漫画家・岡本健志先生の半生記

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岡本 健志@🚙漫画執筆準備中🚗 @alfistakeshi

正直嬉しかった。とはいえ技術的には丸ペンにも慣れておらず、また先生の作品にあるような緻密な背景や仕上げを今後学ばなければ、また作品の中で表現していかなければ…というプレッシャーが重くのしかかる。当時先生が描かれていたのは『赤×黒』この作品に自分も関わるのか…本当に怖かった。

2011-01-22 14:09:34
岡本 健志@🚙漫画執筆準備中🚗 @alfistakeshi

かくして上條先生の『赤×黒』アシスタント作業は始まった。不慣れな自分は最初の2ヶ月は消しゴム掛けと集中線とトーン作業だった。先生の「集合!」の電話がかかると電車で作業場へ。10日のうち数日は19:00~30:00の作業。残り数日は〆切に向かって3日ぐらい徹夜作業になる…キツイ!

2011-01-22 14:15:00
岡本 健志@🚙漫画執筆準備中🚗 @alfistakeshi

数時間の睡眠は挟むが最後の追い込みは壮絶の一言。校了後、自宅へ帰る電車の中でよく爆睡してました。給与面でも先生はよくして下さいました。が、そうはいってもゲーム会社のそれとはいきません。当時乗っていたMR2を売り払い、中古のビートに買い換えたのもその時期だった。

2011-01-22 14:18:45
岡本 健志@🚙漫画執筆準備中🚗 @alfistakeshi

ガソリン代などのランニングコストを下げなければ厳しかったのが正直なところだったが、やはりそこは車好き、何処かにその要素を残したい選選択でのビートだった。作業が終わり自宅に戻れば先生から出された背景の宿題をこなす。丸ペンと細かい背景の練習。描き終えたら所要時間を書くことが日課だった

2011-01-22 14:23:04
岡本 健志@🚙漫画執筆準備中🚗 @alfistakeshi

そんな作業を数ヶ月続けたところで初めて背景を任された!が、ここで大きな失敗をしてしまう。下書きの要領が悪く、チーフアシが自分の尻拭いをする羽目に。当然〆切前で先生もピリピリ、叱咤を受ける。意気消沈の自分…。落ち込む自分に作業後上條先生がこう話してくれた…

2011-01-22 14:27:12
岡本 健志@🚙漫画執筆準備中🚗 @alfistakeshi

「あの時はイライラしていてキツイ言い方になってしまった。すまない。ただあのまま許していたら岡本くんのためにもならないし、この先逃げてばかりになってしまう。だから叱ったんだ。気にせず頑張って欲しい」と。本当に嬉しかった…。この先生のところに来て本当に良かった…続きは次の講釈にて~!

2011-01-22 14:36:03
岡本 健志@🚙漫画執筆準備中🚗 @alfistakeshi

アシになって数ヶ月、少しずつも作業に慣れてはきたがまだまだ未熟な自分。チーフアシさんの寺田さんは『SEX』の頃からの熟練アシさんだった。背景の下描きを喫煙でベランダに出ている時に覗き見たりすると自分の未熟さを再確認させられた。緻密な線画、綺麗な原稿に驚愕しきり…

2011-01-22 16:31:26
岡本 健志@🚙漫画執筆準備中🚗 @alfistakeshi

しばらくは先生の支持で寺田さんの下描きにペン入れ…という作業もしていた。これぐらいの背景が描きたい…。それに上條先生の原稿も当然ながら繊細で綺麗!!先生が席を離れたのを見計らって原稿を盗み見たもんでした(^_^;)

2011-01-22 16:35:43
岡本 健志@🚙漫画執筆準備中🚗 @alfistakeshi

その頃、以前お付き合いのあったアスキー(現エンターブレイン)のアスキーコミック(現コミックビーム)の編集長Kさんから電話を頂く。直ぐに初台へ。その打ち合わせで編集長から「スピンオフ漫画を描いて欲しい」とのことだった。馬頭ちーめい先生著『ブレイクエイジ』のサイドストーリーだった。

2011-01-22 16:39:33
岡本 健志@🚙漫画執筆準備中🚗 @alfistakeshi

編集長Kさんの話は馬頭ちーめい先生著『ブレイクエイジ』のサイドストーリーを描いて欲しい…というものだった。アシになって半年、漫画が描ける嬉しさで即快諾!とはいえアシ作業の合間をぬって睡眠時間を削る作業は地獄だった…これが漫画を描くという作業なんだと…。

2011-01-22 16:57:27
岡本 健志@🚙漫画執筆準備中🚗 @alfistakeshi

果たしてブレイクエイジ外伝~『CRUSH! BOON! BANG!』はめでたくアスキーコミックに掲載された。上條先生にも報告し、喜んでくださったのは本当に嬉しかった。アシ作業で少しづつではあるが漫画のノウハウを習得出来る環境は有難かった。先生との撮影取材の外出も楽しかった!

2011-01-22 17:02:54
岡本 健志@🚙漫画執筆準備中🚗 @alfistakeshi

渋谷、吉祥寺に背景の撮影ついでにスニーカーショップに寄ったりで自分もすっかりスニーカーマニアになっていた。ま、先立つものがないのでポンポンとは買えなかったが…。 アシ作業を続ける傍、次の作品に向けての打ち合わせも行っていた。時は96年に突入していた…。続きは次の講釈にて!

