#完全ノープラン艦これ与太話 【コレクティヴ・サブコンシャスネス】#5～#6

春魔解丼 @vespiking

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#完全ノープラン艦これ与太話 【コレクティヴ・サブコンシャスネス】#5 #KZNPLN

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（これまでのあらすじ：ワイオミングを名乗る怪奇毒電波により、なんらかの洗脳めいたジツ影響下に入った夕張と翔鶴は〈停戦派〉活動家、水母棲姫ブルーバブルと接触。だがブルーバブルの正体は多重人格を操る危険な〈過激派〉エージェント、マンオウォーであった！） #KZNPLN

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（翔鶴の危機を前に正気をとり戻し立ち向かう夕張であったが、力及ばず脳に毒液を注入されソクシ！ナムアミダブツ！夕張は不死身だが入渠ドックに入れないと生き返れず、死体を取り戻さねば死んだも同然！さらに翔鶴もまた洗脳毒を受け、失踪！走れ、特派員弥生！） #KZNPLN

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――辺境の鎮守府、工廠管理室。 #KZNPLN

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工廠管理室長、秋雲はせわしなく物理キーボードを叩き、古めかしい大型UNIX筐体からパンチドテープを出力する。「……異常なし。ファック」秋雲はパンチドテープを見るや引きちぎり、必要以上の力で握り潰してダストシュートへ投げ、サンマ・タブレットを噛み潰した。 #KZNPLN

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サンマ成分がニューロンに作用し、思考がややクリアになる。マグロ粉末ほどではないが、サンマ・タブレットは安価かつ短期的に頭脳をブーストする合法ドラッグとして、ハッカー達の間で裏技的に重用され、今日も北方海域における非合法な軍事ソナー漁がサンマの絶滅を早めている。 #KZNPLN

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草木も眠るウシミツ・アワー。弥生も既に、明日からの調査に向けて休眠をとっている。工廠全体を見渡す管理室のモニタ群は、ぞっとするほど暗く平穏だ。「なァーんだろうな……何か見落としてるのか」過去数週間分の電波ログはいずれも黙し、語らぬ。 #KZNPLN

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秋雲の眼球がクルクルと回転し、視界がやや揺らぐ。サンマ・タブレットの副作用だ。既に今夜のサンマ摂取量は、適量を倍を超えている。それは集中を高めるためでもあったが、同時に、彼女の苛立ちを鎮めるためでもあった。感情的なオーバードーズだ。涼しくない。ガラではない。 #KZNPLN

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もどかしくてたまらぬが、今夜は潮時か。副作用で微かに震える指でガリガリと側頭部を掻き毟り、ユノミの中で冷えたコブチャを流し込み、席を立とうとした。その時ふと、彼女を椅子に引き戻すような立ちくらみが襲った。それは天啓めいていた。「……どうしたのかね、ブッダ＝サンよ」 #KZNPLN

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秋雲は雷に撃たれたように、テレビの電源ツマミをひねった。この時間帯は何もプログラムがない。映るのは単なるノイズだけだ。そのはずだ。だが、ノイズは彼女に語りかけてきた。『……ザリ、ザリザリ、ドーモ……ワイオミング……です……』「……あァ！？」秋雲の顔色が急変する。 #KZNPLN

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血相を変え、秋雲はモニタに掴みかかる。これだ。弥生の証言と一致する。『……病気な……貴方……』「うるせェ！お前なんなんだよ！」だが彼女はすぐに手を止め、跳ね返るように逆方向の机へと向かった。電波監視用の大型UNIXだ！「勝手に言ってろ！シッポ掴んでやる！」 #KZNPLN

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ガガピー。気の抜けた通信音を伴い、パンチドテープが出力される。「何だ……何処から撃ってきてんだァ……？おらッ！」テープを引きちぎり、結果を文字通りの血眼で凝視する。結果は……。「……ネオ、ヨコスカ、民営放送……？クソッ！どういうことだ！一般電波じゃないか！」 #KZNPLN

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確かに今しがたテレビに映っているチャネルは、ネオヨコスカ民営放送のものだ。かりにこの怪奇放送が流れていない時、同様の電波監視を行ったならば、このように出力されるだろう。つまりは、異常なしと同義だ。「どういうこった……」『……扉を……ザリザリ』「うるせェ！」 #KZNPLN

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そう叫び、無意識にテレビへ振り向いた時。秋雲の時間が停止した。テレビにはノイズではなく、顔が映っていた。その画質は荒く、艦種を判別こそできぬが、小型深海棲艦特有のドクロじみた黒い顔。「……なんだ、あんた」『ザリザリ……ドーモ……ワイオミング……です……ザリザリ』 #KZNPLN

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血管にブロック氷を流し込んだような寒気が秋雲の全身を駆け抜ける。ただの電波ジャックだ。そう思おうとしてもなお、異様なその顔は秋雲の視線を釘付けにし、退廃的な恐怖感を沸き立たせる。(((オイオイオイ、夏はもうお終いだぞ。他所のホラー映画は上映終了してる時期だぜ))) #KZNPLN

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身体の自由が効かない。全身が小刻みに震え、寒気を伴った強烈な離人感が襲う。己が己でなくなる感覚。広大な自我の海のうち、己の知覚も制御も及ばぬ領域が徐々に、ゆっくりと、だが確実に広がってゆく。ニューロンの制海権が食い荒らされる。地図が塗り替えられる。 #KZNPLN

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その時。一点に注がれていた視線が、突如揺らいだ。サンマの副作用だ。糸が切れたように、秋雲の全身に体温が戻る。ニューロンの制海権が戻る。「グ、グワーッ！？」だが、完全にではない。半端に戻った感覚が、再び来る侵食への恐怖と違和感を強烈に認識し、自律神経を食い荒らす。 #KZNPLN

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「グワッ……グワーッ！」頭が痛い。酔いが覚めかけた時の頭痛めいて、体温と痛覚と自我認識がバランスを著しく欠き、混濁する。身体がひとりでに、否、己の手によるものか否かもわからぬままに、視線がテレビに戻ろうとする。『ザリザリ……真実を……』「アーッ！クソッタレめ！」 #KZNPLN

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「これか！これが弱点だろうファック野郎！」秋雲は遠く、はるか遠い己の右腕をネンリキじみた感覚で動かし、サンマ・タブレットのケースを掴んだ。マジックハンド・カワイイキャッチの景品をガラス越しに掴んだような実感のなさに、改めて戦慄する。「クソッ！返せ私の身体！」 #KZNPLN

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タブレットをガリガリと噛み砕く。強烈なオーバードーズ作用により、視界が羅針盤めいて三回転する。「ア、ア……アバーッ！」気管が収縮し、肺にふたをされたように、息が苦しい。涙と鼻水を振り撒きながら、秋雲は倒れ込む。『ザリザリ……』「どうだチクショウ！勝ったぞ！私は！」 #KZNPLN

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全身が痙攣し、汗が吹き出す。「ア、クソ……クソ！ヤメロー！」まだ僅かに残ったワイオミングの制海域で、がたがたと震えながら起き上がろうとする秋雲の船体。だがグルグルと視界が回転し、ワイオミングの顔は像を結ばない。『……ザリザリ……』そして、ノイズ画面が戻った。 #KZNPLN

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ワイオミングの支配を脱した瞬間、呼吸が一気に止まる。「ア、ア……」秋雲はのドを掻き毟りながら、意識の重力に逆らってデスクの脚にしがみつき、上下左右に回転する管理室を宇宙飛行士めいて、あるいはフジサン登山家めいて必死で這いずり、緊急スイッチを押した。 #KZNPLN

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