2014.12.24〜12.25虎徹さんbot(KTK_b)クリスマス ツイート

[2014年版]虎徹さんbot(KTK_b)がイヴからクリスマスの2日間に掛けて流したクリスマスの特別ツイート記録です。 二次創作作品になってます。
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鏑木・T・虎徹bot @KTK_b

初めは何かが軋むような、それから地鳴りのような、鈍い音が夜の闇を裂く。 町の最も山側の開けた斜面、その頂付近から、白い滝のようなものが次第に雪煙を巻き上げながらこちらに向かって来るのが見えた。 雪崩、だ。

2014-12-24 19:50:25
鏑木・T・虎徹bot @KTK_b

能力発動は、ほぼ同時だった。 このままあれが到達したら、少なからず町に被害が出る。一瞬だけ視線を交わした相棒は、かすかに青い軌跡を描きながら中央通りをまっすぐ山側へ駆け上がっていく。 もし『あれ』が間に合ったとしても、もし勢いが強ければ・・・

2014-12-24 19:55:18
鏑木・T・虎徹bot @KTK_b

100倍になった感覚の中で刹那、閃いた。 あの斜面の右側、確か町長の息子が昔の石切り場跡と言っていたあたり。あそこならもしかして。 視線の先、木々が少なく拓けた斜面の中腹に突き出た大きな岩と、雪の表面に走る薄い切れ目のようなもの。 考えるより先にワイヤーを射出していた。

2014-12-24 20:00:22
鏑木・T・虎徹bot @KTK_b

家の屋根の上を走り、木々の間を飛び。最短距離でターゲットを目指す。 目標に辿りつき、一瞬だけ雪崩の状況を確認する。間に合うか、とか、どうなるか、とか、迷っている暇はない。 「いっけえええ!!!」 咄嗟にマフラーを巻き付けた右の拳にありったけの力を込めて、岩を殴った。

2014-12-24 20:05:36
鏑木・T・虎徹bot @KTK_b

鈍い音とともに、地中に振動が伝わっていくのが分かる。 「もういっちょおお!!!」 能力が切れる直前に放った二発目の打撃で、地表に変化が起きた。

2014-12-24 20:10:20
鏑木・T・虎徹bot @KTK_b

ワイヤーを射出して樹上に逃れる直前、足元の雪がゆっくり、次第にスピードを上げて、崩れ始めた。 二本目の雪崩が、次第に轟音を上げながら、最初の雪崩が流れる谷間に向かって駆け下りてゆく・・・・・・

2014-12-24 20:15:19
鏑木・T・虎徹bot @KTK_b

「・・・だいたいあなた、やることが無茶苦茶過ぎなんですよ(ハァ)」 「だーってあの場合はさあ・・・てか、いいじゃねえか、なんとかなったんだから」 「良くないでしょ!? 怪我までして!」 「あー・・・うー・・・(しゅん)」

2014-12-24 21:00:21
鏑木・T・虎徹bot @KTK_b

「生身でハンドレッドパワー使ったって、ロックバイソンさんみたいに硬くはならないんですから」 「しょうがねえだろぉ、迷ってる暇なんてなかったし」 「シュテルンビルトに帰ってからどーすんのよ、もう!」 「だーいじょうぶだってホラ、ッてて」 「全然!大丈夫じゃないじゃん!」

2014-12-24 21:05:18
鏑木・T・虎徹bot @KTK_b

町の裏門で合流したとき、さして緩衝材にならないマフラーを巻いただけの拳からは血が流れていた。 大丈夫としか言わない口を塞ぎ、病院に強制連行したところ、裂傷と不全骨折・・・いわゆる骨にヒビが入った状態で。右手の手首から先だけ固められた状態でなお、本人は「大丈夫」と繰り返す。

2014-12-24 21:10:20
鏑木・T・虎徹bot @KTK_b

「ヒーロースーツって偉大だなー、俺改めて斎藤さんに感謝するわ」 「だったら尚更、生身で無茶しないでください・・・!」 相棒の声のトーンの変化を察し、顔からカラ元気が消えた。 「わりぃ」

2014-12-24 21:15:19
鏑木・T・虎徹bot @KTK_b

横から別なの当てれば、勢いを少しは殺せるか、進路を反らせるかもって思ったんだ。 いつもの調子で頬を掻こうとしたのだろう、テーピングされて動かせない指にハッとして、ごまかすように腕を組む。 町長の息子が町を案内したとき、何気なく語っていた昔話が二人の行動の根拠だった。

2014-12-24 21:20:19
鏑木・T・虎徹bot @KTK_b

この町は昔、大きな雪崩に襲われたことがあって、それをきっかけに村の山側には高く丈夫な塀と大きな鉄の扉が設けられたこと。以来、幸いにして一度も使われたことはないこと。

