ニンジャスレイヤー二次創作【ソロウ・オブ・ザ・スティーラー・オブ・ソウルズ】#2後半まとめ

ニンジャスレイヤー×エルリック!
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篠原天佑。 @shinohara0714

◆テキストカラテメント行為◆ニンジャスレイヤー二次創作◆しよう◆

2016-01-25 21:08:28
篠原天佑。 @shinohara0714

【 ソロウ・オブ・ザ・スティーラー・オブ・ソウルズ 】#2(後半)

2016-01-25 21:08:55
篠原天佑。 @shinohara0714

〈廃墟の公子〉は未だニンジャスレイヤーに胡乱な視線を投げ続けていた。腰の長大な魔剣は、時折女がすすり泣く様なか細い声をあげており、白子の指がその柄を無意識にまさぐり、愛おしむ様に愛撫していた。ニンジャスレイヤーには、魔剣が己とナラクの動静を油断なく観察しているように思われた。54

2016-01-25 21:12:13
篠原天佑。 @shinohara0714

メルニボネ人は真の意味においての人類とは異なる存在であり、その血管には太古から連綿と受け継がれる不浄の血が流れている。メルニボネ人は性酷薄、頽廃的かつ淫靡にして、忘れられた神秘を守護する古き邪悪な種族であり、先天か後天かの違いこそあれ、その意味で彼ら二人は同類と云えた。55

2016-01-25 21:14:32
篠原天佑。 @shinohara0714

「お互いに、少々状況を把握する必要があるようだな」篝火を背に、右目にレーザーポインタめいた赤光を灯しながら、ニンジャスレイヤーは強いてナラクを抑えつけ、白子に対しそう提案した。「私はニンジャスレイヤーだ。援軍の話など聞いておらぬ。私はさる者から”〈白い狼〉を探せ”と頼まれた」56

2016-01-25 21:16:39
篠原天佑。 @shinohara0714

「成る程、確かに私はそう呼ばれたこともある。あまたある忌まわしい異名のひとつにすぎないが」白子は陰鬱に呟いた。「さる者とは何者だ。〈新王国〉の者か」白子の問いをニンジャスレイヤーは撥ね付けた。「私がひとつ答えたのだ。次はオヌシが答える番だ」問いはつねに一度にひとつ。57

2016-01-25 21:18:49
篠原天佑。 @shinohara0714

ひとつ問えば次はひとつ答えねばならぬ。古事記にもそう記されている。「よかろう。メルニボネ王族が吝嗇の謗りを受ける訳にもいかぬ」白子の唇が皮肉に歪んだ。「以前旅した次元で、マブデンの王侯に似たような旧習があると聞いた。貴公らの種族は、メルニボネ人よりは蛮族に近いようだな」58

2016-01-25 21:20:51
篠原天佑。 @shinohara0714

白子の見識は、ニンジャスレイヤーとは異なり、自らの故郷だけでなく多重次元の隅々にまで及ぶようであった。交渉の相手としては手ごわいが、さりとて退くわけにもいかぬ。彼の目的はこの白子なのだ。「オヌシが〈白い狼〉ならば、〈合〉とやらに心当たりはあるか。〈百万世界の合〉とやらに」59

2016-01-25 21:23:04
篠原天佑。 @shinohara0714

「……貴公が〈合〉の何を知る、ニンジャスレイヤーどの」白子の目がすがめられると、その瞳に地獄の炎が揺らめいた。「かつて私は〈この世の彼方の海〉を旅した折、図らずも〈合〉を私せんとする魔術師の兄妹と戦い、滅ぼしたことがある。私一人の力ではないが」白子の瞳には畏れがあった。60

2016-01-25 21:25:43
篠原天佑。 @shinohara0714

白子は、思い出したくもない事実をそれでも思い出さねばならぬとき誰もがそうするように、それを思い出させようとする者に向かって底冷えする様な敵意を放射した――――つまりはニンジャスレイヤーに対して。「だが〈百万世界の合〉は既に成された。そして私は、それほど多くを知る訳ではない」61

2016-01-25 21:28:19
篠原天佑。 @shinohara0714

「私が知るのは、〈合〉が多元宇宙の運命を定める特異点であったという事実のみだ」エルリックの声は厳しかった。「〈合〉に私的介入を試み成功するものがあれば、そのものはおそらく、多元宇宙のすべての現実を改変し破壊し尽くす力を手に入れる。私が知る〈合〉とはそうしたものであった」62

2016-01-25 21:30:56
篠原天佑。 @shinohara0714

「では、オヌシにとって〈合〉とは過去の出来事であるということか」ニンジャスレイヤーが尋ねると、〈廃墟の公子〉は口端を皮肉に歪めた。「それだ、ニンジャスレイヤーどの」言外に〈問い返し〉の返礼を要求する。「貴公はいかにして〈合〉を知った?あの船長か、それとも他の〈四者〉からか」63

