読書と感想

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竹本健治 @takemootoo

涙香資料の一環として読んだ山田風太郎「明治バベルの塔」はかなり凝った暗号物で面白かった。あとがきや別のインタビューでも「暗号を作るのが面白かった」と述懐しているので、得意ジャンルかと思ったが、どうやら暗号物はそれほど多くなさそう。

2013-06-20 13:45:34
竹本健治 @takemootoo

シンポ教授からお借りした資料群にひと通り眼を通して、涙香のおおまかな経歴や人物像はつかめたが、いちばん知りたい2点に関してはほとんどふれられていなかったな。三好徹『まむしの周六』はジャーナリズムとは何かの視点を貫きつつ、時代との相関をも生き生きと描き出した好著。

2013-06-20 14:19:50
竹本健治 @takemootoo

『点と線』における論理的な穴は昔から言われていたが、『虚無への供物』にも小さくない穴があって、もう40年も前に相互フォロアーの某さんから「蛍光灯がじーっ、ぽっ、じーっ、ぽっ、となるのは管自体の老朽化のせいで、グローが古くなってもそうはならない」というのを教えられた。

2013-06-27 00:37:46
竹本健治 @takemootoo

『黒死館殺人事件』はどんな無茶な穴が山のようにあっても許されるという、およそミステリ作家にとって夢のような理想空間だが、そんな空間を構築できるのは小栗くらいしかいない。  …いや、まあ、流水君ガイタカ。

2013-06-27 01:08:52
竹本健治 @takemootoo

バタイユの『マダム・エドワルダ』(「死者」「眼球譚」等収録)読了。高校の頃に『昼顔』や『ファニー・ヒル』を読んで、この手の<使えない>エロティシズム文学というのは何て退屈なんだろうと思った。サドや『ヤプー』ですらそうだが、愚輪的要素が強ければ強いほど、別の部分で愉しめる。

2013-07-03 17:42:26
竹本健治 @takemootoo

今まで出会った<使える>小説のなかで<この一作>をあげるなら、「小説悦楽号」に掲載された高伴作の中篇「強姦願望」。「某博士が蒐集した膨大な数の性に関する実話をドキュメントふうに書き改めたもの」というふれこみの<高資料>シリーズ中の一篇だが、実際はすべて完全な創作だろうと思う。

2013-07-03 18:56:32
竹本健治 @takemootoo

高伴作の正体は純文方面出身の龍胆寺雄であることもほぼ明らかになっている。龍胆寺は菊池寛や川端康成が弟子たちに代作をさせていることを暴露・批判して文壇を追放された人物。<高資料>の小説群にはいくつかのパターンがあり、「強姦願望」は愛妻を性豪の知人に委ねる<寝取らせ>系列の作品。

2013-07-03 19:12:46
竹本健治 @takemootoo

<高資料>には、そのほか「女中を手篭めにする」「性技能に優れた悪魔的な美少年」「奇妙な性風俗に巻き込まれる」といった明瞭なパターンがある。多くのエロ作家は得意なパターンにどんどん収束していくものだが、複数のパターンをそれぞれ書き続けていたところが興味深い。

2013-07-03 19:38:27
竹本健治 @takemootoo

@nearnia 有難うございます。今後ともご贔屓に~。とりあえず団鬼六の『真剣師 小池重明』は激しくお奨め。

2013-07-03 21:08:33
竹本健治 @takemootoo

バタイユ読了のツイート、「愚輪的要素」って何だ。「寓話的要素」の間違い。

2013-07-04 15:29:45
竹本健治 @takemootoo

草森紳一さんにお会いしたとき、「小説を書かれるおつもりはないんですか」と尋ねたところ、「変格探偵小説なら書いてみたい気持ちはある」とのお言葉に、「そ、それは是非!」とお願いしたのだが、果たされずに終わって物凄く残念だった。

2013-08-14 13:07:49
竹本健治 @takemootoo

Y先輩の囲碁会で巻幡多栄子プロに3子で勝ち。やっほー。で、その囲碁会の会員である住谷春也さんて、ルーマニア文学研究の第一人者で、エリアーデの翻訳などもされている方だったと知り、びっくり。「『囲碁殺人事件』の初版を見つけたので」と、サインも頼まれて恐縮。

