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「石田三成の青春」第9話 「友よ!~佐和山から関ヶ原へ~」
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今回も、 家康の非を鳴らし、自分が兵を挙げたならば、豊臣恩顧の者たちが、大挙して集まって来る。 そう信じているようだ。 不惑を過ぎた今も、そこだけは、まるで少年の時のままだ。 #友よ
2016-01-09 19:07:29![](https://s.togetter.com/static/web/img/placeholder.gif)
吉継は頭巾中で微笑んだ、不快ではない。むしろ、ほっとして快い。 「わかった」 吉継は、三成にとも、自分にともわからぬような返事をし、座り直した。 「佐吉、まず、徳川殿の非を論う文(ぶん)を書け。激しければ激しいほど良い」 #友よ
2016-01-09 19:08:25![](https://s.togetter.com/static/web/img/placeholder.gif)
「ああ、言われなくても書く。それに紀之介、徳川殿、ではない、家康じゃ」 三成がむきになって言うのに対して、 「ああ、そうであったの、家康じゃ」 吉継は、まるで子供を相手にするようだ。 それに気づかぬ三成は机に向かい、吉継は後ろで、檄文の出来上がるのを待った。 #友よ
2016-01-09 19:09:40![](https://s.togetter.com/static/web/img/placeholder.gif)
「出来たぞ」 気は張っているが病に冒された身体だ。疲れから、少しまどろんでいたのであろう。三成の大声に、吉継の首がぴくんと立った。 「おお、出来たか」 「これだ、読んでくれ」 三成が吉継に巻紙を渡す。 「……」 #友よ
2016-01-09 19:10:35![](https://s.togetter.com/static/web/img/placeholder.gif)
わしが目の見えんことを忘れている。気づけ。気づかぬか。気づかぬなぁ。 吉継は溜息とともに言う。 「おい、わしは読めん」 三成は一瞬、不思議そうな顔をして、吉継を見たが、すぐに、 はっ。 と気づき、 #友よ
2016-01-09 19:11:27![](https://s.togetter.com/static/web/img/placeholder.gif)
「すまぬ、わしとしたことが、心ないことを申した。許せ、許してくれ」 と平謝りだ。 わしとしたことがだと、ここまで気づかぬのはお前ぐらいだ。 吉継はこみ上げる笑いをぐっとこらえて、 「もうよい、気にするな。それより、早う読んで聞かせてくれ」 三成を促した。 #友よ
2016-01-09 19:12:39![](https://s.togetter.com/static/web/img/placeholder.gif)
「おおそうであった」 三成は、巻紙を手に取り、いずまいを正し、 「読むぞ」 と言って、読み始めた。 内府ちがひの条々 と題された十三カ条にも及ぶその檄文は、三成らしい正義感あふれる激しい口調で家康の非を鳴らしている。 以下その内容 #友よ
2016-01-09 19:14:20![](https://s.togetter.com/static/web/img/placeholder.gif)
一、五人の奉行、五人の大老が誓紙連判して約束を交わしてから幾程もないのに、浅野長政と石田三成の二人を追い込めるようなことをした。 #友よ
2016-01-09 19:15:14![](https://s.togetter.com/static/web/img/placeholder.gif)
一、五人の大老のうち、前田利家が病死したのち、子息の前田利長がすでに誓紙を出して礼節をつくしているのに、今度は上杉景勝征討にかこつけて、前田から人質を取り、追い込めるようなことをした。 #友よ
2016-01-09 19:16:03![](https://s.togetter.com/static/web/img/placeholder.gif)
一、景勝に何の科もないのに、誓紙の約束を違え、太閤様の御置目にも背き、今度討ち果たされるのは歎かわしく思い、種々その理を説いて申し聞かせたのに、ついに許容することなく会津に出兵した。 #友よ
2016-01-09 19:17:10![](https://s.togetter.com/static/web/img/placeholder.gif)
一、知行方のことは、自分で召し置くことはもちろん、取次をもしてはならぬと誓い合ったはずであるが、その約束を破り、何の忠節もない者どもに対して、勝手に知行を与えている。 一、伏見城のことも、太閤様が定められた留守居の者を追い出して、私に人数を入れて占拠した。 #友よ
2016-01-09 19:17:49![](https://s.togetter.com/static/web/img/placeholder.gif)
一、拾人(五大老と五奉行)のほか、誓紙をやりとりするようなことはしないと誓い合ったのに、数多取り交わしている。 一、政所様を大阪城西ノ丸から追い出して、自分が居住している。 一、御本丸のように、西ノ丸、にも天守をあげた。 #友よ
2016-01-09 19:18:38![](https://s.togetter.com/static/web/img/placeholder.gif)
