“マカロニウエスタン生誕50周年”『荒野の用心棒』解説コラム「棺桶を三つ、用意いたしました。」蔵臼 金助
- klaus_kinske
- 12580
- 77
- 1
- 0
本作出演時にはジョン・ウェルズという怪しげな変名を使っていましたが、これで思い出すのは、主演作で拳銃よりウインチェスターを好んで使用していたジョン・ウェインですね。ラモンは最後の1対1の決闘で拳銃を愛用する“グリンゴ”に対し、ウインチェスターを用います。
2015-11-22 11:07:53勝負の行方を思うと、ボブの正統派西部劇の代表的スターに対する微かな皮肉の様にも思えますが、本当は、ヴォロンテ:イタリア語で“意志”の意味→英語だと“ウィル”→似たような語感を持つ“ウェルズ”にしたとのこと。
2015-11-22 11:08:28実際のところどうなのでしょう? ウエスタンのアトラクション、イベントなどで活躍する日本の早撃ち集団、「ペイルライダース」の有志たちがモデルガンを使って検証をしたことがあります。
2015-11-22 11:09:32映画と同じ条件で、弾丸の装填~撃発を、撃ち手を変えながら何度か繰り返した結果、ほぼ互角だったことが判明しました。凝り性のボブのことですから自分でも何度かテストして、決闘としてのフェアな条件を作り出したのかもしれません。 pic.twitter.com/ThI7At2Du1
2015-11-22 11:12:21ラモンが戦闘時に使用するのは、天才銃器設計士ジョン・M・ブローニングが開発したレバーアクション・ライフルである、ウインチェスターM94です。西部開拓で名を馳せたウインチェスターM73の後継機であり、完成形でもあります。 pic.twitter.com/R1i4IcVOtU
2015-11-22 11:20:27後にマカロニウエスタンで大量に登場する、真鍮製メインフレームを持つウインチェスターM66、通称“イエローボーイ”や、“西部を征服した銃”ウインチェスターM73は本作には登場しません。まだ映画向けの複製プロップが作られていなかったのです。
2015-11-22 11:21:34予算とスケジュールに制約がある新人監督は、仕方なく現在もなお生産中である現役のレバーアクション・ライフル、ウインチェスターM94を「ジョン・ウェルズ」に持たせました。
2015-11-22 11:22:00M94は.30-30ウインチェスター弾という強力な弾丸(当然、カートリッジの大きさも異なります)を使用するため、映画の中での装填時、発砲時には、利便性の高い拳銃弾を用いるウインチェスターM92にすげ変わります。 pic.twitter.com/FTRIpyo0NJ
2015-11-22 11:23:58誰ですか。「どっちでもいいじゃん」とうそぶくガンマンは? 大切なところですので、ここでM92(ジョン・ウェイン出演作を始め、ハリウッド製西部劇に頻繁に登場します)とM94(初期のマカロニウエスタンにしばしば登場します)の見分け方を伝授いたしましょう。
2015-11-22 11:31:04・フロントサイト:M92に対し、M94は大型のターゲットサイトを備えている(M92と同じタイプのものもあります)。 ・バットストック:M92に対し、M94はアールが少ない直線的デザインとなっている(M92と同じタイプのものもあります)。
2015-11-22 11:32:11・フロントバンド:フォアエンド・ストック(先台)を留めるフロントバンド部分から先に突き出た木製ストックが、M94は短い(M92と同じタイプのものもあります)。
2015-11-22 11:32:42・レシーバー下部:機構が大きく異なる二つのウインチェスターでの、最も大きな違いです。レバーを起こした時に、M94はレシーバー下部ごと外に露出し、メカニズムがスペンサー・カービンのようにむき出しになります。対するM92はロッキング・ボルト部分しか露出しません。
2015-11-22 11:32:49いかがですか。理解できましたか? M92とM94の違いを覚えておくと、いつか友人や恋人と映画を観た時のトリビアになりますよ。 pic.twitter.com/lw8LCfGAz4
2015-11-22 11:33:44(例:「これはブラジルのロッシ社がライセンス生産をしたM94かもしれないね。スウィベル・リングがストックサイドに付いているのはヨーロッパ仕様かな?」…『冒険者たち』を観ながら) pic.twitter.com/6FX45x3Bse
2015-11-22 11:35:36【棺桶3:黄金に輝くイミテーション・コルト】 pic.twitter.com/tLLrjO11AC
2015-11-22 11:37:37エンニオ・モリコーネの「さすらいの口笛」のメロディに乗って、“グリンゴ(メキシコ人がアメリカを呼ぶ時の蔑称)”こと、“名無しの男”こと、“ジョー”(クリント・イーストウッド)は登場時、ラバ(Mule)にまたがって現れます。 pic.twitter.com/8O6hR4Mw3w
2015-11-22 11:38:44ラバとは、雄のロバと雌のウマとの間に出来た勾配種のことで、ロバは欧米では愚鈍さの象徴としても知られています。それで、主人公はバクスター家の手下たちの嘲笑の的になるのです。
2015-11-22 11:39:15ちなみに、「俺のラバに謝れ。俺のラバは笑われるのが嫌いだ」というセリフは、アレクサンドル・デュマ『三銃士』からの引用です。『三銃士』では、主人公のダルタニャンが宿敵ロシュフォール伯爵に愛馬をからかわれ、同じセリフを投げつけて、決闘を挑むのです。
2015-11-22 11:39:45『荒野の用心棒』で主人公にからむのは、名も無き、殺され役のガンマンたちです。その中の一人、ロレンツィオ・ロブレドの腰に下げられたコルトを見てみましょう。本作で彼は主人公と対峙し、地面につばを吐いた約5秒後、その地面に撃ち倒されます。 pic.twitter.com/WiyhN5ErSU
2015-11-22 11:47:09『夕陽のガンマン』においては、凶悪な山賊インディオに家族を殺された後、決闘に追い込まれて家族の後を追います。 pic.twitter.com/0Vz9fTxWwF
2015-11-22 11:56:19『続・夕陽のガンマン/地獄の決斗』では、“いい奴”に至近距離で鉛の弾を撃ち込まれた後、“悪い奴”によってメッセージ・ボードとして活用されます。 pic.twitter.com/8NcLzOdrnm
2015-11-22 11:56:38可哀想な役どころが多いので私は彼のことを密かに“マカロニウエスタン界の土屋嘉男”と呼んでいるのですが、彼が使うコルトには、真鍮製グリップフレーム&バックストラップが装着されていました。
2015-11-22 11:57:03アルド・ウベルティ社の工房から納入されたばかりなので、真鍮もぴかぴかで、黄金色に輝いていますよ。イタリア製西部劇には、この金色のグリップフレームを持つコルトが大量に登場します。
2015-11-22 11:57:25マカロニウエスタンの銃の代名詞と呼んでもいいくらいです。この真鍮製グリップフレームが本格的にスクリーンに登場したのは、本作が最初になります。
2015-11-22 11:57:49