ギガベース日誌　ACT06「SEA OF BLOOD」 05(終)

すふん @suhn_Akvavit

マックスの自爆は海面を球状に凹ませ、周囲の深海棲艦は圧倒的な濃度のコジマ粒子に飲み込まれる。 開いた勝利への突破口。羽黒はそれを見逃さず、鬼気迫る声で味方に伝えた。 「全艦、支援に回ってください！オーバードウェポンで敵旗艦を叩きます！」　#ギガベース日誌

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一部の例外を除き、暴走させない冷静さと技能を持ち合わせた艦娘にのみ与えられる兵器。それがオーバードウェポンであり、羽黒には深雪のACに搭載されていたものと同じ種類のOWが与えられていた。 『対警備組織規格外六連超振動突撃剣』 それが、その兵器の名前であった。　#ギガベース日誌

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羽黒のジェネレーターにOWの外部ジェネレーターが直結され、専用のアームが羽黒の左腕を引き千切るように切断する。 羽黒は痛みに顔を歪ませる事も、苦痛に声を上げる事も無く、ただ真っ直ぐに遠方の戦艦棲姫を見つめていた。　#ギガベース日誌

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羽黒の肩部装甲がパージされ、視神経とLAN直結されたカメラアイが内部から露出する。 六基のチェーンソー型超振動ブレードが扇状に展開し、羽黒の腕へとマウントされた。 「これ以上、やらせませんから」 羽黒のブースターが、光を放つ。　#ギガベース日誌

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「全艦突撃！何が何でも羽黒を援護するのよ！マックスの死を無駄にするなッ！」 羽黒の突撃に合わせ、ギガベースの艦娘達は一斉にOBを起動。羽黒に集る深海棲艦に、相打ち覚悟の猛攻を開始した。 「よくもマックスを……Du wirst sterben！」　#ギガベース日誌

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顔面を切り刻まれるペースが上昇し、龍鳳は発狂寸前になりながら大量の艦載機を射出。コジマ爆弾を積んだ艦載機は猛スピードで深海棲艦へと突っ込み、本体の装甲ごとPAを大きく減衰させる。 そこに比叡のハウザー爆撃がなだれ込み、数十隻のツ・リ級がまとめて消し飛ばされる。　#ギガベース日誌

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羽黒の目の前を、二隻のツ級が塞ぐ。 「ギガベースノカンムスダヨ」 「スクワナキャ。クロイトリニノマレテシマウマエニ」 ツ級が防御姿勢に入る。すると、羽黒の右腕で展開していたブレードが筒状に束ねられ、ガトリングのように高速回転を始めた。　#ギガベース日誌

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「さっきから、やかましいんですよ……！」 ツ級のガントレットに、高速回転するブレードが突き刺さる。それがPAを容易く貫いた時点で、ツ級の表情は変わっていた。 「こちとら、今が幸せなので！」 ツ級の肉体はガントレットごとブレードに巻き込まれ、挽肉と化し海に散る。　#ギガベース日誌

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「お前達にどうこうしてもらう筋合いは無いんだよッ！！」 もう一体のツ級の頭上にブレードが振り下ろされ、がら空きになった胴体をビスマルクのコジマコーティング弾が突き破る。 異常な攻勢を、戦艦棲姫は既に察知していた。　#ギガベース日誌

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「……何だ、この速度。オーバードブーストがここまで持続する筈は……」 「どうする、迎撃するか」 「殺さないようにしろ。我々は殺す為に来たのでは……」 そう言いかけた戦艦棲姫の視界に、OWを振りかざす羽黒が入った。 「速い……！」　#ギガベース日誌

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「まず手足を奪う。パルヴァライズは私が直接行おう。お前は後続の艦娘を押し止めてくれ」 「了解した。注意しろよ」 空母棲姫と戦艦棲姫は散開し、空母棲姫から新型艦載機が3機放たれる。 「行け」　#ギガベース日誌