一、諸侍の妻子を人により、えこひいきに国許へ帰すようなことをしている。 一、縁組のことについては、御法度に背いたので、話し合ってその理を申して合点しているはずなのに、重ねてなお多くの縁組を行っている。 #友よ
2016-01-09 19:19:41![](https://s.togetter.com/static/web/img/placeholder.gif)
一、若い衆を煽動して、徒党を組ませるようなことをしている。 一、五奉行や五大老がそろって連判すべき文書に、家康が一人で署判をしている。 一、内縁の者の奔走によって、石清水八幡宮の社領の検地を勝手に免除した。 #友よ
2016-01-09 19:20:37![](https://s.togetter.com/static/web/img/placeholder.gif)
三成は、一気に読み上げ、ふうっと息を吐いてから、 「どうだ」 と訊いた。 吉継は充分間をとってから、 「上出来だ」 と答えた。 家康の側から見れば、 言いがかりだ。 と言える箇所も少なくない。 #友よ
2016-01-09 19:21:40![](https://s.togetter.com/static/web/img/placeholder.gif)
だが、こういうものは、必ずしも真実でなくてもよいのだ。声を大きくして、いわば、 言った者勝ち、 というところが多い。 そして何より、書いた三成に嘘がないことが強い。 次は、これをどうするかだ。 吉継は考える。 #友よ
2016-01-09 19:22:38![](https://s.togetter.com/static/web/img/placeholder.gif)
三成は、いますぐにでも、全国の大名にばらまきそうな勢いだが、それではあまり効果がない。 「大坂へ使者をやり、増田殿か長束殿に密かにここへお越し願えぬであろうか」 吉継の言葉に、 「そうか、豊臣公儀として、これを出すか」 さすが三成、わかりは早い。 #友よ
2016-01-09 19:23:55![](https://s.togetter.com/static/web/img/placeholder.gif)
「そうだ、そうなれば、徳、いや、家康が謀反人となる」 「文を書く」 三成が文机に向かうのへ、 「三奉行の名前でこれが出せたら、毛利に殿送り総大将を依頼する。それから全国にばらまくのだ」 #友よ
2016-01-09 19:25:54![](https://s.togetter.com/static/web/img/placeholder.gif)
言ってから、吉継は、 とりあえずは、これでよい。 大きく息を吐いた。 #友よ
2016-01-09 19:26:40![](https://s.togetter.com/static/web/img/placeholder.gif)
三奉行のうち増田長盛が来るにしても、長束正家が来るにしても、三成が、内府ちがひの条々を見せて、あの迫力で迫れば落ちる。もともと、徳川殿には良い感情を持っていない者たちだ。必ず味方に引き入れられる。 よし! 吉継は、頭巾の中で気合いを入れた。 #友よ
2016-01-09 19:27:30![](https://s.togetter.com/static/web/img/placeholder.gif)
「石田三成の青春」 第9話【最終話】 「友よ! 佐和山から関ヶ原へ」第5回 これにて終了です。 今宵もお付き合いくださり、どうも有難うございました。 明日も、どうぞお楽しみに! #友よ
2016-01-09 19:29:21![](https://s.togetter.com/static/web/img/placeholder.gif)
お待たせいたしました。 「石田三成の青春」第9話【最終話】 「友よ! 佐和山から関ヶ原へ」第6回【最終回】 ぼちぼち始めさせていただきます。 #友よ pic.twitter.com/L6Y7SX1Rdk
2016-01-10 19:00:30![](https://pbs.twimg.com/media/CYWbdrYUkAAq48p.png:medium)
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(八) 三成が、増田長盛宛の文を書き上げたところで、吉継が言った。 「明日いったん敦賀へ戻ろうと思う」 「そうか、そうじゃな、色々と片付けねばならぬこともあろう」 「それほど間をおかずに、出て来るつもりだが、何かあれば、報せてくれ」 #友よ
2016-01-10 19:01:15![](https://s.togetter.com/static/web/img/placeholder.gif)
「ああ、そうする。今宵の夕餉は、二人だけの出陣祝い。酒も少しくらいなら大丈夫なのであろう。どうだ、鮒ずしで一杯」 「おお、それはありがたい」 「では、さっそく」 三成が近習を呼ぼうとした時、 「その前に、頼みがある」 吉継が、改まった口調で言った。 #友よ
2016-01-10 19:02:09![](https://s.togetter.com/static/web/img/placeholder.gif)
「何だ、改まって」 「今何時(なんどき)だ」 「もうかれこれ七つになるが」 「では、まだ間に合うな」 「何だ」 「天守へ登らせてほしい」 「天守へ、わしは別に、かまわんが、おぬし、大丈夫か」 「手数をかけることになると思うが」 #友よ
2016-01-10 19:02:48