ギガベース日誌　ACT06「SEA OF BLOOD」 05(終)

すふん @suhn_Akvavit

トーラス本社前軍港に、純白の4脚ネクストが降り立つ。 肩の格納ユニットからワイヤーで降り立った6隻の艦娘は、もれなく全員が大破していた。 「うーっす……ただいま……」 「うう……死ぬかと思ったっぽい……」　#ギガベース日誌

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ワイヤーの下には、彼女達の提督が待ち構えていた。 「テレジアに送ってもらったのか」 「ALでクソガキぶっ殺した直後に有澤のガチタンと重二に襲われてさあ……死ぬかと思った本当」 「PA維持しながら必死に逃げ回ってたんですよ」　#ギガベース日誌

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「でも、あの2機のネクスト。急に離脱しちゃったよね。なんでだろう」 「全世界の企業重要拠点に一斉に深海棲艦が侵攻をかけたからな。有澤も例外ではあるまい」 「マジそれ。初耳なんだけど」 「まじまじ」　#ギガベース日誌

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「どこもかしこもネクスト戦力を出し切ってたからな。ここにも大量の深海棲艦が押し寄せた」 「へー。でもどうにかなったんじゃん」 「羽黒とマックスを失ったんだ。どうにかならなかったら困る」 「えっ……」　#ギガベース日誌

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提督はそれ以上語らず、コックピットから降り立ったミセス・テレジアといくつか会話を交わした後、どこかへと歩いて行った。 鈴谷はどことなく、去っていく提督が笑みを浮かべていたように見えてならなかった。　#ギガベース日誌

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―――――――――――――――同時刻、南西諸島サインズ拠点。　#ギガベース日誌

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基地内部、仮設執務室。 「いやあ、本当助かったよ」 「……」 その少年はクリーム色の髪の毛をタオルで無造作に拭き、ソファに寝転がりながら話し出した。 「レイ・オベローンだっけ？人命救助任務ご苦労様であります！ってね」 「そりゃどーも」　#ギガベース日誌

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「それにしても、君は英雄だね。ネクストに搭乗していたとはいえ、あれだけの数の深海棲艦を一人で退けたんだ」 「さあね。俺が退けたかは怪しいが」 「あ？」 タオルを床に無造作に放り、少年はレイを睨みつけた。　#ギガベース日誌

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「連中、その気になればこの基地を完全に壊滅させることだってできたはずだ。それがどうだ。あんたが”都合良く”用意してた別働隊に回収されて基地に到着したのと同時に奴等は撤退。お互いとんでもない被害を出したまま未消化に終わっちまった」 「君は死にたかったのかい？」　#ギガベース日誌

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「……」 「本当、運が良かったよ！君がいなかったら我々の艦隊は基地への到着前に壊滅していたであろう！この恩は一生経っても忘れないさ！そういや忘れてた！僕の名前はデューン・薙沢。まあ気軽にデューンって呼んでよ！ハハハハハ！」　#ギガベース日誌

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レイは不快感を露わにし、部屋を出る。 廊下の曲がり角の先、階段の手すりに、彼の実質的な雇い主とも言えるアディ・ネイサンがよりかかっていた。 「迎撃任務、ご苦労様でした」 「……あんたのほうも、大変だったろう」　#ギガベース日誌

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「ええ、まあ」 「……何かあったのか？」 アディはどこか虚空を見つめ、何かを思い出すのに苦労をしているような表情をしていた。 「……これ」 「あ？」 アディがレイに差し出した手の中には、煤で汚れた糸切れのような物があった。　#ギガベース日誌

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「……何だよ、これ」 「扶桑のです」　#ギガベース日誌

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「扶桑が、死にました」　　#ギガベース日誌

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8月、多くにとって突然に、それは起こった。 AL・MIを囮とした、深海棲艦による大規模侵攻作戦。 その殆どは企業連を始めとした人類側戦力に多大な被害を与え、多くの勢力が対応に追われる事となる。　#ギガベース日誌

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各勢力は新型深海棲艦の対策を練り、失われた戦力を補充させつつ、激化する経済戦争への準備を始める。 だが、一部の者達以外は彼等の世界の皮の下一枚に存在する何かに気付けずにいたままであった。　#ギガベース日誌

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まさにこの時、濁り水はゆっくりと流れはじめていたのだ。 　#ギガベース日誌

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ギガベース日誌　ACT06「SEA OF BLOOD」　完 ACT07「PHANTASMA BEING」　に続く　#ギガベース日誌

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Z3 ギガベース鎮守府に所属していた駆逐艦。海軍から強奪された海外製艦娘の一隻。 状況把握及び区間処理能力に優れ、深雪程ではないものの高い危機察知能力を有していた。 トーラス本社前海域における迎撃作戦において、軽巡ツ級5隻を巻き込み自爆した。　#ギガベース日誌

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羽黒(1/2) ギガベース鎮守府に所属していた重巡洋艦。妙高亡き後のギガベース主力重巡。 重度のコジマ薬物ユーザーであったが、中毒症状に溺れない高い精神力を有しており、オーバードウェポンを与えられる程の実力も持ち合わせていた。　#ギガベース日誌

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羽黒(2/2) トーラス本社前海域において、オーバードウェポンを使用し侵攻部隊旗艦である戦艦棲姫と空母棲姫をほぼ単身で撃破するも、決死の攻撃により自身も甚大な被害を受け、ジェネレーターを破損。戦闘終了後に死亡した。 遺体と装備は那智の改造用に回収された。　#ギガベース日誌