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【きっと・26】 『あっははははははは!もぉ〜丸ちゃんやめて!お腹痛いあっはっは!』 遠くでまだ続いてるギャグマシーンとゲラのやりとりに、すばるも目を向ける。 大っきな口開けて、大っきな笑い声。大っきな体がじたばたして、全身で「楽しい」を表現する。 笑顔、かわいいな。
2015-10-05 23:57:57【きっと・27】 笑ってるとこ、好きだな。 自然と心に浮かんだ「好き」の気持ちに少し照れくさくも、これで良かったんだって思った。 それなのにこの男ときたら。 "以上?" 「以上…かな。今のとこ思いつくのは」 "はぁ〜…" 何をそんなに不満そうにしているんだね。
2015-10-05 23:58:05【きっと・28】 確かに、イケメンで私のこと大好きだから、って言葉だけだと言ってること最低だけど。 でも実際そうだし。 あんなカッコイイ子にこんなに好きだって言ってもらえること、普通ありえない。 その奇跡って、好きになる理由として十分だと思う。 "お前さぁ"
2015-10-15 00:03:16【きっと・29】 すばるは手元の缶ビールを煽ると、横目で私を見た。 "それ、お前のことが大好きな男前やったら誰でもええってこと?" 「あー…」 そうきたか。 でも、 「そう…かもしれないねぇ」 イケメンはともかく、好きでいてくれるって大事だと思う。
2015-10-15 00:03:22【きっと・30】 もういい歳なんだし、優しいとか頼れるとか、求める要素はそんな綺麗なものじゃなくなってる。 だって、1番難しい条件だし。 "ほな俺でもええんか" 「はい?」 何を言い出すんだこの男は。 私の話、聞いてました?
2015-10-15 00:03:29【きっと・31】 "すばちゃん、大倉みたいな王子様系ちゃうけど結構男前やと思わん?" 「…まぁ」 ただのドスケベなのにおモテになりますよね、若い頃から。 顔だけが理由じゃないと思うけど。 "ほんで、お前のこと大好きやん俺" 「そりゃどーも」
2015-10-15 00:03:35【きっと・32】 何何、さっきまで不機嫌だったのに今度は陽気モードなわけ? と思ったけど、ふと目が合った表情は真剣なもので。 「…え、」 "わからんならええけど" 「え、いやちょ、すばる酔ってる…」 "おー酔うてるよ。酒の力でも借りなこんなことよー言わんやろ"
2015-10-15 00:03:42【きっと・33】 え?は? どういうこと? …そういう、こと? 「え、すばる…」 "お前がそんなんやからなぁ、俺は…" 初めて大倉くんに出会った時、すばるは大倉くんのことを"俺の弟みたいなもん"って私に紹介した。 大倉くんもすばるのことをお兄ちゃんみたいに慕って、甘えて。
2015-10-15 00:03:49【きっと・34】 後輩に好かれる人だけど、大倉くんとは特に仲がいいんだなって思った。 "俺、だいぶ若い時に実家出てもーてるやん。やから、本物の弟以上に弟やねんあいつは" すばるもあの時のことを思い出しているのか、ぽつりぽつりと話し始める。
2015-10-15 00:03:56【きっと・35】 "あの日お前のこと紹介したんも、いつか大倉の姉ちゃんにしてやれたらなって思ったからなんやけど" 「………」 "昔っからそうやねん。俺、大倉のこと好きやし笑わしたいから。あいつ喜ばすためやったら、ちょっと無理してでも頑張ってまうんよ。すばちゃんええ兄貴やろ?"
