静安定性と方向舵の効きと垂直尾翼とか腹ビレとか背びれとかのお話

飛行機のお話はいろいろおもしろいです。
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ウチューじん・ささき @uchujin17

静安定性と方向舵の効きの良し悪しは共通点も多いけど微妙に違う問題だったりもする。よく言われるのは「プロペラトルクによる離陸時の機首偏向」だけど、正確にはトルクではなく不均衡推力で、その是正には静安定性よりも方向舵の効きのほうが効果が大きい。

2015-12-24 02:31:37
ウチューじん・ささき @uchujin17

機銃射撃時の軸線のふらつき、蛇行(Sneaking)は静安定性に依るところが大きい。しかし大横滑り角で方向舵の効きが逆転する(ラダーリバーサル)は必ずしも静安定性だけの問題ではない。

2015-12-24 02:34:17
ウチューじん・ささき @uchujin17

垂直尾翼の増積とくに高さの増加、胴体延長あるいは垂直尾翼取り付け位置の後退、背ビレ(ドーサルフィン)あるいは腹ビレ(ベントラルフィン)の追加、いずれも静安定性増大の効果を伴うけれど、大迎角や大横滑り角での効果はそれぞれ異なる。

2015-12-24 02:37:30
ウチューじん・ささき @uchujin17

F4Uコルセアなんて垂直尾翼が胴体末端よりも前寄りに付いていて、これは胴体長を短縮するのと同じで静安定性は不利になるんだけど、大迎角時に方向舵が胴体乱流の下流に入って効かなくなることを嫌ってあえて前寄りに付けている。

2015-12-24 02:40:02
ウチューじん・ささき @uchujin17

今の飛行機だとムーニー(Mooney)社の軽飛行機が同じ考えで前縁垂直・後縁前進の垂直尾翼形状を採用していて、傍目には天山とか彩雲っぽい。スピン回復性の向上に効果があるとのこと。ムーニーは高級機でもあるので、外観上の特徴にもなっている。「そこらのパイパーとは違うぜ」みたいな。

2015-12-24 02:44:14
ウチューじん・ささき @uchujin17

ジェット戦闘機に多い腹ビレはプロペラ機にはあまり例がないけど、零戦を水上機化した二式水戦は方向舵を胴体下部まで貫く「中島型」に替えたうえに腹ビレも付けている。P-63キングコブラにも生産ロットによって腹ビレ付きの機体がある。

2015-12-24 03:05:28
ウチューじん・ささき @uchujin17

零戦を水上機化するにあたって方向安定性と方向舵の効きの両方が不足したらしい。興味深いことに、最初から水上機として設計された強風の垂直尾翼は零戦型の「胴体上乗せ」型になっている。

2015-12-24 03:10:35
ウチューじん・ささき @uchujin17

紫雲も「胴体上乗せ」型で、胴体末端下部に三角形の腹ビレを追加。瑞雲は方向舵が胴体末端を貫く「中島型」。似たような水上機でも垂直尾翼と方向舵のあしらいは少しづつ違うのね。

2015-12-24 03:16:29
ウチューじん・ささき @uchujin17

水上機は離水滑走路時に機首上げ姿勢で突っ走るので、垂直尾翼や方向舵が胴体乱流の陰になって効きが低下しやすく、貫通型の方向舵や腹ビレが効果があるらしい。一方、P-47やP-51の水滴風防型が備えた背ビレは大横滑り時の方向舵失効(逆効き)の対策に効果があったらしい。

2015-12-24 03:45:08
ウチューじん・ささき @uchujin17

P-51HとかF8Fは垂直尾翼の増積(高さ増し)と背ビレ付加の両方をやっているけど、前者は低速時の方向安定性向上(離陸時の機首偏向対策)、後者は大横滑り時の方向舵失効に効果があったらしい。

2015-12-24 03:50:04
ウチューじん・ささき @uchujin17

ファストバック胴体の水滴風防化はスピットファイアや飛燕もやっているけど、背ビレは付けていない。横滑り時の方向舵逆効きが起きなかったのか、起きたけど気にしなかったのか、対策する時間がなかったのかはよくわからない。

2015-12-24 03:52:00
ウチューじん・ささき @uchujin17

そういやダリル・グリーネマイヤーがF8F「コンクエスト・ワン」でプロペラ機の速度記録更新に挑んだとき、抵抗を減らそうと垂直尾翼を切り詰めて、切ってからロッキードのエンジニアに相談したら「絶対にやめろ!」「もう切っちまったよ」という話があった。

2015-12-24 04:50:47
ウチューじん・ささき @uchujin17

垂直尾翼を切った状態で記録飛行に臨んだけれど、やっぱりフラフラしてどうしようもなく中止。あとで垂直尾翼を再延長してMe209の記録を抜くことに成功したはず。

2015-12-24 04:52:26
ウチューじん・ささき @uchujin17

グリネマイヤーの記録はのちにグリフォンムスタング「レッドバロン」が抜き、レッドバロンの記録をR-3350ベアキャットの「レアベア」が抜いて、レアベアが「最速のレシプロエンジン機」の現タイトルホルダーのはず。

2015-12-24 04:54:25
羽田 @swansnducks

@uchujin17 確かにレアベアが最速レシプロプロペラ機の現タイトルホルダーで850km/ですね ターボプロップとなるとツポレブの爆撃機でしたっけ

2015-12-24 06:35:59
ウチューじん・ささき @uchujin17

@simbastovell Tu-95がFAIの公式速度記録を持っているかどうかは知りませんが、プロペラ機としては世界最速ということになっていたと思います。もっともTu-95の常用高度では推力の多くをジェット排気から得ているという話もありますが。

2015-12-24 06:54:38
ウチューじん・ささき @uchujin17

90年代には「ツナミ」や「ポンドレーサー」が絶対速度記録更新に挑戦しようとしたけれど、ポンドレーサーはそれ以前のトラブル山積で、ツナミは記録挑戦でエンジン吹っ飛ばして不時着したんだっけ。

2015-12-24 04:57:56
ウチューじん・ささき @uchujin17

79年にスティーブヒントン(父)が奇跡の生還を果たしたレッドバロンの墜落も、リノの直前に記録飛行をやって、記録飛行用とリノ用のエンジンは別に用意してあったんだけど、記録飛行用のエンジンを壊してしまって、リノ用に温存していたエンジンで記録更新したらしい。

2015-12-24 05:00:17
ウチューじん・ささき @uchujin17

そこで酷使したエンジンをオーバーホールできないままリノレースに出て、滑走路前を通過直後にエンジン停止、プロペラも止まってフェザーできないという最悪の事態に。機体は急速に高度を失って地面に激突、バラバラになった胴体中央が奇跡的に原型を留めていて生還。

2015-12-24 05:03:39