UIMSの高機動とパウエルさん [#UGSF]

Tagotch @Tagotch

ライブコア「2623-UIMS-LIVECORE-LB」の挙動が変わったのはそれ以降であった。今度は逆にあらゆるテストパイロットの操作を徹底的に拒否するようになった。この事態に開発を焦っていたアージュ・アビアシオン社は困惑した。

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アージュ・アビアシオン社は、コクピット内カメラの記録映像から自社の一介の清掃員でしかなかったパウエル・ウォンを突き止め拘束した。デス・メーカーとも言われた凶暴なコマンダーの挙動が変わった原因を知りたがったのである。

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パウエルは、アージュ・アビアシオン社によって様々な検査が行われた。当然ESP能力が真っ先に疑われたが、封建王朝国のESPは発動意志がないと能力が顕現しないため、ESPテスターにも反応は示すことはなかった。

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人間ドックもビックリな度重なる検査が行われたが、身体が丈夫なことと、いつも笑顔を絶やさないタフな精神力を持っていること以外全く普通の人間と変わりなく、ほどなく亡命移民監督省から人権侵害として監査が入り始めたため、アージュ・アビアシオン社はしぶしぶパウエルを開放した。

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仕方なくアージュ・アビアシオン社は手を変えた。パウエルに鹵獲コマンダーのORBSの清掃を依頼したのである。しかも特別ボーナスを餌に。普通の人なら見え見えバレバレの仕事依頼にもかかわらず、予想を裏切ることなくパウエルはこの餌に食いついた。

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アージュ・アビアシオン社の思惑としては、彼が原因なら搭乗すればライブコア「2623-UIMS-LIVECORE-LB」は何らかの反応を示すだろうし、そうでなく不幸な事態となっても、単に亡命移民が清掃中の事故で死ぬだけという目算があった。

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アージュ・アビアシオン社の案内で再び鹵獲コマンダーの格納庫に連れられたパウエルは、コマンダーのORBSコクピットに頭を突っ込んだ瞬間、尻を蹴られて倒れこみ、そして外部からロックを掛けられたのであった。

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アージュ・アビアシオン社の仮説はあっていた。パウエルが入った瞬間、鹵獲コマンダーの全システムに火が入る。そしてライブコア「2623-UIMS-LIVECORE-LB」が起動した瞬間、エネルギー供給計がMAXに振りきれ、まるでワープかと思わんばかりの加速度で発進していった。

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アージュ・アビアシオン社のコントロール・センターはORBSの内部カメラの映像をみて大きくどよめいた。それは慣性計測器の数値の間違いではないかと思われた。パウエルは人の形をしていた。そして機体の操作をしていたのである。100Gを超えるコクピットの中で。

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ライブコア「2623-UIMS-LIVECORE-LB」の挙動は、既に当初の目標である脱出をすることから、明確にパウエルの力試しへと変わっていた。今回はアイドル運転というレベルではなく、全力運転でORBSの慣性計測器は全軸方向に対してカウンターが計測不能を示すほどであった。

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この時、鹵獲コマンダーの中で、ライブコア「2623-UIMS-LIVECORE-LB」とどのようなやり取りがあったかは記録に残っていない。ライブコア「2623-UIMS-LIVECORE-LB」が全てのORBSにあった記録を消し、パウエル自身も語ることはなかったからである。

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この事件の後、この鹵獲コマンダーはパウエルだけが操作できる機体となった。強烈なGの中で彼が全くの無害であったのは、彼がハッケを持つ封建王朝国人であり、しかも王朝禁軍の最精鋭である皇帝近衛兵であったからである。

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そして後年、パウエルはアージュ・アビアシオン社清掃事務員兼UGSF軍属として、鹵獲コマンダーから名前を変えた、ロックバード級規格外超大型決戦艦「ニュクス」の自律型艦外展開砲「ジオフレームα19」の専属フレームライダーとなった。

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王白炎。別名パウエル・ウォン。The New Space Order Warを通しての撃沈容積487,951,000,000キュービック・トン。これは歴代エースパイロットの通算撃沈容積としては第8位。単機撃沈容積としてはイアン・ハイニックのジオフレームβに継ぐ4位となる。

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The New Space Order War終末期をα19とともに駆け巡ったパウエルだが、彼は終戦を見ることなく死亡する。残されたα19は、幾人かの封建王朝国出身のフレームライダーを充てられるが、ライブコア「2623-UIMS-LIVECORE-LB」はこれを拒否し続けた。

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しばらくはα19は決戦艦ニュクスの艦内に留めおかれたが、後日パウエルの宇宙葬の際にニュクスの格納庫を破壊して逃亡、パウエルの棺を回収して何処かへと消えていったと言われる。

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その後のUGSFの公式記録では、ジオフレームα19は戦時喪失扱いとして記録されている。ちなみに彼は生涯妻帯することはなかったが、彼のそばにはいつも水色の髪色を持つ女性が居たと言われる。この事実に関してはあらゆる記録がないため、今も謎とされている。

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という妄想。されど某誌に書く予定だった。