エアミス研同人誌『非実在探偵小説研究会拾號』感想まとめ
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2015-12-02 23:13:46闇来留潔「館は二度と動かない」 倒叙競作の巻頭を飾るにふさわしい正統派。犯人の意表をつく意外な事実と逆トリック。刑事役の造形も後述のコラムを地で行くようないやらしさ。鷲の像をはじめとするキーアイテムの使い方にもミステリの素養とセンスを感じます。
2015-12-02 23:17:09前回の作品もそうでしたが、大掛かりな仕掛けとミステリとしての端正さ、そして叙情性が不思議なバランスで同居していて、バカトリックなのにバカと言えない深刻さとか悲哀を生み出しているのが味だなと。
2015-12-02 23:18:05紫藤はるか「死体」 病んでるんだろうなと思いました。病んでました。中心にあるのはミステリではおなじみのモチーフですが、この作者さんの手にかかるとこうも歪んだ(しかし哀切な)使い方になるのかと。倒叙として見ると、主人公の犯罪を追及する存在がいないのが難点でしょうか。
2015-12-02 23:19:50せっかくgoogle.co.jp/search?q=%E8%A…のにそれが生かされていないのはやはり勿体ない。大仕掛けとも絡んでくるので難しいところでしょうが、何らかの形で活用してほしかったです。
2015-12-02 23:21:52ないものねだりが続きますが、全体的にgoogle.co.jp/search?q=%E7%B…という真相をもっと積極的にミスディレクションとして利用してもよかった気がします。
2015-12-02 23:22:53麻里邑圭人「殺意の構図の裏の裏」 倒叙の枠組みの外にもうひと枠。タイトルを裏切らないダイナミックな構造が競作群の中でも存在感を示しています。オチはよくよく考えると「ん?」となるのですが、処理の仕方を見るに確信犯なのかなとも。
2015-12-02 23:23:27探偵が続けて同じようなシチュエーションで登場するのは少し単調だった気がするので演出の工夫がほしかったところでしょうか。中盤で明かされるある真実に関しても少し無造作に過ぎる感があり、構成の面で洗練の余地があるように思えました。
2015-12-02 23:24:32光田寿「疾走当時の服装は」 ととと、倒叙とは。カーチェイスやりたかっただけっすよね。土佐の国を疾走する霊柩車とバキュームカー。汚物まみれのカーチェイス描写はとても力が入っていて、労作であることが伺えます。真面目にやってこその「バカ」。すばらしいです。
2015-12-02 23:26:05人物描写もうまい。簡潔にしてその人の特徴をよく捉えています。でも、個人的にはもうちょっと短くてもよかったかなあ、とも(苦笑)。破天荒に見えますが、馬鹿馬鹿しい内容を馬鹿馬鹿しく語るという点でむしろ正攻法。ただ個性的なだけでなく、かなりクレバーな書き手さんだと思ってます。
2015-12-02 23:27:18佐倉丸春「雷恐怖症」 腹話術師ならではのトリックが秀逸。筆致がいたって真面目なだけに犯行計画のユニークさが際立ちます。雷の夜、腹話術を用いてトリックを弄する犯人。これはぜひとも映像を想像しながら読んでほしいですね。
2015-12-02 23:29:35ただ、自分の誤読でなければ95ページ上段のgoogle.co.jp/search?q=%E3%8…という記述はまずいのでは。
2015-12-02 23:30:51岡村美樹男「オーバーライト」 「けふをかぎりの」もそうでしたが、ギミックを成立させるための箱庭を用意するだけでは飽き足らず、そこに住まう人々の日常や生活を大事にしているところが素敵。闇来留さんのダイナミックさに対して、あくまで(いい意味で)ミニマムなレベルで仕掛けを弄してきます。
