【Re:AfterLife/MyImmortal】4/4

さぁ、ペイバックタイムだ!
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葛葵中将 @katsuragi_rivea

『…まったく、お前って奴は…遅いんだよ馬鹿野郎!』 『何言っちゃってんのさ木曾。"名も無き指揮官"のこと、ずっと心配してたんだよ?ねー?大井っちー』 『…うるさいぞ北上!!!!』 通信は本土近海だけに留まらない。この作戦全てで戦う者からも司令部に向けて送られていた。

2015-12-15 21:39:52
葛葵中将 @katsuragi_rivea

北方の海、MI島とほぼ同じ時刻を刻むこの洋上で艦娘輸送船「あもり」は 北方棲姫が居座る白化した珊瑚のような島を睨んでいた。 その甲板の上で灰髪、褐色肌、サングラスをかけた大男は舌打ちをし、笑みと共に文句を垂らしていた。 「あの妖怪人間め…誰が筋肉ダルマの王子サマだ」

2015-12-15 21:41:21
葛葵中将 @katsuragi_rivea

『大将〜?"サングラスをかけた"が抜けてんよ〜?』 「やかましいぞ隼鷹!!」 冗談めいたやり取りをしながら大男は自身の得意とするカラテを構えた。 (まぁ…だが、大淀を救ってくれた礼は…しねぇとな!) 『大将!そっち行ったぞ!ヤバい硬い奴だ!』 隼鷹が叫ぶ。

2015-12-15 21:43:03
葛葵中将 @katsuragi_rivea

「あもり」に向かい飛び上がり乗り込んできた駆逐イ級は甲板を滑るかのように大男、リカルドを狙う。 「イヤーッ!」 リカルドはカラテシャウトとともに渾身の拳を叩き込むもその駆逐イ級の装甲に弾かれたではないか!なんたる硬さか! 「むっ…!?」

2015-12-15 21:44:30
葛葵中将 @katsuragi_rivea

拳の皮がめくりあがり血を流す。それを見たリカルドは獣めいた笑みを浮かべ、 インカムに話しかけた。 「…ちょうどいいな。通信兵!本土に電文を頼む!…イヤーッ!」 リカルドの拳がイ級に当たる!だがイ級は怯まない! 「イヤーッ!」「イヤーッ!」「イヤーッ!」

2015-12-15 21:45:58
葛葵中将 @katsuragi_rivea

「内容はどうされますか!」 甲板の上では金属を叩くような音が鳴り響く。リカルドはイ級を殴るのをやめない! 「…俺達は諦めねぇ!例え分厚い装甲を持った敵だとしても」 そしてリカルドは最初葛葵に出会った頃に彼に話した訓示を叫ぶ。 「インストラクション・ワン!」

2015-12-15 21:47:08
葛葵中将 @katsuragi_rivea

本土の者達はここの敵よりも遥かに脅威となる敵を相手にしている。ならば! 「百発のスリケンで倒せぬ相手だからといって一発の威力に頼ってはならぬ!一千発のスリケンを投げるのだ!」 必ず光明はある。その思いを託しリカルドは北の空を仰いだ。 (冷や=サン。ザハ=サン。頼んだぜ)

2015-12-15 21:48:14
葛葵中将 @katsuragi_rivea

「…にょろ。君はこの結末を予測していたのか?」 同北方海域、艦娘母艦「えぼし」戦闘指揮室。 椅子に腰掛けていた古びたローブを羽織る少年のような士官は頬杖をつき隣の女性士官に尋ねた。 「まぁね。この未来自体は…でも」 「でも?」

2015-12-15 21:49:40
葛葵中将 @katsuragi_rivea

尋ねた少年のような士官は瑠奈花、「沖ノ島の英雄」と呼ばれる。女性士官は神山。 人の身でありながらも特殊な力を有する彼らは「人間兵器」のような扱いとして 深海棲艦と戦うための武力の一介として戦線へと投入された特務士官。 首を傾げ訝しむ瑠奈花に神山は一枚の紙を手渡した。

2015-12-15 21:51:17
葛葵中将 @katsuragi_rivea

渡された紙はスケッチブックの一枚を切り取ったもののようであった。 映画の悪役のような姿をした将官と対峙する魔女帽の男と剣を構え悪党につき立てる"人物"の絵が描かれている 「…?」 それを見た瑠奈花はさらに首を傾げることとなった。 「"名も無き指揮官"の顔が無いじゃないか」

2015-12-15 21:52:09
葛葵中将 @katsuragi_rivea

紙の中心に描かれていた剣を向ける人物の顔はそこだけまるで抜け落ちたかのように白の下地のまま。 「こんなこともあるんだね。るなかはこの人のこと知ってるんだよね?」 瑠奈花はそれに答えず頭を巡らせた。 手紙や通話などでのやり取りしかしていない。彼は確かに不思議な人物ではある

2015-12-15 21:53:14
葛葵中将 @katsuragi_rivea

何か…彼にはあるのかもしれない。瑠奈花は笑った。あの奇特者とされるあの男に俄然興味が湧いた。 (今度…清霜の様子をちょっと訊くために鹿屋に立ち寄ってみるか) 「るなか…気持ち悪い」 ニヤニヤと笑っていた瑠奈花に対し神山は毒を吐いた。

