10周年のSPコンテンツ!
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Ninja Slayer / ニンジャスレイヤー @NJSLYR
(これまでのあらすじ:ネオサイタマ知事としてのアクセス権を手にしたアガメムノンは、カスミガセキ・ジグラット内の旧世紀UNIXシステムを月面サーバーのシステム・アルゴスと接続。世界征服に向けて、忘れ去られし磁気嵐制御システムを起動した)
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(磁気嵐の消失に伴い、オヒガンとIRCの境界が不安定化。空には黄金立方体が出現し、市民の間でも01エーテル風が目撃されるようになった。戸惑う人々にアマクダリ政府は安全を宣言。警察機構ハイデッカーによる治安維持、監視行為を強めた)
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(逮捕権と限定的な即時裁判権を持つハイデッカーは反抗的市民・反抗可能性市民を次々に検挙するとともに、コトダマ空間認識者達を保護名目で連行。強制収容所「アケガ・ターミナル」へ送り込んだ。だが市民の中には、希望を捨てず、これに抗う者たちも僅かに存在した……)
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ニンジャスレイヤー 第三部「不滅のニンジャソウル」より:【デイドリーム・ネイション】#1
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010010101……可能性がある』『確かにアケガ・ターミナルは……しかし、今はまだ』『今はまだその時ではない』『その通り……今はまだ。鷲の翼が開く、その時まで』01001010010011
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新幹線ゲートを越えて降り立った青年は、キョートと違うネオサイタマの空気の匂いを感じ、行き交う人々へ、興味深げに視線を投げた。「こっちだよ!クロマ=サン」声をかけたのは、同じくらいの年頃のサラリマン青年である。クロマは表情を輝かせた。「ドーモ、チカマツ=サン。出迎えありがとう」1
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「どうした?変な顔して。ショーユの匂いが違うか?」チカマツが笑いかけた。クロマは空気を嗅ぐ真似をした。「わかるような、わからないような」「そんなもんさ。……もっと早く来ても良かったのに」「そうはいっても、なかなかな」クロマは冗談めかして、「税関で逮捕されるかも知れないしな!」 2
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「……」チカマツは笑わず、表情を曇らせた。クロマは瞬きした。「どうした」「よせ。そういうのは」チカマツは囁いた。わからぬながらクロマは曖昧に頷き、チカマツについて駅構内を歩いた。戦争が集結し、新幹線が再び運行を開始してから、だいぶ経つ。それでもキョート人は警戒されるのだろうか。3
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チカマツはそれ以上説明しなかったが、すぐに実際の理由がわかった。一糸乱れぬ動きで巡回する白い揃いの制服の男達が視界に入ると、構内のネオサイタマの人間はみな表情を硬くし、視線をそらせたからだ。キョート人がどうという問題ではなさそうだった。「あれか?」「難癖つけられると面倒なのさ」4
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「へえ」「まあ、お前がヤク中や犯罪者でもない限り安心さ」チカマツは肩をすくめた。「善良な市民の味方だよ」「ハイデッカーってやつか」「詳しいじゃないか」「「オツカレサマデス!キョートの方」」制服の男達はクロマとすれ違う際、一斉にアイサツした。「あ……ドーモ」「「よい旅を!」」5
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駅から市街に出た二人のコートが風に揺れた。0と1で構成された風の粒子を、クロマは目で追った。「キョートでは吹かない?」チカマツが尋ねる。「いいや、同じさ」「そうかァ」チカマツは夕方の空を見た。空には黄金の立方体が浮かび、ゆっくりと自転している。「あれも?」「ああ。同じさ」 6
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「夢~、俺達の~」「カワイイ~」駅前のロータリー、ビワを抱えた男とコンガを叩く女のストリート・ミュージシャン・デュオが希望を歌い、屋台ではイカケバブの良い匂い。バスが止まり、人が吐き出され、人が乗り込む。「タクシー、使おう」チカマツが言った。「疲れたろ」「ありがとう」 7
