7ビットの心音
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「一言二言話せれば満足かと思っていた。別れの言葉でも交わせれば彼は――彼も、ビーも、彼の死を受け入れるんじゃないかと思っていた。……と、私の方はこんなところだね」 #7ビットの心音
2016-02-01 23:44:56「一言二言のために、ずいぶん面倒なことをしてくれる」「君の『仕事』にとってはそうだったかもしれないね」先生は笑い、何気なく傍らのスイッチを押した。部屋を満たしていた低い音が、反響するたびに小さくなっていく。 #7ビットの心音
2016-02-01 23:46:52「さて、戻ろう。ビーが目を覚ましているかもしれない」「ああ」言いながら、残念だがもう少しかかるだろう、と内心で付け足す。正確には、もう少しかかるだろうと思っていた、と。 #7ビットの心音
2016-02-01 23:49:26ビーのいる場所へ戻ると、ルートがその体を抱きかかえて俯いていた。私たちに気が付いても、顔を上げようとしない。「おれ、ビーのことなんにも知らなかったんだな」 #7ビットの心音
2016-02-01 23:51:56「ずっと一緒に暮らしてたのに、あんなに喋ったのに、なんにも」ルートの声は弱く、かすかに震えていた。ビーはまだ目を開けない。「家族みたいに思ってたのおれだけだったんかな」 #7ビットの心音
2016-02-01 23:54:10「ルート」先生がその傍らに膝をつき、ルートの頭に手のひらを乗せた。「私も数に入れてくれ。ルートだけではないよ」ルートは顔を上げ、片手で乱暴に目元を拭って鼻をすすった。「……先生、おれ23なんだけど」「私からすれば子供のようなものだよ」 #7ビットの心音
2016-02-01 23:56:21「こいつが死ぬのは今じゃないし、過去でもない」私が言うと、ルートは私の方を見た。その目には既に敵意がない。「おっさん、結局何者なんだよ」「既に死んでいるはずの男がいつまで経ってもこっちに来ないんでな。回収しに来た。……人間には『死神』とか呼ばれる」 #7ビットの心音
2016-02-01 23:58:48「こいつが死ぬのは今じゃないし、過去でもない」私が言うと、ルートは私の方を見た。その目には既に敵意がない。「おっさん、結局何者なんだよ」「既に死んでいるはずの男がいつまで経ってもこっちに来ないんでな。回収しに来た。……人間には『死神』とか呼ばれる」 #7ビットの心音
2016-02-01 23:58:48先生はおかしくてたまらないというふうに笑い、「ずいぶん直接的な名前を持ってるじゃないか」と言った。「モリ。『死』か」ルートは私と先生とを交互に見、「胡っ散臭えー……」と顔を歪めた。「どっちでもいい、仕事は終わった」ルートがどう思おうが、私はそれに興味が無い。 #7ビットの心音
2016-02-02 00:00:22先生はおかしくてたまらないというふうに笑い、「ずいぶん直接的な名前を持ってるじゃないか」と言った。「モリ。『死』か」ルートは私と先生とを交互に見、「胡っ散臭えー……」と顔を歪めた。「どっちでもいい、仕事は終わった」ルートがどう思おうが、私はそれに興味が無い。 #7ビットの心音
2016-02-02 00:00:22