2015-12-02 23:32:12日常の見慣れた光景が犯罪のワンシーンに変貌するインパクトは特筆もの。「死」を扱ってはいますが、日常の謎的な想像力にも長けた人なのだと思います。そして何よりあの結末。幕切れ間近で明かされる真実からは、われらがのりりんのエコーが聞こえてくるよう。その非情さに鳥肌が立ちました。
2015-12-02 23:35:32ただ、ミスディレクションの処理が若干わかりづらかったでしょうか。あの子の扱いももうちょっとフォローがほしかったところです(ひどい、わたしとは遊びだったのね!)。「死体」同様、google.co.jp/search?q=%E7%B…という要素をもっと積極的に利用してもよかった気がします。
2015-12-02 23:37:30谷山儀式「殺人犯にならないために 毒殺編」 ややこしいのが大好きなのがミステリ読み。その理解を助けるのが図面ですが、こういう使い方はいままで見たことがなかったので新鮮でした。ややこしい!(褒め)姉の遺灰を傍らに旅を続ける少年。廃校舎の夜会。杯に盛られた毒。雰囲気のある作品です。
2015-12-02 23:39:43主人公とそれにぴったりと寄り添う姉の亡霊。姉弟間で完結した世界がよく表現されていたとは思いますが、せっかく2人いるのだからもうちょっと役割分担が明瞭でもよかったかなと。特に、語り手はもっと読者に引き寄せた方がわかりやすいというか。
2015-12-02 23:41:08方功鉄文「帝王の筐」 作中に出てくる言葉通り「幻想小説」風味の漂う一編。天井から人々の生活を覗き見る男。「屋根裏の散歩者」を思わせる設定と章題の凝りようににやりとさせられました。そこが主眼でないことはわかるのですが解決のくだりにもうちょっと工夫があるとよかったでしょうか。
2015-12-02 23:43:58麻里邑圭人「倒叙ミステリもどき」 真相の明かし方がなんとも「らしい」ですね。google.co.jp/search?q=%E5%8…ということでいいんでしょうか。犯人が直面する問題が若干わかりづらかった気がします。
2015-12-02 23:47:03谷山儀式「ジェフリーの身代金」 オークションのくだりからぐっと引き込まれました。オチも切れ味よし。プロットとしては文句なしの出来なだけに生硬さが気になるところ。ないものねだりなので話半分に聞いてほしいのですが、いっそユーモラスな筆致に振り切った方が読みやすかったかもしれません。
2015-12-02 23:49:34船橋浩司「BITTERSWEET TRASH」 核となるアイディアがとてもおもしろい。そして甘~い。毎度ながら小物の描写にもセンスを感じます。ただオチとその手前の落差が少しこぢんまりとしすぎてるでしょうか。ミステリ的にもドラマ的にももうひと盛り上がりほしかったところ。
2015-12-02 23:50:50佐倉丸春「キングの醜態」 老若男女誰もが知ってるお話をモチーフに、切れ味鋭い掌編を発表し続けている作者さんの最新作。これだけ短い中に、ロジックの足掛かりを埋め込んで回収してみせる手際は見事。演出もうまい。あえて言うなら傍点前後の言い回しがちょっとわかりづらいのが玉に瑕でしょうか。
2015-12-02 23:51:54闇来留潔「刑事コロンボ vs 古畑任三郎」 倒叙の代名詞とも言える日米の名ドラマを比較、その魅力を論考するという刺激的な企画。両ドラマとも未視聴なので前半部しか読んでいないのですが、熱意と楽しさが伝わってくる素敵な紹介だったと思います。
2015-12-02 23:52:48松井和翠「ミステリ映画ATBアンケート結果発表」 これも見ないとなというものばかりで……。ランキングはもちろん座談会の方も大いに参考させてもらいます。
2015-12-02 23:53:33松井和翠「大阪圭吉賞受賞作全集」 巻頭に口絵ページがあるとがぜん文芸誌味が増しますね。テキストは少ないのですが、70年にわたる受賞作が候補作含めて並んだリストは圧巻です。
2015-12-02 23:54:02