ボダブレ鎮守府【序章】

セーラー服とマシンカノン 夕張に「プランG、いわゆるピンチです」とか言わせたかったわけではない、多分・・・
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深海さかな @dzurablk_kai

「うわあ、あんなのぶっ込まれたくないなあ・・・」 強気に笑う川内も、流石に冷や汗が流れるのを止められない 「安心しなさい、すぐにイカせてあげるわよ」 「生憎、そういう趣味はないんでね」 川内はチェーンソーを仕舞い、冷却の終わったマシンカノンに持ち替える #ボダブレ鎮守府

2016-02-09 23:54:55
深海さかな @dzurablk_kai

「あっそう、まあいいけど どうせ私が勝つに決まってる」 「なら早く決着、つけようか」 両機のブースターが赤々と熱せられ、付近の雪を溶かしていく 「じゃあ・・・」 「・・・行くよ!!!」 声と共に二機の重量機体は、銀世界を蹴たてて一瞬で間合いを詰めた #ボダブレ鎮守府

2016-02-10 00:01:49
深海さかな @dzurablk_kai

夕張のパイクがケーファーの肩部アーマーをもぎ取る パイクは本来、薬室内の圧力を上げてから火薬の力で合金製の杭を対象に打ち付ける武装だが、夕張のラベージパイクは杭の重量が大きすぎるがために、チャージ無しの攻撃でも当たれば機能停止は免れない #ボダブレ鎮守府

2016-02-10 00:04:07
深海さかな @dzurablk_kai

すんでの所で凶刃ならぬ凶杭を交わし、川内はチェーンソーで夕張の機体を撫で切りにする だが、スペクターの随所に露出したフレームが刃を弾き、思うように攻撃が通らない 川内は機の勢いを殺さぬまま距離を取るも、今度はまた耳障りなロックオンアラート #ボダブレ鎮守府

2016-02-10 00:05:59
深海さかな @dzurablk_kai

そして、回避した隙に夕張のダイナソアから40 ミリ砲弾が叩き込まれ、耐久値がみるみる削られる じり貧以上に不味い状態 川内は咄嗟に、背後の自動扉から屋内に転がり込んだ 「逃げても無駄よ!!」 夕張はゆっくりとガトリングアイドリングしたまま、扉へとにじり寄った #ボダブレ鎮守府

2016-02-10 00:10:04
深海さかな @dzurablk_kai

夕張が自動扉を抜けると、そこに川内の姿は見当たらなかった 「尻尾を巻いて逃げたのかしら・・・」 今頃、川内のケーファーでは耐久値現象を警告するアラートが鳴っているはず 一時撤退したとしても無理はない 「あーもう、向こうには支援がいるし回復されると面倒ね・・・」 #ボダブレ鎮守府

2016-02-10 00:13:03
深海さかな @dzurablk_kai

だが、そんな夕張の油断を、川内が見逃す筈がなかった ブラスト一機が辛うじて通れるかという細い通路、その微かな間隙を縫って、夕張機の足元に砲弾が炸裂する 「何!?」 爆風で吹き飛ばされる夕張機を尻目に川内機は、スロープを伝って地下へと逃げる #ボダブレ鎮守府

2016-02-10 00:15:41
深海さかな @dzurablk_kai

「おのれ、逃がすか!!」 まだマシンカノン以外の砲弾を残していたとは少々以外だったが、所詮はイタチの最後っ屁 恐れるに足らない 夕張は重い機体を駆って、地下へと飛び込む 曲がり角から顔を出した途端に、すかさず目に飛び込む川内機の発砲炎 #ボダブレ鎮守府

2016-02-10 00:18:21
深海さかな @dzurablk_kai

口径からして、ロケットランチャーの類いだ 「甘いわね、どこに向かって撃ってるの!?」 距離があるうちに悠々と回避する夕張 だが信じられないことに、その砲弾は夕張機のを追うかのように、弾道を変える 「え!? なんで、ロックオンはされてないのに!!」 #ボダブレ鎮守府

2016-02-10 00:20:13
深海さかな @dzurablk_kai

すんでの所でかわした砲弾は背後の壁で爆発、夕張は今度は前に投げ出される 「あちゃー、外したかー やっぱり手動誘導は慣れないと無理だねー」 そう言う川内が手にしていたのはシーカーロケット 通常のロケットランチャーと変わらぬ形に反して、手動で弾頭を誘導できる装備だ #ボダブレ鎮守府

2016-02-10 00:22:37
深海さかな @dzurablk_kai

夕張のミサイルと異なり、ロックオンしないために敵に気付かれることもない 「ま、あらかた削れたかな これで互角ってとこ?」 ちらりとコックピットの左下、耐久ゲージを見ると、ケーファーに残された余力は残り2割程度 「・・・上等!!」 #ボダブレ鎮守府

2016-02-10 00:24:14
深海さかな @dzurablk_kai

川内は歯を食い縛ると、改めて夕張と対面 次の一撃で全てが決まる 夕張もそれに気付いたか、ガトリングからパイクに持ち替えた 居合のような緊張感が、吹雪に埋もれかけたトンネル内に、弓の弦ように張り詰める 両機、動かない その矢を解き放ったのは、思わぬ乱入者だった #ボダブレ鎮守府