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10月10日は誰にとっても大変な一日だった。様々なニュースが飛び交い、官房長官が暗殺され、凶悪犯罪者フジキド・ケンジの動向に震え、情報の濁流に翻弄され、空には黄金の立方体が浮かび、奇妙な風が吹いた。市民はパニックに陥った。 8
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イッキ・ウチコワシは混乱に乗じようと、無差別な破壊放火活動を開始した。組織を束ねるリーダーが放逐されたと、まことしやかに囁かれた。様々なカルティストが世界の破滅を叫び、根拠不明の噂がネットワーク上を駆け巡った。 9
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曰く、「キョート・ネオサイタマ戦争により地磁気が狂った為」「この天変地異は宇宙人侵略の予兆」「この世は実は電子ネットワーク仮想現実」「この世は実は死の間際に見るソーマト・リコール現象」「地底人が復活しようとしている」「アメリカ大陸の……」この数百倍の荒唐無稽な説が飛び交った。10
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つまり、皆、根拠もなく、ただ思いついたことを吟味もせずに垂れ流していた。価値ある情報は埋もれ、ネットワーク・トラフィックは危機に陥り、イッキ・ウチコワシは人々を殺戮した。現実的な問題がネオサイタマを覆い始めていた。最終的にそれを平定したのは、知事代行シバタ・ソウジロウである。11
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混乱が収まるまで、一週間から十日ほど要した。凶悪犯罪者フジキドの噂も薄れていった。情報の渦が10月10日のショックを押し流していった……。「五万円~、それから先の秘密教えてあげる~」駅前大型液晶ビジョン、ソロデビューしたオイランドロイド・アイドル「カワイイコ」が踊っている。12
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共に歌っていたネコチャンが音楽性の違いにより脱退し、一般オイランドロイドへの復帰メッセージを残して去った事を、カワイイコとファンは悲しんだ。液晶ビジョンから流れる歌はカワイイコのソロデビュー曲、「ほとんど違法行為、それから」だ。クロマは感傷的なメロディに聴き入った。 13
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タクシーを待つ列は長かったが、人々は奥ゆかしく待機していた。整然としたキョートとはまるで違うケオスの都ネオサイタマであったが、こうした時の美徳は同じだ。やがてクロマ達の番が来た。ドアがひとりでに開き、二人は後部座席に乗り込んだ。「どちらまで」「センベイ」「ハイヨロコンデー」14
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「積もる話もあるけどさ」ようやくチカマツは緊張を解いた様子で、シートに深くもたれた。「まずは無事でよかったよ、お互い」「そうだな」キョートもネオサイタマ同様に、色々な事があったのだ。特に理由なく、二人は握手した。……その時だ。タクシーが急停止した。「アイエッ?」「どうした?」15
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「スミマセン」初老のタクシー運転手は済まなそうに防犯モニタ越しに詫びた。「前方で検問が……」確かに、白い制服の男がボンボリ・バーを振っている。「検問はネオサイタマじゃよくあるのかい?」クロマは先程のハイデッカーの事を思い出しながらチカマツを見た。チカマツは震えていた。脂汗。 16
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「どうした?」「いや……そんな」「なに?」「おじさん」チカマツは運転手に言った。「ここでいいや。降りるよ」「ここで?」クロマは訝しんだ。チカマツは顔をしかめた。「ここでなんて……抜き打ちかよ……おい!カネそこに置いたよ!」「開けませんよ」と運転手。「犯罪者じゃないですか?」17
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「違……何言ってんだよ!訴えるぞッコラー!」チカマツは逆上した。「お、俺はそんなじゃねえ!」タクシーの前と後ろは防壁で隔てられ、冷たい。「通報は市民の義務ですし……無実なら大丈夫じゃないですか」運転手は言った。そしてクラクションを鳴らした。ブーッ!ブーッ!ブーッ!18
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検問ポイントからハイデッカー数人がタクシーに走ってきた。運転手はドアを開けた。「このお客、なんかおかしいです」「ご協力感謝致します」ハイデッカーはオジギした。サイバーサングラスにより、その表情はうかがい知れない。「降りて頂けますか、乗客のお二人」「やめてくれ」「アッコラー!」19
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