「言葉を組む」病理医

診断の報告書を記載する時、病理医が考えていることに関して、病理専門医ヤンデル先生がツイートをしてくれています。
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病理医ヤンデル @Dr_yandel

釧路に到着してすでにはたらいているが今日も仕事がけっこう多い 来月の「釧路胃と腸を診る会」でも病理の解説をしますのでその準備もしておきます。 今日はツイッタランドあんまりでてきません

2016-02-05 12:02:54
病理医ヤンデル @Dr_yandel

今ちょっと8年半くらい前のことを思い出していたんですけど、ぼくは尿路上皮(ぼうこうとか尿管などにある細胞)の細胞異型(がんか、がんじゃなさそうかを決める細胞の「悪さ」)をみるのが昔すごく苦手だったんですよね。大腸とか胃の異型はわかるけど、尿路上皮の異型がいまいちわからなかった

2016-02-05 12:04:37
病理医ヤンデル @Dr_yandel

けど、当時「わかる」と思ってた胃や大腸の細胞異型も、今になって思うと「本当にわかってたって言えるか……?」って思います。いっぽうで尿路上皮はあるときから急に「おっ、これはすぐわかるやつだ」「これは難しい(ってわかってる)やつだ」と区別がつくようになりました。

2016-02-05 12:05:29
病理医ヤンデル @Dr_yandel

病理医のやってる「細胞の悪さを目でみて決める」ってのはかなりの特殊技能で、臨床情報がどうであっても顕微鏡だけで戦わなければいけない瞬間がありますし、この技能があるから飯を食えてるところもあるんですけど、今でも何が正解かわからない瞬間がまれにやってきます。今日はまだ来てないけど

2016-02-05 12:06:13
病理医ヤンデル @Dr_yandel

細胞異型というのは、「長考すればいずれわかる」という類のものでもなくて、ほんとうに「1秒もかからずに」見分けがつく世界ではあるんですけど、ときおり文字通り何時間も何日も悩むケースに遭遇します。これは、「長くみているうちに見えてくるから」というものではない。

2016-02-05 12:07:47
病理医ヤンデル @Dr_yandel

「良性か悪性かわからないとき」にも、病理医としてどっちかに診断を決めに行く、あるいは「これはわからない」と書くという「絶対の決断」をしなければいけません。「わからない」という言葉にも絶対性が求められるんです。「病理医がわからないというからにはわからないんだ」という意味での「絶対」

2016-02-05 12:09:09
病理医ヤンデル @Dr_yandel

「なんとなくそうおもった」と報告書に書くわけにはいかない。「根拠を誰にでも伝わるように書く」んですけど、これが時間がかかる。理論と言葉を引き出して、かたちにするのに何時間も何日も積み重ねる。ぼくにとって「時間がかかる病理診断」というのは「考えて文章にするのに時間がかかる」ものです

2016-02-05 12:10:10
病理医ヤンデル @Dr_yandel

自施設で毎日行っている病理診断ですが、顕微鏡を見ている時間はあまり長くありません。それこそ「Twitterを間にはさみながら」働いていますが、実は勤務時間は長い。これは、「細胞所見を見たあとに言葉を組む」のに時間をかけているということでもあります

2016-02-05 12:11:01
病理医ヤンデル @Dr_yandel

いっぽうで今日のような「出張先」では、到着日の午後と翌午前中しか働きません。いつもに比べ「診断の根拠を並べる時間が少ない」。これは緊張感があります。文章が完成しない時には、次の医師に対して「書ききれない。なぜならここでこう迷っているからだ」と、「申し送り」をしなければいけません。

2016-02-05 12:12:35
病理医ヤンデル @Dr_yandel

「患者とコミュニケーション直接とらなくていい仕事」というのは一面の真実ですが、「直接口頭で対話できないときにもっとも重要なものを書いて残さなければいけない」仕事というのはそれなりの滋味を含んでいるよなと思っています。では仕事します

2016-02-05 12:14:26