2016-01-25 21:33:22
篠原天佑。 @shinohara0714

「バーバヤガと名乗る年老いた女だ。おそらくオヌシの次元の住人ではあるまい」ニンジャスレイヤーは短く、むしろ短すぎるともとれる答えを返した。「答えになっておらぬようだぞ、ニンジャスレイヤーどの」冷笑を帯びたメルニボネ皇帝の挑発的な言葉にナラクが応じ、再びメンポが軋み始める。64

2016-01-25 21:35:54
篠原天佑。 @shinohara0714

ニンジャスレイヤーは、骨のような白い指が、ゆるゆると、だが明確な意志のもと黒い大剣の柄にかかるのを油断なく見守った。「説明しても理解できまい。その者については、私とて何も知らぬに等しいのだ」脈打つ黒い剣が、淫らがましい声でぞっとする様な官能的な歌を歌い始めた。白子は微笑した。65

2016-01-25 21:37:59
篠原天佑。 @shinohara0714

「推察するに、最初から踏み倒す気でいたというところか」いまやエルリックの表情は愉しげですらあった。地獄の炎の如き真紅の瞳と、センコめいて収縮した赤い瞳が交錯した。「メルニボネ皇統に連なるものが、詐欺師や盗人のともがらをどのように遇するのか知りたくはないか、ニンジャどの?」66

2016-01-25 21:40:14
篠原天佑。 @shinohara0714

「続きは食事をしながらにしませぬか、エルリック皇子」溜め息を吐きながら女伯爵が辛抱強い表情で割って入ったのはそのときだった。「ニンジャスレイヤーどのも。おふたりは妾の客人じゃ。妾は客人が相争うのを好かぬ」女伯爵の声は些か自制が利き過ぎており、男たちに我慢強い母親を連想させた。67

2016-01-25 21:42:48
篠原天佑。 @shinohara0714

女伯爵の言葉を待っていたかのように、色とりどりの衣を纏い楽しげに笑う娘たちが現れた。娘たちは手に手に大皿の料理を抱え、毒気を抜かれた態で立ち尽くす白子とニンジャを後目に次々と天幕に料理を運び込んでゆく。香草と羊肉を入れたシチューの大鍋が、呆気に取られる男らの鼻先を通り過ぎた。68

2016-01-25 21:45:40
篠原天佑。 @shinohara0714

ある娘は骨付きの大きなハムの大皿を。別の娘は野生のベリーのソースをかけ香草を添えた仔羊のローストを。大量のヴィルミール海塩で蒸し焼きにした巨大なハタ。生の馬肉を潰し刻んだエルワー風ステーキ。即席の石窯で焼いた何種類ものパン。そして未知なる東方諸国の見知らぬ銘柄の葡萄酒の数々。69

2016-01-25 21:47:41
篠原天佑。 @shinohara0714

「殿さまがた。争いごとは結構でございますが、まずはお腹を満たしてからになさったらいかが?」70

2016-01-25 21:49:11
篠原天佑。 @shinohara0714

花がこぼれ落ちるように微笑する娘の一人にそう告げられて、ニンジャ殺戮者と〈廃墟の公子〉は思わず顔を見合わせた。別の娘に剣帯から外した黄金の柄の長剣を預けた女伯爵は、肩をいからせ、腕を組んで二人の顔を順番に見渡し口を開く。「さて、まだ続けるかえ、お客人?」71

2016-01-25 21:50:34
篠原天佑。 @shinohara0714

ニンジャスレイヤーは、白子の真紅の瞳から視線を外すと首を振った。「もとより、ニンジャにあらざる者との争いは私も望まぬ」ナラクが不満げに何事か呟きながらニューロンの奥底に沈んでゆくのを感じたが、フジキドはそれを無視してメンポを外す。「シツレイした。謹んで歓待をお受けする」72

2016-01-25 21:52:53
篠原天佑。 @shinohara0714

エルリックは、ニンジャ殺戮者のレーザーポインタめいた赤光を放つ瞳から目を逸らし、魔剣の柄から腕を外した。「私はけっして聞き分けのよいほうではないが、マダム」不満げに低く唸る魔剣を殊更に無視し、肩を竦めて「さりとてニムルサズの美味にはいたく魅了されている。承知した、伯爵どの」73

2016-01-25 21:54:58
篠原天佑。 @shinohara0714

「よろしい」女伯爵が破顔した。途端に花が綻ぶさまに似て周囲に黄金の光が満ちるような錯覚に囚われ、フジキドは僅かに目を見開く。「ではご賞味あれ。ニムルサズの美味珍味は、戦中なりとていささかも変わらぬゆえ」それからはじめて女伯爵は、鷹揚に頷くと天幕に二人を招き入れたのであった。74

2016-01-25 21:57:13
篠原天佑。 @shinohara0714

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2016-01-25 21:57:48
篠原天佑。 @shinohara0714

オルスト・トレイシェスは、古ロルミール語で〈日没の城砦〉を意味する、かつては緑なす美しい谷間にしめやかに佇む〈南方大陸〉じゅうに名高い優美な城館であった。砦の主人は〈天秤〉に誓いを立てたとある騎士であったが、ある夜、中立者を憎む〈混沌〉が谷に雪崩れ込み、砦を破壊した。76

2016-01-25 22:00:02