ワールドトリガーに関する一考察
1.僕が週刊少年ジャンプの中でもある意味「異質」な部類とも言える、「ワールドトリガー」になぜはまったのか、その理由をずっと考えてきたのですが、最近になってようやく考えがまとまってきました。それについてお話ししてみようと思います。
2015-12-03 18:59:462.もちろんこれは“僕が思う”「ワールドトリガー」についての呟きです。葦原先生に尋ねたわけではありませんし、僕も原作者の描いたものが「ワールドトリガー」そのものであることに異論はありません。 ただ、葦原先生は「賢い犬リリエンタール」第1話の目次コメントで、
2015-12-03 19:09:283.「読者の想像力を刺激する作品を描いていきたい」というようなことを書いていらっしゃいましたので、僕もそれにならって大いに想像力を働かせてみたいと思います。
2015-12-03 19:12:584.ワールドトリガーには、僕の短見の限り、3つの主題があるように思えます。 それは「鎮魂」と「弱さ」、そして「救済」です。
2015-12-03 19:16:205.「鎮魂」については先程までpostしていたのですが、あまりにも内容が内容なので、やめることにしました(これをつまびらかにするのはリスクが大き過ぎると判断しました)。読まれた方は見なかったことにして下さい。すみません。 でも、葦原先生はどうやら、物凄いことをされてるみたいです。
2015-12-04 00:27:176.葦原先生が太っても、首を痛めても、長期休載をされないのは、たぶんこれをやり通すためなのではないかと思います。 こんなに遠大なことに、こんなにも高いクオリティで取り組んでいるのは、本当に凄いです。 大っぴらに言うのは憚られますが、知りたい方はDMにて対応します。ぜひ。
2015-12-04 00:41:038.ワールドトリガーは週刊少年ジャンプで連載されていますね。ジャンプには三大原則があって、「友情・努力・勝利」がそれに位置付けられています。仲間と共に戦い、苦難を乗り越え、勝利を勝ち取る。そういう物語が「ジャンプ的」な物語である、ということになっている(たぶん)。
2015-12-05 17:27:099.それを実現するために、これまで漫画家の先生たちの手によって、数多くの作品が作り出されてきました。 ジャンプは男性誌ですから、大抵の場合、乗り越えるべき苦難の象徴として「強敵」が描かれます(強い相手と戦って勝利することが、男性はとても好きだからです)。
2015-12-05 17:58:0610.強敵に勝つために仲間と共に努力し、鍛練を積み、そして勝利を納める。強敵とは戦ううちに友情が芽生え、いつしか彼も仲間になっていく。 そうやって少年は成長していく、という構造が「ジャンプシステム」としてジャンプ作品の根底にあります(合ってるかな?)。
2015-12-05 18:12:4811.さっき、「強い相手と戦って勝利することが男性は大好き」と書きましたが、それは実体験でも物語の上でも同じです。実際に勝利したときは大きな喜びが沸き、物語として読んだ時にはカタルシス(心のわだかまりが解消されること)が得られます。 ですから、
2015-12-05 18:22:3012.より強い相手に勝利する漫画は、より強いカタルシスを得ることができるため、とても人気になりやすいです(今思いついたことですけど)。 代表的なものとしては、SLAM DUNKの対山王戦とか、BLEACHの一護対白夜の決戦とか、ONE PIECEのルフィ対エネル戦とかがあります。
2015-12-05 18:40:5013.これらの物語は、圧倒的な実力差を覆して主人公たちが勝利することで、読者に大きなカタルシスを与えています(さっき挙げたのは僕が「うおおおお!!」って感じになった覚えがあるお話です。他にもすごくたくさんあると思います)。 こういう物語を読んでいると、とても元気になってきます。
2015-12-05 18:50:0514.何て言うか、「頑張ればなんとかなるんだ」とか、「僕にだってできるはずだ」という気持ちになってくるんです(火ノ丸相撲とか銀魂もそういう漫画ですね)。 というのは、そういう物語で主人公達が強敵を倒すきっかけになるのが「強い気持ち」だからなんですね。「相手に勝ちたい」という
