一カラ『もしもし、もしも』(新刊没ネタ供養)

アニメ14話までの解釈で作ってた新刊のボツネタです。15話により解釈が変わったので、ツイートまとめとして供養しました。 ※勢いで呟いていたので一人称にブレがあります。 壱松→「俺」(動揺した時は「僕」)    心のなかでは「僕」 唐松→「俺」 続きを読む
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安倍川みやが@大阪6魂 @umee9632

「いっちまっつにいさあ~~ん」部屋でのんびり茶をすすっていると十姉妹が後ろから突撃してきた。突然のことでお茶をこぼすも興奮気味の十姉妹はうしろでへへ、と笑っているだけだった。なんだ、と声に出す前に十姉妹が叫んだ。「すっげーもんもらったんだ!」

2016-01-23 23:31:11
安倍川みやが@大阪6魂 @umee9632

いきなりなんなんだ、と思うも十姉妹は十姉妹。あ、そうとだけ返す。しかしそれだけで終わらなかった。「壱松兄さんも使わないと!」と俺の手をとって走りだす、ちょっとまて、サンダルくらい履かせろよ、足の裏がざらざらする、というか石踏むから!

2016-01-23 23:32:43
安倍川みやが@大阪6魂 @umee9632

曲がったり上がったり下がったり曲がったり。酸素がたりず意識がもうろうとしてきたところで十姉妹の足がとまる。「どこ…ここ…」「商店街!電話ボックスがあるから!」はいこれ、と十姉妹に無理やり何かを握らされた。「願いの叶うテレフォンカードだって。」「ええ……」

2016-01-23 23:37:33
安倍川みやが@大阪6魂 @umee9632

「ニャンコの時、迷惑かけたらってデカパン博士がくれた」「まじかー」「まじでっせ。ささ、兄さん。」正直信じたかと言われれば、信じていない。けれど、あんな薬をつくれる博士のいうことだし、それに隣で十姉妹がわくわくと体を動かしているのでおとなしく電話ボックスに入った。

2016-01-23 23:42:47
安倍川みやが@大阪6魂 @umee9632

二人で入った電話ボックスは予想以上に狭く、ぎうぎうと音をたてているような気さえする。空気も薄いような。「はいはい!じゃ僕から。」そういって十姉妹がカードを差し込むと、番号を押さないうちにコール音が聞こえ始めた。そして、アチラ側が受話器をとる。『もしもし、もしも…』

2016-01-23 23:46:05
安倍川みやが@大阪6魂 @umee9632

しばらく相手の様子を伺うも反応はなし。十姉妹は隣で「えーと、えーと」とぐるぐる願い事を考えていた。そして「猫缶がたっくさんほしいです!」 十姉妹が口にすると、受話器から チーンと音がした。「かしこまりました」 通話が切れた。「十姉妹?」

2016-01-23 23:49:21
安倍川みやが@大阪6魂 @umee9632

「兄さん、外外」扉をあけて見るとそこには気持ち悪いほどの猫缶が積み上げられていた。唖然。「ね?」立ち尽くしていると、十姉妹は僕の手にさっきまで握っていたテレフォンカードをおしつけた。「これ、残りは壱松兄さんの分。…あと3回だって。使っていこう!」「いきなりじゃ思いつかないって」

2016-01-23 23:51:00
安倍川みやが@大阪6魂 @umee9632

「簡単だよ。壱松兄さんがほんとにほしいものとか、叶えたいことをいえばいいんだよ」十四松はうんしょうんしょと俺の背中をおして無理やり電話ボックスに押し込んだ。「だってなんでも叶うんだから!」なんでも…ね…。「わかったから。…その、近くにいられると恥ずかしいんだけど」

2016-01-23 23:51:45
安倍川みやが@大阪6魂 @umee9632

十四松は察したようなそうでないような笑顔で笑うととびらをしめる。びっくりした。仕方なしに僕はテレフォンカードを差し込んだ。さっきと同じ会話が流れる。『もしもし、もしも』願い事は――

2016-01-23 23:52:36
安倍川みやが@大阪6魂 @umee9632

「で、壱松兄さん何お願いしたんすか?」「今日の晩ごはん、牛肉入りのカレー、辛口にしてくれって」「っかー!兄さんさすが!」そう言いながら歩く帰り道、スン、とスパイスの匂いが鼻に抜けた。まさか。「ほら!今日はカレー!」十姉妹がくるりと回ってまた笑っている。「ま、まじかー」

2016-01-23 23:55:05
安倍川みやが@大阪6魂 @umee9632

玄関をあけると分かりやすいほどカレーの匂いが広がっていた。本当に願いが叶うなんて思ってなかった。いやまあ十姉妹の願いごとが叶うところは確かに見ていたけれど、だって、疑うのが普通じゃないですか。でも根回しなんてできるわけもないし、これは現実。じゃあ、もう一個頼んだやつは。「壱松!」

2016-01-23 23:57:47
安倍川みやが@大阪6魂 @umee9632

やばい。僕の中でワンワンと「いますぐここから逃げろ」と命令が飛び交うも、それを阻止したのがこの馬鹿である。「帰ってきてたんだな壱松。その……話したいことがあるんだ。いいか?」よくない、と言い返す前に次男唐松は僕の腕を掴んで外へと向かう。「おい、クソ松!」「すまん、少しでいいから」

