東方的小倉百人一首解釈
@st70521 人海戦術せんと無理。 あきのたのかりほのいほのとまあらみわかころもではつゆにぬれつつ 秋の田の粗末な小屋にて、収穫祭に呼ばれた妹の帰りを待つ姉。しとどに濡れる衣の袖は、夜露によるものか、寂しさの涙によるものか定かではない。静かな秋の象徴。
2015-12-21 22:21:48はるすぎてなつきたるらししろたへのころもほすてふあまのかぐやま いつの間にやら白黒百合は通り過ぎてしまったらしい。境内から眺める山麓の家々に白い夏物が、中には天狗ごと、干されている。というか、文さん何やったの。物干し竿に吊るされたまま身じろぎもしないんだけど!?
2015-12-21 22:28:48あしびきのやまどりのおのしだりおのながながよをひとりかもねむ 次第に冷え込むようになった秋の長々しい夜を一人寝するのは寂しくて。思い浮かぶは黄金の毛並み。それも九本あるアレじゃなくちゃ嫌なのだ。だからと言って、まだ仕事中の式の尾に潜り込むのも申し訳なくて。結局布団に潜り込む紫。
2015-12-21 22:35:43たごのうらゆうちいでてみればしろたへのふじのたかねにゆきはふりつつ 田子の浦から振り返った富士の山には真っ白な雪が積もっていた。山頂からたなびく煙は有明の月に届かんと喘いでいる。馬鹿な話だ。あいつらはまだ地上にいる。さて、どこに落ちたのだろうか。
2015-12-21 22:43:56おくやまにもみぢふみわなくしかのこえきくときぞあきはかなしき 何で秋はすぐ終わってしまうのか。悲しみに堪えきれないのだ。忘れられた場所で、さらに忘れられる悲哀は、静けさの佇む紅い奥山で鹿のように高く空へと慟哭するしかない。紅葉の神は孤高であり、ただ一人なのだ。
2015-12-21 22:50:07かささぎのわたせるはしにおくしものしろきをみればよぞふけにける かささぎが連なり天の川の橋となり、織姫を渡したという伝説があるけれど。その橋に霜が降りるような夜更けになってしまえばいいのに。妬ましいことね。この橋にも霜が降りたと言うのに、あの人はやって来ないのだから。
2015-12-21 22:55:28あまのはらふりさけみればかすがなるみかさのやまにいでしつきかも あそこから来た連中は、唐土にまで来たと言うのに見つからない。思えば遠くへ来てしまったものだ。あの空にぽっかり浮かぶ月は、三笠山にも浮かんで居るだろうか。家の庭から見えた、あの月のままであることよ。
2015-12-21 22:58:56わがいほはみやこのたつみしかぞすむよをうぢやまとひとはいうなり 私の家は神霊廟の東南にある、鹿の鳴くような静かなところです。辛い世の中では蛆が湧くようなと言いますが、決してそんなことはありません。青娥が綺麗に居させ続けてくれるからです。憂き世の外から私はそうした人を嗤うのです。
2015-12-21 23:09:10はなのいろはうつりにけりないたづらにわがみよにふるながめせしまに 人生なんぞたかだか百年。身の振り方を悩んでいるうちに終わってしまうもの。ちょうど、桜が色あせて散ってしまうように。だから、船の上では、せいぜい語っておくれ。彩り鮮やかな渡世の話を。
2015-12-21 23:13:30これやこのゆくもかえるもわかれてはしるもしらぬもあふさかのせき これがあの、行く人も帰る人も、知る知らずに関係なく、出会いと別れを繰り返すこの世とあの世の関なのです。現では逢阪の関などとも言いますね。よろしいですか。それではこれより開廷。起立なさい。
2015-12-21 23:21:38わたのはらやそしまかけてこぎいでぬとひとにはつげよあまのつりぶね 三途の河で釣りをするような輩は居ないけれど、居たとしたら伝えて欲しい。小野塚小町は南の海原の数多ある島々へ向けて漕ぎ出して行ったと。まだうろついているのが結構いるようなので。
2015-12-21 23:34:58あまつかぜくものかよひふきとぢよをとめのすがたしばしとどめむ 博麗の巫女が命ず。天行く風よ、天界に通ずるその道を閉じなさい。この女には、しばらく留まってもらわないとね。さぁさ、神社を潰してくれた天人さま? お前の罪を数えろ。
2015-12-21 23:41:11つくばねのみねよりおつるみなのがはこひぞつもりてふちとなりつる 寺子屋で習った筑波山やら男女川やらが何処にあるかは知らないけれど、きっとみんな同じだろう。滝のように落ちて積もり積もった恋心は川の淵のように深くなってしまった。恋の魔法使いとしたことが。
2015-12-21 23:48:22みちのくのしのぶもぢずりたれゆゑにみだれそめにしわれならなくに 私のせいではないでしょう? 人形に着せる陸奥のしのぶずり模様のように心が乱れ始めたのは誰のせいか。まったく人の気もしらずにあちらこちらへ良い顔ばかりして。だからあなたは嫌いなのよ。
2015-12-22 00:26:36きみがためはるののにいでてわかなつむわがころもでにゆきはふりつつ それでもね。あなたのために雪が舞う、まだ春浅い野原に出て若菜を摘んできてしまったわ。幽香には内緒にしてね。
2015-12-22 00:28:08たちわかれいなばのやまのみねにおふるまつとしきかばいまかへりこむ あなたと別れ因幡の山を離れても、その山の峯に生えている松ではないですが、待っていると伝え聞いたらすぐに帰ってくるつもりです。それまでどうか、安らかにお眠りください。国の主はあなたなのですから。
2015-12-22 00:32:12ちはやぶるかみよもきかずたつたがわからくれなゐにみずくくるとは 前代未聞のことだったわよ。川が紅葉によってではなく霧のせいで真っ赤に染まっているなんて。まぁ、とっちめたからいいんだけど。
2015-12-22 00:34:55すみのえのきしによるなみよるさへやゆめのかよひぢひとめよくらむ 住みの江の岸には昼夜を問わず波が打ち寄せると言うけれど、夜に見る夢の中でさえ、あんたが私のところへ通って来てくれないのは、あの菫子とかいう女の目を避けているからかしら。
2015-12-22 00:37:02なにはがたみじかきあしのふしのまもあはでこのよをすぐしてよとや 難波の潟に生えている葦の短い節の間のような、ほんの短い時間も逢わないままに、この退屈でたまらない永遠を過ごして暮らせというのかしらね。本当に退屈でたまらないのよ。ねぇ、もこたん。
2015-12-22 00:40:00わびぬればいまはたおなじなにはなるみをつくしてもあはむとぞおもふ 思い通りにいかなくなってしまったのだから、今となっては同じことよね。難波にある澪標ではないけれど、身を尽くしても逢おうと思ってしまったじゃないの。さぁ、覚悟はいいわね?
2015-12-22 00:42:33いまこむといひしばかりにながつきのありあけのつきをまちいでつるかな あんたがすぐに来ると言うから秋の夜長をずっと待っていたというのに、有明の月が出てしまったじゃない。どこで道草食ってるのかしら。またあの泥棒眼鏡猫に捕まったのかしら。ああ、もう。いつになったら来るつもりなの?
2015-12-22 00:45:14