2014-12-24 21:25:18
鏑木・T・虎徹bot @KTK_b

それを咄嗟に思い出し、門扉を閉めに走ったバーナビー。 その意図を察しながら、もし門の耐久度を超えてしまったらと別な手を打った虎徹。 二人の行動が相乗効果を生み、幸いにして被害者はゼロで済んだ。・・・住人は。

2014-12-24 21:30:19
鏑木・T・虎徹bot @KTK_b

「まあ、いいじゃねえか。ちょっと遅くなっちまったけど、クリスマスイブの晩餐といこうぜ」 「ちっとも良くないですが・・・そのあたりは後でじっくりと。料理、温めますね」 「あっ私手伝う! お父さんはおとなしく座ってて」 「・・・はぁい」

2014-12-24 21:35:18
鏑木・T・虎徹bot @KTK_b

「お待たせ!」 「おー、うまそっ」 「さ、食べましょう」 テーブルに並んだ、クリスマスらしい華やかな料理の数々。途中のデリで買い求めてきたものが大半だが、見た目にも色鮮やかな料理の中に、ひとつ。見た目にも違和感のある、オリエンタルなお椀が人数分添えられている。 「にゅ?」

2014-12-24 21:50:18
鏑木・T・虎徹bot @KTK_b

あたたかい湯気に誘われて一口啜ってみた、その表情が変わる。 「楓、これ・・・」 「えっやだ美味しくない!? おばあちゃんに教わったとおりに作ったんだけどなあ」 「ミソスープ、ですよね」 「そう」

2014-12-24 21:55:42
鏑木・T・虎徹bot @KTK_b

「料理、おばあちゃんに色々習ってて。今のところ味噌汁は自信あるんだけどな・・・なんかヘンだった・・・?」 「いや・・・」 そうじゃない。美味しくない筈がない。これは、この味は。

2014-12-24 22:00:38
鏑木・T・虎徹bot @KTK_b

そっか・・・かあちゃんから引き継いだんだ。懐かしい、あたたかい、記憶の向こうの。 「ちょっ・・・虎徹さん? あなたなんで泣いて・・・」 「おとーさん!?」

2014-12-24 22:05:25
鏑木・T・虎徹bot @KTK_b

「へっ? だっ、ぅええ?? なんで涙出てんの俺」 「本人が訊かないでくださいよ・・・」 「ねえ大丈夫? 泣くほど美味しくなかった・・・?」 「や」 そうじゃない。そうじゃなくて。 「・・・すっっげえウマくて、感動した」 「よかったー! もー、ビックリさせないでよぉ」

2014-12-24 22:10:11
鏑木・T・虎徹bot @KTK_b

「クリスマスにお味噌汁ってどうかなーと思ったんだけど、せっかく上手くなった料理、お父さんに食べてもらいたかったの。ごめんね」 照れくさそうに笑う仕草に、味に、面影が宿っている。 「ンなことねえよ、すっっごーーーく嬉しい。・・・ありがとうな、楓」

2014-12-24 22:15:54
鏑木・T・虎徹bot @KTK_b

ヘクセンハウスのチョコレートの扉を慎重に外し、用意してきたLEDキャンドルライトをそっと中に・・・入れようとして左手で格闘していたら、後ろから伸びてきた手にひょいと取り上げられた。 「だっ」 「・・・片手じゃやりにくいでしょう。入れたいんですよね?」

2014-12-25 00:30:20
鏑木・T・虎徹bot @KTK_b

お菓子の家に、ぽっ、とあかりが灯る。キツネ色のクッキーの窓から漏れる、やさしい光の揺らぎ。外したチョコの扉も元通りに直し、暫くぼんやり二人で眺めていた。 先に口を開いたのは。

2014-12-25 00:35:18
鏑木・T・虎徹bot @KTK_b

「・・・そういえば、フォロワーさん達も驚かれていたようですが」 「ふぉろわー?」 「まあそれはさておき。あなた、意外にお菓子作りに詳しくないですか」 「あー・・・」 少し困ったように右手を上げかけ、慌てて左手に代えて頬をぽりぽりと掻く仕草。

2014-12-25 00:40:20
鏑木・T・虎徹bot @KTK_b

「いや、昔な・・・奥さん・・・友恵が、楓がもう少し大きくなったら一緒にお菓子とか作るんだ、ってさ。楽しそうに色々やってたなー、って」 キャンドルライトの灯りが、少し伏せた瞳の中で金色に揺れる。 「・・・直接は叶わなかったけど、かあちゃんを通して、ちゃーんと繫がってたんだな」

2014-12-25 00:45:18
鏑木・T・虎徹bot @KTK_b

そう、あれは母の味ではない。微妙に違う、亡き妻の。 「わり、なんか訳分かんないこと言ってる」 「いえ」 言葉で伝える代わりに、後ろからゆるく、肩を抱き締める。 「分かります。今なら」

2014-12-25 00:50:18