東方的小倉百人一首解釈
わがそではしほひにみえぬおきのいしのひとこそしらねかわくまもなし 私の袖は、干き潮の時にも海に沈んで見えない沖にある石のように人知れず、涙に濡れて乾く間もない。それならせめて舵輪を取るか。それなら目元の汗も見えることはないだろう。
2015-12-24 01:45:11よのなかはつねにもがもななぎさこぐあまのをぶねのつなでかなしも 世の中は常であって欲しいものねえ。渚を漕ぐ死神の小舟の引き綱を見ると、胸をつまるような悲しみがこみあげて来ていけないわ。彼女が自分のことを何もできずに、あの舟に乗りこむ姿が見えてしまうのだもの。
2015-12-24 01:51:24みよしののやまのあきかぜさよふけてふるさとさむくころもうつなり 南にある高い山から秋風が吹きぬけてきて、この人里も寒く、衣を打つ音が聞こえてくる。あれをやるのはもう妹紅ぐらいだけれども。
2015-12-24 01:54:42おほけなくうきよのたみにおほふかなわがたつそまにすみぞめのそで 私が身の程をわきまえずしたいと願うのは、つらい世の中で生きている人々、そして妖怪にも救いの覆いをかけることなのです。木こりが斧を打つ音が響くこの山に住み始めた私も着ている墨染めの袖を。
2015-12-24 01:59:48はなさそふあらしのにはのゆきならでふりゆくものはわがみなりけり 花をさそい散らす、紅白と黒白と銀色の嵐が吹きすさぶ庭には、雪のような桜吹雪が舞っているけれど。本当にふりゆくものは、雪ではなく、この私の身であったのねえ。
2015-12-24 02:05:44こぬひとをまつほのうらのゆうなぎにやくやもしほのみもこがれつつ いくら待っても来ない人を待ち続けて、淡路は松帆の浦の夕凪のころに焼く藻塩がこげるように、私の身も心もいつも恋焦がれているの。あなたの炎に焦がされるというのにね。
2015-12-24 02:10:49かぜそよぐならのをがはのゆうぐれはみそぎぞなつのしるしなりける 風が気持ちよく楢の葉をそよがせる、山頂から流れてくるこの川の夕暮れは、すっかり秋めいているけれど、禊だけが夏のしるしになっているよ。そろそろ夏の胡瓜も終わりだなあ。
2015-12-24 02:15:38ひともをしひともうらめしあぢきなくよをおもふゆゑにものおもふみは 人をいとおしく思ったり、人を恨めしく思ったり。思うにまかせず苦々しくこの世を思うがゆえに、あれこれを思い煩うのです、太子であるこの私は。
2015-12-24 02:18:43ももしきやふるきのきばのしのぶにもなほあまりあるむかしなりけり 宮にある古い軒端の忍ぶ草を見るにつけても、偲んで偲びきれないものは、昔のよき時代、神奈子と全力で喧嘩ができたあの頃であることよ。
2015-12-24 02:22:57