2015-12-05 18:55:4615.強い気持ちが、限界を超えて体を動かし、今まで出来なかった必殺技を生み出し、時に運までをも味方につける。 そうやって主人公たちが頑張っているのを見ると、「僕もやってやる」と元気が出てくるんですね。これは少年漫画を読む子どもにとってとても大きなものだと思います。
2015-12-05 19:04:3816.「強い気持ちがあれば、僕もヒーローになれるんだ。僕も強い気持ちを持って頑張ろう。」そういう気持ちで、少年は頑張ります。学校生活を、スポーツを、宿題を頑張るようになる。子どもは我慢が苦手ですから、「しなきゃいけないこと」をするのが大変です。だから、「漫画の力」を借りるんです。
2015-12-05 19:13:0817.これまでの少年漫画で「気持ちで強くなる」というパターンが数多く採用されてきたのは、そういう理由があると思います。たくさんの子供たちに勇気を与え、支持を受けて来たからこそ、少年漫画の中に「気持ちで強くなる」というパターンが、定型としてできた。そういうことではないかと思います。
2015-12-05 19:24:2318.でも、「気持ちで物事がどうにかなるということが通用するのは、ある程度まで」だということを、多くの大人は知っています。気持ちではどうにもならないことが世の中には沢山あります。望んだからといって、全員と友達になれるとは限らないし、途轍もなく強い相手には、普通勝つことができない。
2015-12-05 19:39:3319.そういうことを、成長の過程で殆どの人は知ることになります。そして、気持ちではどうにもならないことをどうにかするために、新しい物語を求めることになっていくんです(その為にヤングジャンプやウルトラジャンプといった「青年誌」が用意されているのだと思います。読んだことないですが)。
2015-12-05 19:50:4220.少年が成長するためには「ジャンプシステム的物語」が必要です。でも、それで永遠に成長することはできないんです。「少年」が「大人」になるためには、「心のエネルギーを核とした物語」は(それまでは役に立っていたけれど)使い物にならなくなる。 新しいものを核とした物語が必要なんです。
2015-12-05 20:00:3321.そういう「少年漫画の次の物語」、"心の力"とは別のものを核とした「少年が大人になる物語」「成熟のための物語」として、ワールドトリガーは位置付けることができるのではないか、と僕は考えています(やっと戻って来れました。良かった)。
2015-12-05 20:29:3022.というのは、「少年が大人になるための物語」において必要とされるのは、"心の力"ではなく "頭で考える力" だからです。もう少し詳しく言えば、 "心に干渉されることなく、頭で考えられる力"です。それが、成熟の物語において核となっていきます。 どういうことか説明していきますね。
2015-12-05 20:47:2723.心の強さが核である物語は、「心次第でいくらでも強くなれる」物語です。気持ちが強ければ、目の前に高い岩壁のようにそびえる「困難」も、登り切れると思って一心に岩に取り付くような感じです。そこには「とても辛いけど、頑張れば登り切れる」という"心の理論"に基づく考えがあります。
2015-12-05 21:06:4723.物語上では、主人公はその気持ちの強さで一気に壁を駆け上がります。 もちろんそれに感銘して、その理論を現実に適用しても、かなりのところまでは行けます。もしかしたら壁を登り切れるかもしれません。でも体は疲労でボロボロになるし、もしかしたら落っこちて怪我をしてしまうかもしれない。
2015-12-05 21:17:0924.そして大人になればなるほど、現実における困難な壁は多くなっていきます。しかも、それはより高く、生身では登れないものになっていく。故に、頭で考える力が必要になってくるんです。 頭で考える力が核である物語は、心の力を核とする物語とかなり違います。
2015-12-05 21:25:0225.まず、心の力の原動力が「自分の気持ち」であったのに対して、頭で考える力の原動力は"それを為す"という「意志」です。人の気持ちというのは日々揺れ動きます。頑張ったときには辛いし、誰かから傷つけられれば落ち込む。場合によっては壁を登れなくなってしまうかもしれません。でも、意志は
2015-12-05 21:33:56