2015-10-15 00:04:02【きっと・36】 「…そうだね」 "…あの時、紹介せんかったら良かったんかなぁ…" 切なげな目で、空を見上げた。 "話戻るけど、お前がそんなんやから。そんなんやからなぁ!!" 今度はいきなり大声。 "…大倉やないとあかんって言えや、俺に希望持たせるようなこと言うな。"
2015-10-15 00:04:12【きっと・37】 "ちゃんと諦めさせろやボケ" 最後には私にもギリギリ聞こえるぐらいの声で、小さく呟いた。 すばるにここまで言わせておいて、私ときたら…。 『うまぁ!これめっちゃ美味いで丸ちゃん!』 またしても遠くから聞こえる声。
2015-10-15 00:04:23【きっと・38】 そういえばごはんを豪快においしそうに食べるとこも好きだなぁ…なんて思い出してる。 すばる、ごめん。 考えれば考えるほど。 「すばる…」 "あ?" 「…気持ち、悪い…」 なぜか、胃が重くなって目眩がします。
2015-10-15 00:04:32【きっと・39】 "ほーん" 私の異変に気付いたすばるが、さっきまでの雰囲気とは一変、ニヤニヤしながら私の顔を覗き込む。 "やっと効いてきたか" 「効いたって、何…」 聞かなくても、だいたいわかるような気がする。嫌な予感。 "すばちゃんスペシャル♡" やっぱり。
2015-10-18 22:40:46【きっと・40】 さっき飲んだオレンジジュース、一気飲みした後にどこかで飲んだ気がしたんだ。 お酒は強い私が、過去に唯一飲めなかった外国のお酒。 「最低…」 運転あるって言ったじゃん。 イタズラ好きなのは知ってるけど、何でこんなこと。 "ま、見とけや。ええもん見したるから"
2015-10-18 22:40:53【きっと・41】 悪びれもせず余裕な態度。 しかも何か言ってること意味不明。 せめて目の前の足に一発蹴りでも入れてやろうかと体勢を起こそうとすると、 『ちょ、すばるくん!何してくれてんの!』 さっきまで遠くで楽しそうにしてた、聞き慣れた声が焦った様子ですぐ上から降ってきた。
2015-10-18 22:41:00【きっと・42】 "あーごめんごめん、間違えて飲ましてもーたわ" 『えぇ?もー…。○○さん、大丈夫?』 「大丈夫…」 そう言うと同時に、体がふわっと浮く感覚。 あれ、私大丈夫じゃなかった? と、思ったら。 "ヒュ〜♪" "おーくら、かっこいー!"
2015-10-18 22:41:07【きっと・43】 周りから冷やかしの声。 目の前に、大倉くんの顔。 「ちょ、大倉くん」 『ん、ここ掴まっといて?』 軽々と抱き上げられて、いわゆるお姫様抱っこの状態で、私の腕を自分の首に回す。 「大倉く、 『すんませーん、俺お先に失礼しまーす!ごちそうさまでしたぁ♡』
2015-10-18 22:41:14【きっと・44】 私の抗議を遮って、大きな声で皆さんにご挨拶。 お疲れーとか気をつけてなーっていう言葉がたくさん聞こえて、大倉くんが歩き始める。 「大倉くん、」 『あー、ええからええから!無理して喋らんでええからな。もーすばるくんめ…』 「大倉くん、あの、どちらへ」
2015-10-18 22:41:22【きっと・45】 『どちらって、帰るんやん。とりあえず俺ん家でええ?』 「いや、車…」 ハンドルキーパーだった私が飲まされてしまった今、私達に帰る手段はない。代行? 『俺、飲んでへん』 「え?」 嘘。 だって、大好きな人達に囲まれて、おいしいごはん。飲まない理由がない。
2015-10-18 22:41:28【きっと・46】 私が運転するねって言った時も『ありがとぉ、よろしく♡』って笑ってたじゃん。 でも、顔を埋めた彼の首筋からは確かにお酒の匂いはしない。 なんで? * あっという間に駐車場について、私を助手席に下ろしてシートベルトまでしっかり締めてくれた。
2015-10-18 22:41:34【きっと・47】 いそいそと運転席に移動して自分のシートベルトを締める彼。 目が合うと、私が何を言いたいのかわかったみたいで。 『最初っから、飲むつもりなかってん。』 「なんで…」 『なんでも』 「なんでも、って…」 そんな理由で私が納得すると思ってるのだろうか。
2015-10-18 22:41:41【きっと・48】 『…俺がべろべろなってる隙に、他の男に口説かれたりしたらたまらんし』 「そんなこと…」 ありえない、とは言えなかった。 すばるの顔が頭に浮かんだから。 『まぁそれを抜きにしても、帰りは俺が運転するつもりやってん。疲れた後、無理させたくないやん?』
2015-10-18 22:41:48【きっと・49】 それはそれは優しく笑うと、しんどくない?ってそっと頬を撫でる。 「大丈夫…」 …じゃ、ない。本当は。 胃もたれとはまた別の、胸が詰まるようなこの感覚は。 『うわぁ、その顔たまらん♡じゃなかった、しんどいのにごめんな?』
2015-10-18 22:41:56【きっと・50】 彼を見上げる私がどんな顔をしているのか自分では見ることができないけど、なんとなくわかった気がする。 車が動き始めて、目を閉じる。 かっこよくて、私のことを大好きでいてくれて。 笑った顔が可愛いこと、幸せそうに食べる姿でこっちまで幸せな気分になること。
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