2015-12-15 21:54:19
葛葵中将 @katsuragi_rivea

MI方面機動部隊。三日間の漸減防空戦闘をくぐり抜けた彼女達は洋上を進んでいた。 「友永隊、発艦を確認じゃ!筑摩ー!周囲の警戒。頼むぞ!」 航空巡洋艦利根による友永隊発艦の一報 それを輪形防御陣形の内側を姉の体を支えながら航行する五航戦航空母艦瑞鶴も飛び立つ海鷲達を見守った。

2015-12-15 22:01:31
葛葵中将 @katsuragi_rivea

一筋の希望として各地を戦う者達に向け、発信した「飛龍の反撃」 それに呼応するかのように巻き起こった本土での叛逆の物語も彼女達の元にも届いていた。 『私に…力を貸してくれ!』 ノイズが混じりながらも聞こえてくるその声は…瑞鶴に体を預け、意識が朦朧としていた翔鶴の耳にも届いた。

2015-12-15 22:06:06
葛葵中将 @katsuragi_rivea

「翔鶴姉ぇ?大丈夫?どこか痛むの?」 瑞鶴は姉の身を案じた。息を荒くしつつ無理をしているのではないかと顔を覗き込んだ。 翔鶴の顔は驚くかのような表情を浮かべていた。その聞こえてくる肉声に静かに耳を傾ける。 その後に続く"名も無き指揮官"と駆逐艦磯風のやり取り。

2015-12-15 22:10:34
葛葵中将 @katsuragi_rivea

翔鶴はやがて顔を覆い、嗚咽を漏らした。瑞鶴から見る姉のこのような姿は初めて。 普段は穏やかに笑みを浮かべあまり感情の起伏を見せない彼女が大粒の涙を零す姿は瑞鶴をますます困惑させた。 「翔鶴姉ぇ…?」 「大丈夫、大丈夫よ…瑞鶴…」

2015-12-15 22:15:03
葛葵中将 @katsuragi_rivea

翔鶴は思い出していた。旧き記憶。まだ自身がこの世に生まれいでて間もない頃のこと。 第一次深海大戦などと後に呼ばれることとなる戦いの最中、 護衛空母に保護された際に出会った若き空軍のエースの男を。 (道に迷ったのか。安心していい。私が必ず君を故郷に送り届ける)

2015-12-15 22:19:00
葛葵中将 @katsuragi_rivea

その時の男は今もこうして、翔鶴…あるいは誰かのために戦うことを辞さなかった。 それは翔鶴にとって何よりの勇気となり、安らぎとなった。 痛む体に鞭を打ち自身も出来ることをしなければ、と奮い立たせ瑞鶴に囁いた。 「瑞鶴、お願いしていい…?」 「えっ?何を?」

2015-12-15 22:23:34
葛葵中将 @katsuragi_rivea

「電文を…送って欲しいの」 翔鶴の艤装は既に大破状態。各種通信機器ももはや機能していないほどにボロボロとなっていた。 見たところ瑞鶴の通信機の類は生きている…ゆえに翔鶴は瑞鶴に託した。 「貴方を…誰よりも信じています。私達の帰るのを…待っていてください。」

2015-12-15 22:27:31
葛葵中将 @katsuragi_rivea

そう言うと翔鶴は微かに頬を紅潮させていた。 瑞鶴はこの"名無しの指揮官"に意識を向け、舌打ちをした。 (翔鶴姉ぇにここまで言わせるなんて…どんな奴なのかしら!帰ったらその顔、拝ませてもらおうじゃないの!) 瑞鶴は空を見上げた。心地よい風が髪を宙に靡かせた。

2015-12-15 22:32:07
葛葵中将 @katsuragi_rivea

日本近海太平洋上、特殊船舶「あばしり」 PMC(民間軍事会社)の所有物であるその船上で白い髪と青い瞳、セーラー服の少女は細見の男に話しかけた。 「隊長。シオイ、どうかしたのか…?さっきからあの調子なんだが…」 彼女の目は船尾の柵に手をかける潜水艦娘に向けられた。

2015-12-15 22:36:34
葛葵中将 @katsuragi_rivea

正確には潜水空母を艦種とするその娘は"隊長"と呼ばれた男から奪い取った機器から流れる声を必死に聞いていた。 「海軍のほうで動きがあったらしい。それで無線を傍受していたんだ。 …そしたら、あの通りさ。まぁ仕方ないよ」

2015-12-15 22:39:20
葛葵中将 @katsuragi_rivea

「彼女にとっては…"命の恩人"だろうからね」 "隊長"もまたその潜水艦娘に目をやる。その後ろ姿からは顔を確認は出来ないが 肩を震わせている様子から彼女がどんな表情を浮かべ声を聞いているか容易に想像がついた。 「響、お前…暑いところは苦手か?」

2015-12-15 22:43:02
葛葵中将 @katsuragi_rivea

「あまり…好きじゃないな」 「まぁ、そう言わずに。今度九州のほうで仕事でもしよう。シオイは…彼に返すとしよう。面倒を見きれない」 響と呼ばれた少女は"隊長"の言葉に目を丸くしていたが…何かを察して静かに頷いた。 「またかっこつけて…それ流行ってるのか?」

2015-12-15 22:47:17
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