やせんのよるに

深海さかな @dzurablk_kai

「那珂ちゃん、命の恩人に対して失礼でしょ」 「イヤ、イノチヲ　スクワレタノハ、ワタシノホウダ」 「深海棲艦って結構、義理堅いんだね」 川内は笑うと、壁の電話でどこかへ電話をかける しばらくすると、するすると開いたドアから男が入ってきた #やせんのよるに

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年は30前くらいだろうか、細身な身体に鉄仮面の男は龍造寺、神通たちの上官にしてこの基地の指揮官だと名乗った もう何度目かになる命の恩人への礼を済ますと、提督は問いかけてきた 「帰る場所はあるのか」 「イヤ・・・」 「なら、ここにいるといい」 #やせんのよるに

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え、それだけ！？ と後ろで騒ぐ那珂をよそに、提督は眉間のシワを更に深くして、未だに状況が理解できない軽巡棲姫の前で何かを思案する 「うむ、となると名前が必要だな 命の恩人の誰かさんでは無礼だし可愛そうだ」 「アノ、ナンノハナシ・・・」 「ん？ わからないか？」 #やせんのよるに

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「つまり、あんたは私たちの隊に入ることになんの」 予め提督が話していたのか、川内が補足しと 「じゃあ、那珂ちゃんの妹だねー！！」 那珂は仲間が増えることよりも、妹ができる方が嬉しいらしい 「まだ川内型って決まった訳じゃないだろう」 #やせんのよるに

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「えーいいじゃん！ 艦名の欠番だってあるんだし！」 「そういえばそうだったな・・・」 提督は更に思案すると、ある名前を口にした 「・・・水無瀬、なんて名前はどうだ」 「ドウ、トイワレテモ・・・」 「お前の名前だ」 私の・・・名前？ #やせんのよるに

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困ったように神通たちの方を見ると、ニコニコと笑っていた 「いい名前ですね」 「いいんじゃない？」 「うん、可愛いよー！」 「カワイイ・・・」 そんな言葉を初めて言われて、どんな顔をすればいいのかわからない #やせんのよるに

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再度提督を見ると、鉄仮面を崩して微笑んでいた 「私の隊へようこそ 歓迎するよ」 差し出される右手 「・・・イインデスカ？」 「何か悪いことでも？」 「・・・イエ ウレシイデス」 おずおずと右手を握り返す #やせんのよるに

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この日、軽巡棲姫という名前のない怪物はいなくなり、水無瀬と名前を変えた新たな艦娘が大湊に加わった 「・・・シマイナンテ、ハジメテダ」 「なら、私が教えてあげます」 「イイノカ？」 「ええ」 #やせんのよるに

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神通と水無瀬は顔を見合わせると、笑いあう そんな様を、午後の暖かな陽光の中、川内や那珂、提督の三人はいつまでも眺めていた #やせんのよるに

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おわっとけ #やせんのよるに