2016-02-10 00:28:39
深海さかな @dzurablk_kai

「お姉ちゃん!」 「援護します!」 夕張の背後から飛び出したのは、妹たちのガルムとツェーブラだった 「危ない、下がれ!!」 夕張は今、ラベージパイクを装備している 中量機体や軽量機体では掠めただけで破壊を免れない装備相手に、神通と那珂が挑むのは無謀を通り越して #ボダブレ鎮守府

2016-02-10 00:30:56
深海さかな @dzurablk_kai

自殺行為 だが、夕張のスペクターは高機動な獲物を捉えられぬまま、拳を空虚に泳がせる 神通の刃が、那珂の散弾が、スペクターの装甲を撫で、機体を激しく揺らしていく 「・・・もはや、ここまでね」 夕張は機体の動きを止めるとひとつ、ため息をついた #ボダブレ鎮守府

2016-02-10 00:33:54
深海さかな @dzurablk_kai

「どうせやられるなら、あんた達も道連れよ!!!」 神通と那珂の目前で、それまでふわふわと地面近くを漂っていたスペクターが、ブースターを止めガクンと地に足をつける 異変に攻撃する手を休める二人の前で、動かなくなった機体は背中からあるものを頭上に伸ばす #ボダブレ鎮守府

2016-02-10 00:36:08
深海さかな @dzurablk_kai

「これは・・・!?」 「嘘でしょ・・・!!」 夕張が起動したのは、ギガノト榴弾砲 ブラストに構え動作を取らせた上で頭上に射出し、敵の頭上から砲弾の雨を降らせる戦略兵器だ とりわけギガノトは、単発限定で高威力を誇り、その爆発に巻き込まれればどんな機体でも大破する #ボダブレ鎮守府

2016-02-10 00:38:43
深海さかな @dzurablk_kai

「こんな所で榴弾を撃ったりしたら、あなたまで・・・」 夕張たちの四方は、壁と天井に覆われている そのため、頭上に射出された榴弾は即座に爆発することになるのだ 「そうよ、私の機体も自爆する でも・・・」 夕張の声音が裏返る #ボダブレ鎮守府

2016-02-10 00:40:37
深海さかな @dzurablk_kai

「この程度、想定の範囲内よぉぉぉ!?!?」 夕張の指がトリガーに力を込める 「いけない、那珂ちゃん、姉さん!! 早く退避・・・!!」 「ダメだよ、間に合わない!!」 爆発に巻き込まれ大破する それを覚悟して二人が目を閉じたその時だった #ボダブレ鎮守府

2016-02-10 00:42:37
深海さかな @dzurablk_kai

夕張の機体が榴弾を打ち出す寸前で、爆発し弾き飛ばされ壁に当たって煙を吹き上げる 「・・・間に合った」 振り返った神通と那珂が見たのは、今だ冷めやらぬ砲煙をたなびかせる巨大な砲身 その根本には、先程までの夕張のスペクター同様に構え動作を取った、川内のケーファー #ボダブレ鎮守府

2016-02-10 00:52:42
深海さかな @dzurablk_kai

「ドラードの弾を残しといてよかったよ」 ドラード重装砲、砲弾を真上へ打ち出す榴弾砲と違い、砲弾を平射することのできる背負い式大口径主砲だ 威力は同程度ながら、爆発範囲はやや抑えられており、それら特質のためにトンネルや地下のような閉所でも強大な火力を発揮できる #ボダブレ鎮守府

2016-02-10 00:55:19
深海さかな @dzurablk_kai

「くそ~!! もう少しだったのに!!!」 夕張の悔しがる声がコックピットに響く 「どのみちこの距離では、私は生き残ってたわよ」 「ふん、言ってなさいよ!! 次は私が勝つんだから!」 「はいはい」 苦笑する川内の目の前で、コックピットの電気が落とされる #ボダブレ鎮守府

2016-02-10 00:57:33
深海さかな @dzurablk_kai

遠くからのブザー音を聴きながらコックピットの扉を開け外に出ると、格納庫に立ち並ぶ卵のような形状の仮装シュミレーターからちょうど神通や那珂も這い出すところだった 「ご苦労さまでしたわね」 汗だくの川内の背中にかけられる、ドイツ訛りの強い日本語 #ボダブレ鎮守府

2016-02-10 01:00:09
深海さかな @dzurablk_kai

「あなたは・・・?」 神通が警戒心を露にする 軍の施設に私服姿の外人女性がいるのだ、当然の反応だろう 「あら、まだ上官さんから聞いてらしてないの?」 「那珂ちゃんは何か聞いてる?」 「んー、知らないよ?」 「まあ、いいですわ」 #ボダブレ鎮守府

2016-02-10 01:02:15
深海さかな @dzurablk_kai

その女性は緩やかにカールした金髪を風になびかせ、二人の間を抜けると、川内の前に立つ 「あなたがさっきのケーファーのパイロットさん? 意外と可愛らしい顔をしてるのね」 「あの、どちら様・・・?」 「私? 私は・・・」 自信ありげに髪をかきあげ仁王立ちになると、 #ボダブレ鎮守府

2016-02-10 01:04:48
深海さかな @dzurablk_kai

彼女は格納庫中に響き渡るくらい高らかに、自らの名を名乗った 「私はシェスティン、シェスティン・ヴァイル あなたの乗ってたシュミレーターや、これから乗る予定になるさっきの機体、その他もろもろの持ち主兼、訓練教官よ」 #ボダブレ鎮守府

2016-02-10 01:07:38