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猛獣のような牙を持った艦載機が一斉に羽黒へと飛びかかり、羽黒は回避の為にクイックブーストを連発する。 「追い回せ。いずれEN不足で止まる」 だが、羽黒は止まらなかった。 OWの外部ジェネレーターから供給される無尽蔵のエネルギーは、羽黒を前へ前へと加速させる。　#ギガベース日誌

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「いくら早かろうが、無駄だよ」 ターゲッティングされた戦艦棲姫の艤装の口から大量のコジマ粒子が散布され、目視で緑光を確認できる程分厚いPAが形成される。 「ギガベースを……ギガベースの艦娘を……！」 戦艦棲姫の速力は劣悪であり、羽黒が敵を捉えるのは容易かった。　#ギガベース日誌

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「舐めるなああああああああああっ！！！！！！！」 分厚いPAに、六本のブレードが叩き込まれる。 回転が鈍り、羽黒の右腕から鮮血とコジマ粒子が大量に噴き出す。ブースター周囲の装甲にはひびが入り、小規模な爆発を繰り返していた。 「だから無駄だと……？！」　#ギガベース日誌

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羽黒の両足の魚雷菅がパージされ、内部からロケットの先端が顔を覗かせた。 超至近距離でのコジマロケットの斉射。戦艦棲姫のPAは消し飛び、その身をブレードが抉る。 羽黒が通り過ぎた後、半身をボロ雑巾のように引き裂かれた戦艦棲姫はその場に倒れる。　#ギガベース日誌

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「？！」 空母棲姫は焦り、追加の艦載機を6機射出する。 戦艦棲姫を轢き殺した羽黒自身も接射のダメージを受け、既に全身の艤装から重油交じりの血とコジマ粒子を溢れさせている。 しかし、その表情は、意志は変わらない。それどころか、殺意を更に増し敵に襲い掛かる。　#ギガベース日誌

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「まだあ……あどいっぜぎいいいぃいいいいいいっ！！！！！！！」 「この……化け物がッ！」 もう、羽黒を生かしておく選択肢は空母棲姫の中にはない。艦載機に全力攻撃を命じ、自身も副砲で羽黒を狙い撃つ。 「消えろ、イレギュラーッ！！！」　#ギガベース日誌

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空母棲姫まであと数十メートル。羽黒の頭部に新型艦載機が位付き、一部を喰らい去っていく。 続いて両足に一斉に艦載機が噛みつき、爆散。それと同時に、羽黒は半壊した脳髄で自身の艤装を全力稼働させ、残存する全てのエネルギーをブースターから爆発させた。　#ギガベース日誌

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「とっ！どおおっ！けええええええええええああああああああああああああっっっっっ！！！！！！！！！！」　#ギガベース日誌

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トーラス本社前海域に、二機のネクストが着水する。 既に深海棲艦の姿は無く、血と重油で彩られた海にぽつんぽつんと艦娘が立っているのみであった。　#ギガベース日誌

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「……ビスマルク。状況を報告しろ」 「トーラス直属艦隊は全滅。マックスは敵艦を巻き込んで自爆したわ」 「そうか」 「……提督。羽黒が通信の許可を求めています」 「繋げ」　#ギガベース日誌

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ビスマルクの両腕に抱えられた羽黒は、上半身と一部の艤装を残して消失。頭部も3割近くが破壊され、傷口からは弱弱しく粒子が漏れ出していた。 「てい、とく」 「お前が敵艦隊を退けたそうだな」 「がんば、り、ましたよお」　#ギガベース日誌

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「喰らいすぎだ馬鹿野郎。とっとと帰ってバケツ浴びろ」 「……むり、です」 「あぁ？」 「じぇねれ、た、こわれちゃって」 「あー……成程。まあ明石ならなんとかなるだろ。特製のコジマ薬物を注文してやるから、なんとかもたせろよ」　#ギガベース日誌

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「そんなの、いら、ない、から、てい、とく」 「んだよ」 「わた、し、よくやり、し、た、か？」 「ああ。よくやった。褒めてやる。だから」 「ああ、もう、何も、何も見えない……」　#ギガベース日誌