨日「細胞診の模擬試験」を受ける最中、いつもみたいに画像とか臨床情報とべったべたに癒着して総合診断してる立場じゃなくて、ある意味「顕微鏡像だけで勝負する」気持ちになったのね。日常業務の細胞診は臨床情報も大事なんだけど、昨日やってたのはほら、試験だから。で……

2015-11-16 10:44:33
病理医ヤンデル @Dr_yandel

世間一般の人が思ってる病理医って「顕微鏡ばっかり見てる仕事」なんだけど、俺はぜんぜんそんなことなくて、「顕微鏡ばっかりじゃつまらんぜ」とすら思ってたわけよ。でもねえ昨日試験の最中に、なんていうかなあ、「ハチワンダイバーでダイブ」するじゃない。あんな感じで細胞の世界に飛び込むのよ

2015-11-16 10:45:25
病理医ヤンデル @Dr_yandel

フラジャイルでも宮崎が顕微鏡みて大事な所見をみつけたあとに「……ぷはっ」って息継ぎするシーンがあるんだけど、組織診断の世界ってああいう「潜る感覚」があるんだね。俺、ほんとうに久しぶりにそういう感覚になったかもしれない

2015-11-16 10:46:08
病理医ヤンデル @Dr_yandel

臨床医の気持ちとか、臨床診断学とか、画像診断学とかと一緒に病理を構築していく普段のスタイルってやっぱりあくまで「片輪」なんだな。病理のもう片側のタイヤには「組織診断の世界に潜る感覚」があるんだな……って思ったわ。俺この世界今までよりもう少し好きになったかもしれない

2015-11-16 10:47:05
病理医ヤンデル @Dr_yandel

正直、学生時代は顕微鏡みても意味わかんなかったし組織実習はほとんどサボってたんだけど、みられるようになったらこれもやっぱおもしろい世界だったわ よく考えたら子供のころに顕微鏡とか望遠鏡もってるのってあこがれだったからな……男のコのオタク精神が顕微鏡と合わないわけがないんだ

2015-11-16 10:47:54
病理医ヤンデル @Dr_yandel

国立がん研究センター時代の俺の師匠は消化管病理の大家なんだけど、「俺は消化管の世界で臨床医とガチガチやりながら、実は全く関係ない軟部腫瘍の世界でひたすら標本をみてバランスをとったりしているんだ」と言っていたのを思いだした やっぱ師匠正しいな 俺も両輪がんばろ……まず細胞診だな

2015-11-16 10:49:08
病理医ヤンデル @Dr_yandel

助詞の使い方とかおかしいところもあった連ツイだけどそういうときはたいていぼくの心の声がほぼ加工せず正直に出てるんだなって思ってゆるしてください

2015-11-16 10:51:48