2016-01-24 00:01:56
安倍川みやが@大阪6魂 @umee9632

精一杯抵抗するも、僕の骨でも折る気なのかというくらいの力でつかみ、ひっぱる。勘弁してくれ、願い事が叶うなんて思ってなかったんだ。怖い、無理だって。目に涙を浮かべるももう遅い。唐松は僕の腰に手を回してくる。血の気が引く。「嫌だっつってんだろ!」「いいから話を聞け」

2016-01-24 00:04:59
安倍川みやが@大阪6魂 @umee9632

いつもなら向けられるはずのない切羽詰まった、そして赤らめた顔で唐松は言った。「好きなんだ、壱松」そう、僕がさっきもう一つだけと願ったこと、それは「唐松が僕と同じくらい、僕を好きになってくれたら」ということである。この馬鹿はまんまと、僕の願いなんかに応えやがったのだ。

2016-01-24 00:07:20
安倍川みやが@大阪6魂 @umee9632

唐松の赤い顔とは正反対で、きっと僕は顔面蒼白だったろう。「壱松、その、返事がほしいんだが」返事も糞もあるか、お前が好きに決まってるだろう!そう言いたい。けれどこれはさっき僕がテレフォンカードなんか使って勝手に願ったことで、こいつにそんな気持なんか無い。「冗談だろ、気持ち悪い」

2016-01-24 00:10:43
安倍川みやが@大阪6魂 @umee9632

言いたくもない言葉を、唐松になんとかぶつけた時、母さんの「ニートたちご飯よ~!」というのんきな声が響いた。もう今しか逃げられない。「そういうことだから」と僕は駆け足で居間へ向かった。受け入れてはならない、受け入れてはならない、これは全部ウソだ。そう言い聞かせて。

2016-01-24 00:13:46
安倍川みやが@大阪6魂 @umee9632

目の前に並んだのは、いつもじゃありえないほど大量の牛肉が入ったカレーだった。「なに、今日肉の安売りでもあったの?」「違うのよチョ口松。お隣さんがわけてくれたの」「ええー!すっげー!肉!!」「なんでもお客様が来る予定だったのが急にキャンセルになったらしくて、食べきれないらしいの」

2016-01-24 00:17:26
安倍川みやが@大阪6魂 @umee9632

どう考えても無茶だ、と僕は思った。僕が願わなければ、隣の家では今頃大層豪華な肉料理が並んでいたことだろう。でもまあ、肉に罪はないし。問題はこの馬鹿だ、さっきからずっと僕の様子をちらちらと伺っている。バレてるんだよ怖いんだよ。

2016-01-24 00:18:55
安倍川みやが@大阪6魂 @umee9632

分かりやすいようにこっちも力いっぱい睨み返してやると唐松は笑った。おいや、何で笑ってんの。遅松兄さんもチョ口松兄さんもなんとかいってくれ、と視線をそっちに飛ばすも奴らは肉に夢中で気づきもしない。こういう時だけ使えねえんだよ!僕は念願の肉多めのカレーを軽くかきこみ「ごちそうさま」

2016-01-24 00:21:17
安倍川みやが@大阪6魂 @umee9632

そのまま居間から逃げる。後ろから「あっ!」という唐松の声がしたがそんなのに構っていられない。どうしよう、このままじゃ唐松に告白され続けるかもしれない。カレーを食べて滲んだ汗がじわじわと冷や汗に変わっていく。今日、夜に、電話ボックスへ、行こう。全部なかったことに、して、もらわないと

2016-01-24 00:22:56
安倍川みやが@大阪6魂 @umee9632

唐松から逃げるなんて今までやって来なかった行動に疲れながらも、ようやく夜。今日だけは唐松の隣で寝たくないのだと遅松兄さんに頼むと、ふうんと笑われた。なんだこいつと思ったが、もうなんでもいい、とりあえず今日は逃げたい。「お願いだよ遅松兄さん」「お前頼む時に睨むのやめろよ。」

2016-01-24 00:25:42
安倍川みやが@大阪6魂 @umee9632

じゃあこうすればいいのかと甘えた声でねだったら、気持ち悪!と背中を頼まれた。畜生笑いやがって、こっちは人生かかってんだよ。もうプライドとかどうでもよかったので土下座もつけたら若干引かれた。「喧嘩とかいつものことじゃん。はいはい、いーよ。好きにして?」

2016-01-24 00:30:10
安倍川みやが@大阪6魂 @umee9632

そう遅松兄さんが許可をくれた時、誰かの手が肩に乗った。「壱松さっきは悪かった」ばっと後ろを振り向くとそこにいたのはやっぱり唐松だった。「何、が」「あらら、お前らやっぱ喧嘩してたんだ」「そうなんだ兄貴。でも俺が悪かったし、寝る前に謝っておこうとおもって、なあブラザー」「気持ち悪」

2016-01-24 00:33:34
安倍川みやが@大阪6魂 @umee9632

「つれないな。けどこれでもう仲直りさ。なあ遅松兄さん」肩に手をおかれていただけだったのに、気づけば肩を組む形になっている。「うわっ!なにその仲良しアピール。怖っ!いや気持ち悪いからね」後ろからやってきたチョ口松兄さんが会話に入ってくる。完全に兄達、唐松のペースである。

2016-01-24 00:38:51
安倍川みやが@大阪6魂 @umee9632

結果、手に入れたはずの寝場所は遅松兄さんのところへ戻り、僕はいつもどおり唐松の隣。「じゃあ消すよ」椴松が明かりを消す。シンと静まり返った空間。後は眠りにつくだけ、いつもならそういう空気なのに、今日は、これから唐松に何を言われるのかという恐怖でそれどころではない

2016-01-24 00:42:39