「石田三成の青春」第9話 「友よ!~佐和山から関ヶ原へ~」

「新選組 試衛館の青春」「独白新選組の著者 松本匡代先生のTwitter小説「石田三成の青春」のまとめです。 現在まとめて読めるのはこちらだけです。
4
前へ 1 ・・ 6 7
松本匡代@早耳屋お花事件帳&試衛館の青春&独白新選組&夕焼け土方歳三はゆく&石田三成の青春 @mk106732

「それはよい。背負ってでも連れて行くが……。天守へ行ってどうする」 「見たいのだ。琵琶湖に沈む夕日が」 「見たいというて、おぬし……」 「まだ辛うじて、光の色はわかるのだ。長浜にいた頃、よく二人で眺めた夕日、全く見えぬようになる前に、見ておきたい」 「わかった」 #友よ

2016-01-10 19:03:37
松本匡代@早耳屋お花事件帳&試衛館の青春&独白新選組&夕焼け土方歳三はゆく&石田三成の青春 @mk106732

二人は屋敷を出た。  駆け寄る、三成の近習を 「よい」 吉継の従者を 「お任せあれ」  と抑え、三成は吉継を背負って、佐和山城の天守へと登っていく。  三成の息が上がっている。 「大事ないか」  吉継が訊く。 #友よ

2016-01-10 19:04:34
松本匡代@早耳屋お花事件帳&試衛館の青春&独白新選組&夕焼け土方歳三はゆく&石田三成の青春 @mk106732

「なんの。おぬしこそ、大丈夫か」 「わしは楽ちんじゃ」 「こやつめ」  二人して、軽口を言いあいながら、天守をめざす。  山道を登るほどに、季節は進む。暦の上では既に秋。ときおり吹く涼やかな風が、疲れ切った二人の身体を癒した。 #友よ

2016-01-10 19:05:15
松本匡代@早耳屋お花事件帳&試衛館の青春&独白新選組&夕焼け土方歳三はゆく&石田三成の青春 @mk106732

(九)  天守へ着いた。  二人、西の廊下に出て、ドスンと腰を下ろした。  目の前に琵琶湖が広がる。  今、まさに、太陽が一日の仕事を終えて、比良の山に沈もうとしていた。  太陽が黄金に輝き、湖面が虹色に染まる。 #友よ

2016-01-10 19:06:15
松本匡代@早耳屋お花事件帳&試衛館の青春&独白新選組&夕焼け土方歳三はゆく&石田三成の青春 @mk106732

きれいだ。 三成の目から涙が溢れた。 なぜ涙が出るのか自分でも解らない。 「見えるか、紀之介」 隣にいる吉継に、大声で訊いた。 「ああ、見える。見えるぞ、佐吉」  吉継も大声で答えた。  吉継も泣いている。 #友よ

2016-01-10 19:06:57
松本匡代@早耳屋お花事件帳&試衛館の青春&独白新選組&夕焼け土方歳三はゆく&石田三成の青春 @mk106732

おそらく吉継には、琵琶湖や太陽など個々のものは見えてはいまい。しかし、この美しさは感じているに違いない。  それから二人は、太陽が沈みきってしまうまで、無言でその場に座っていた。 #友よ

2016-01-10 19:07:38
松本匡代@早耳屋お花事件帳&試衛館の青春&独白新選組&夕焼け土方歳三はゆく&石田三成の青春 @mk106732

「石田三成の青春」 これにて全編終了です。 長い間お付き合いくださり、どうも有難うございました。 #友よ

2016-01-10 19:11:09
前へ 1 ・・ 6 7