2011-01-22 17:08:02
岡本 健志@🚙漫画執筆準備中🚗 @alfistakeshi

上條先生のアシになって1年が過ぎた。程なくして『赤×黒』連載終了。ヤンサンの増刊号で掲載となるが隔週程の忙しさではなくなったので自分の漫画に時間を割くことができる環境に。アスキーコミックK編集長にとあるネームを見てもらう。 「近未来F1ね…悪くは無いが…それなら適任の編集が…

2011-01-22 19:43:15
岡本 健志@🚙漫画執筆準備中🚗 @alfistakeshi

と、その場で紹介されたのはO編集さん(桜玉吉先生の漫画では超人気キャラのO村さん)だった。(現コミックビーム編集長) その方、少し前まで劇画漫画の編集をされていたとのことだった。確かに風体はかなりいかつい、一見そっちの方?という感じだった。その後Oさんと喫茶店に…

2011-01-22 19:46:57
岡本 健志@🚙漫画執筆準備中🚗 @alfistakeshi

oさんは開口一発「近未来じゃなくてF1でいいじゃねぇか」と。 勿論そのほうが自分も嬉しい。その方向でネームを直すこととなる。あくまでも連載を前提とした第1話としてだった。 そこからネームを見せる、直す、見せる、直す、見せる…「いいんじゃねぇか!」その台詞が聞けたのは3ヶ月後だった

2011-01-22 19:52:59
岡本 健志@🚙漫画執筆準備中🚗 @alfistakeshi

OさんのOKが出たネームは編集会議に。…しかし結果は却下。「今更F1!?」という意見が出て…ということだった。連載という期待感が3ヶ月が水泡となったことと合まって絶望の淵に。直ぐに次のアイデアに…ということが当時の自分には出来なかった。気がつけば96年も11月に入っていた…

2011-01-22 19:59:24
岡本 健志@🚙漫画執筆準備中🚗 @alfistakeshi

上條先生の君とは背景作業を持ち帰り、自宅で作業をしていたとある深夜、電話が鳴る。 「H君が死んだ…」 H君とは高校の親友。その数年前、心臓病で倒れたがここ最近も一緒にカラオケしたばかりだった。 直ぐに高速を走り千葉の行徳に向かった…。 自宅には彼の亡骸が。我が目を疑った…。

2011-01-22 20:06:00
岡本 健志@🚙漫画執筆準備中🚗 @alfistakeshi

友人の葬儀に参列。やっと事実を受け入れることができた。 正直心が折れた。 その事とは別にその時付き合っていた彼女のこともあった。 徳島にいて遠恋だったが、夏遊びに行った時にご両親から 「安定しない漫画家アシに娘はやれない」と言われてもいた…。 潮時か…。

2011-01-22 20:13:35
岡本 健志@🚙漫画執筆準備中🚗 @alfistakeshi

自分は10年住んだ東京を去る決意をする。そして夢であった漫画家を諦める決意をした。安定した収入を得る為に。そして疲れた心を癒す為に。元同僚で辞めたあとも付き合いのあったS君にその旨を伝える。さほど驚くでもなく聞いていた。悟っていたようだった。お世話になったY先輩にも話をした…

2011-01-22 20:18:18
岡本 健志@🚙漫画執筆準備中🚗 @alfistakeshi

Y先輩「お前広島ならコンパイルはどうだ?」そうか!ゲーム会社ならこれまでの修行も無駄にならない。そう言ってY先輩はかつてハドソンでお世話になったコンパイルのKさんにアポを取ってくださった。何たる縁…。勿論中途採用試験を受けるが夢が潰える危機を救ってくださった…。

2011-01-22 20:22:02
岡本 健志@🚙漫画執筆準備中🚗 @alfistakeshi

1じ、2次、3次試験をパスし、コンパイルに中途採用が決まった自分は10年間お世話になった東京を後にした…97年3月の出来事… 続きは次の講釈にて!『東京編 完』

2011-01-22 20:26:48
岡本 健志@🚙漫画執筆準備中🚗 @alfistakeshi

intermission…東京から広島に戻る…荷物は多くなかったので殆どはヤマトの引越しパックで、完成模型などはビートの助手席につんでも帰広。東京~広島をビートでひた走る。10年の思い出が蘇る。140文字では語りきれない程の思い出…。その中でも上条先生の言葉が蘇る…

2011-01-23 13:36:35
岡本 健志@🚙漫画執筆準備中🚗 @alfistakeshi

上條先生は常々こう言っていた。 「とにかく高い頂きを上り詰めなさい。山頂は酸素が薄くキツイがそこから8合目に降りれば少し楽になる。仕事とはそういうもの。100%でこなすのは困難だが80%でやれば楽にこなせる。しかしその為には目標という山頂をすごく高い場所に設定しなければダメだ。」

2011-01-23 13:41:41
岡本 健志@🚙漫画執筆準備中🚗 @alfistakeshi

自分はまだまだ山頂には届いていない。日々勉強!精進せねば。それは今も全く変わっていない…。 上條先生、そして自分を助けてくれた人々に感謝…そんなことを考えながらビートは広島へと向けて走るのであった…。のちに訪れる地獄道へと知らずに…。 続きは次の講釈にて!

2011-01-23 13:46:34
岡本 健志@🚙漫画執筆準備中🚗 @alfistakeshi

コンパイル地獄道篇…97年4月、29歳になった岡本の新生活が始まる。広島にあるコンパイルというゲーム会社に中途で採用となった。当時飛ぶ鳥を落とす勢いだったコンパイル、ぷよぷよの大ヒットで事業拡大を測っていた最中の編入は自分に安定をもたらしてくれると確信していた…。

2011-01-26 02:05:06