文々。新聞電子版特別コラム「タビレミのちょちょっと雑学」第1回「意訳邦題」
豊富な知識をお持ちのタビ好きレミリアさん、通称「タビレミ」今回からコラムとして文々。新聞電子版に不定期連載スタートです。
邦題が作られたきっかけと、その種類
海外の映画、文学作品、音楽作品などにつけられる「邦題」。元々は戦後、海外作品が日本に流入するようになった頃、まだ馴染みの浅かった横文字に対応するため、原題とは別につけられた日本専用タイトル。近年は横文字に慣れたこともあって徐々に邦題は昔ほどは多くない。
2016-01-13 21:45:57ただ、直訳すると放送できるか微妙になるタイトルや、子供向け作品などには、現在も邦題がつけられている。また、一見原題のようだが実は原題と全く違う片仮名表記の邦題というものも増えてきている。邦題は、ある意味でエンタテイメント性の一面を持っているとも言える。
2016-01-13 21:48:17邦題には大きく分けて二つのタイプがあり、「原題をそのまま直訳したもの」と「原題から意訳したもの」に分けられる。特に注目するのは、「意訳したもの」。この中にはとんでもない意訳をして、原題や作品の趣旨からかけ離れてしまったものも少なくない。そこが面白くカルト的人気になる場合もある。
2016-01-13 21:51:41今回は後者の「意訳したもの」をメインに紹介して頂きました。
現在もシリーズである映画が製作され続けている「ミッション:インポッシブル」は、原題”Mission: Impossible”をそのまま片仮名表記にしたもの。だけどこれのオリジナルシリーズで、1960年代に放送されたテレビドラマには邦題があって「スパイ大作戦」だった。
2016-01-13 22:12:18ネット上で有名になった楽曲、O-Zoneの「恋のマイアヒ」は、曲冒頭の「マイアヒ・マイアフ…」から取ってそれに「恋の」というありがちなフレーズをつけただけの、一種のこじつけ邦題。原題は”Dragostea din tei”直訳すると「菩提樹の下の恋」になる。
2016-01-13 22:16:04こういう「意訳の改題」は日本が特に顕著であるため日本独特のもののように思われがちだが、実はそうではない。日本から海外に輸出した作品も、現地で面白い意訳になる場合がある。代表的なのが、坂本九の「上を向いて歩こう」で、アメリカでは”SUKIYAKI SONG”と呼ばれている。
2016-01-13 22:41:36日本でもかなりの人気を博した作品で「とんでもない意訳邦題」の代表格といえば、ビートルズの”A Hard Day's Night”最近は「笑ってコラえて」の「朝までハシゴ旅」のBGMとして使われているこの曲だけど、リリース当時の邦題は「ビートルズがやって来る ヤァ!ヤァ!ヤァ!」
2016-01-13 21:55:13これはもう意訳というより完全に原題とも作品の趣旨ともかけ離れたものなんだけど、実はこの邦題を考案したのは、「映画って本当にいいもんですね」の名文句で有名な水野晴郎。何故こういう邦題にしたのかは不明。一説には別の作品とこの作品を取り違えて命名したのではないかと言われている。
2016-01-13 21:58:48ただ意訳するだけでなく、どこかの作品から言葉を借りてくる場合も。
ブルース・リーの代表作として未だに人気の高い「燃えよドラゴン」実はこれも意訳。英語でのタイトルは”Enter The Dragon”で、「燃えよ」というフレーズは原題にも英題にも入っていない。この「燃えよ」は、司馬遼太郎の小説「燃えよ剣」から来たものなのよ。
2016-01-13 22:05:34一方で「とんでもない意訳邦題」と勘違いされやすいのが、1978年に公開されたサモ・ハン・キンポーの「燃えよデブゴン」。これはそもそも「燃えよドラゴン」シリーズのオマージュとして作られた作品で、英題も”Enter The Fat Dragon”実は割と的を射た邦題なのよ。
2016-01-13 22:07:46近年の作品で「この発想はなかった」と言われる秀逸な邦題を持った映画がある。2000年に公開されたタイの映画で、原題は”Satree-Lex”LGBTのバレーボールチームを主人公とした作品ということで、つけられたタイトルが「アタック・ナンバーハーフ」
2016-01-13 22:23:51元ネタは勿論、バレーボールを主題とした名作「アタックNo.1」で、ニューハーフが選手なので「アタック・ナンバーハーフ」。ちゃんと「アタックNo.1」の原作者である浦野千賀子の許諾を得た上でこの邦題がつけられた。
2016-01-13 22:25:13良いシンプルと悪いシンプル
2014年、日本でも社会現象を巻き起こしたディズニー映画「アナと雪の女王」。あまり知られていないが実はこれも意訳邦題で、原題は”Frozen”と極めてシンプル。アメリカの子供向け映画は単純なタイトルが多く、同じディズニー映画の「カールじいさんの空飛ぶ家」も原題は”Up”である。
2016-01-13 22:37:21逆に、日本の映画史上最低の邦題と言われるものもある。2004年に公開されたアメリカの映画で、原題は”Napoleon Dynamite”バス通学のオタクの少年が主人公ということで、つけられた邦題が「バス男」。元ネタは言わずもがな、当時流行っていた「電車男」である。
2016-01-13 22:28:02「電車男」の人気に肖ってつけられた邦題なのだが、当然「電車男」に似た要素はなくストーリー展開も全然違う。安直すぎると国内でも酷評されることが多く、結局2013年に、原題の片仮名表記「ナポレオン・ダイナマイト」に改題。再販の際には「バス男」の命名について謝罪する文章もつけられた。
2016-01-13 22:30:53もっと面白い邦題はないの?あるんです!
主に例題を挙げながら紹介してきたが、他にも面白い邦題はたくさんあるので、特に面白い邦題で気になった方は、「やりたい邦題」で検索してみるといいわ。ここには書かなかったけれど、ロックを中心に伝説を残したミュージシャン、フランク・ザッパの作品の邦題は軒並みひどいので特筆しておく。
2016-01-13 22:47:31