2013-08-23 21:48:00
竹本健治 @takemootoo

煙草小説といえば石川淳の「鷹」、そして三島由紀夫の「仲間」。どちらも幻想小説・寓意小説として逸品。

2013-08-26 21:10:09
竹本健治 @takemootoo

@kliocity 「黒死館殺人事件的絵葉書集」無事に届きました。こんな貴重な資料を(しかもこんな廉価で!)手元で眺められる嬉しさ。美術館で買う絵葉書は決して使用しないのが常ですが、またその一群がふえましたw 有難うございました。

2013-09-04 23:24:03
竹本健治 @takemootoo

皆川博子『蝶』読了。様ざまな詩や俳句を織りこんだ短編集。冒頭の「空の色さえ」から、もういきなりとんでもない。この人はやっぱり魔女だ。全8篇の色とりどりの変奏のなかで、とりわけ「龍騎兵(ドラゴネール)は近づけり」の、小景ながらこの世の最もおぞましいものが凝集されたような悪夢は圧巻。

2013-09-18 23:39:12
竹本健治 @takemootoo

皆川さんの悪夢は全くこれ見よがしではない。それどころか、読者のほうを向いてすらいない。

2013-09-19 01:12:01
竹本健治 @takemootoo

友人の乾君に「ボヤボヤした話を読みたい」と言ったら、「これが相当ボヤボヤしている」と貸してくれたカズオ・イシグロの『充たされざる者』を読書中。う~ん、確かにこれはめっさボヤボヤしている。

2013-09-28 20:18:01
竹本健治 @takemootoo

ちなみにこの「ボヤボヤ」というのは僕とシンポ教授と乾君のあいだだけで言い交わされている、乱歩世界に特有のアトモスファーを表現した言葉。

2013-09-28 20:45:33
竹本健治 @takemootoo

カズオ・イシグロの『充たされざる者』読了。ひと言でいえばボヤボヤしたカフカか。朦朧とした夢のような世界でありながら、残る印象はどえらい線の太さ。参りましたの大傑作。

2013-10-16 18:38:24
竹本健治 @takemootoo

連城さんとの馬鹿話から生まれた<トリック芸者>を僕が書くことになったとき、花柳界のことを知るにはどうしたらいいか尋ねると、有吉佐和子の『芝桜』を読めと即答が返ってきた。流石と思った。

2013-10-22 15:07:37
竹本健治 @takemootoo

新井素子さんの新刊『イン・ザ・ヘブン』読了。33年ぶりの短編集だとか。以前、新井さんの「私は小説を書くとき映像を思い浮かべたことがない」という言葉にびっくりしたのだが、今回読んでかなり納得。というか、新井さんのお話って物凄ーくロジカル! 発想が思考実験なんだね。苦闘ぶりが愉しい。

2013-11-12 22:28:27
竹本健治 @takemootoo

@mundburg 一種、サドや『家畜人ヤプー』にも通底する論理の徹底性という点で、極めて貴重な資質と思います。しかもそれがあの文体とごく自然に融和しているというのが。

2013-11-12 22:46:48
竹本健治 @takemootoo

最前、「苦闘ぶりが愉しい」と書いたが、もちろん作者自身がその苦闘を誰よりも愉しんでいる。ともすればこの種のロジック小説が「理に落ち」感に終わりがちなところを回避する手腕も多彩かつ巧妙。そして恐いくらいアクロバティックなことを平気でやっちゃう度胸。>新井素子『イン・ザ・ヘブン』

2013-11-12 23:07:56
竹本健治 @takemootoo

新保さんの文章に毎回僕が挿絵をつけてた連載コラム「東京23面相」掲載の信濃毎日新聞夕刊が出てきた。どの絵も自分でびっくりするほど全然憶えてない。

2013-11-21 15:54:29
竹本健治 @takemootoo

転居の準備のため、カミさんの実家へ。ご近所数軒に挨拶まわりに行ったところ、その日に近くのお婆さんが小規模な山火事で焼死されたと聞き、ぎょっ。ちょっと『屍鬼』を連想したり。

2014-01-23 02:29:24
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