村子の水揚げ物語

キャンジャニ学園×関ジャニ∞ @canjani8kanjani

1 部屋のベッドの上、下の布団が見えないほどに広げられた服や靴や鞄やアクセサリー。 言葉通り、あの人は何でも買ってくれた。 たまたま一緒に外で見たのはその場で、雑誌を見ながら目を止めたのは次に会ったときには綺麗な箱に入って用意されてた。 最初は嬉しくて、あれもこれも…って。

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2 どんな要求にも嫌な顔一つ見せずに一言、ええよ、って。 そんな事が続いて、次第に疑念に変わる。 どこまで言うこと聞いてくれるんだろう？ そう思ってねだる物の金額はどんどん上がっていった。 まあ…こんな家に住みたいなあってボソッと言ったときはさすがに笑ってかわされたけど。

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3 何でこんなに？って一度聞いてみたことがある。 『ん？…まあ手付け金みたいなもんちゃう？』 手付け金。 あの日の約束。 「お前の18歳の誕生日、全部俺に買わせろ」 あの日あの人はそう言った。 それは私の処女を買う、そういう意味。

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4 そうはっきり言われたわけじゃないけど、私にはそう聞こえた。 そして私はそれを承諾した。 男の人とデートをしてお金を貰う。 女を、若さを、女子高生というブランドを最大に利用してお金を稼いでいた私。 仕事が急にキャンセルになってふてくされてたとこに声かけられたのが始まり。

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5 ラッキーと思って笑顔で振り向いた。 そこにいたのがこの人。 話をしてデートしてご飯食べて…ほんとはそれだけ。 それだけでもいいって男の人いっぱいいるの。 女子高生と話したい、一緒にいたい、それだけの人。 それ以上を求めてきた人には、ちょっと脅しをかけて拒否にして、終わり。

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6 なのに、何故かあの人だけは違った。 少しひるみそうになるいかつい風貌に似合わない子供みたいな笑顔。 短髪髭面のその下はそうそういない綺麗な造形。 少し身長は低いし華奢だけど、触れた体はちゃんと筋肉がついていて硬い。 それから、あの目。

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7 真っ直ぐ強く見つめて来るあの目に誘われて、体を許してしまった。 最後まではしてない。 あの人も無理矢理は求めてこなかった。 だから安心して甘えた。 一回いくらってお金を貰って。 いつもと一緒。サービスが増えただけ。 気持ちよくなってお金貰えるなんて言うことないじゃん。

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8 それだけって…そう思ってたのに、あの人の言葉に頷いてしまった。 それから会うたびに何かプレゼントを貰う。 あれもこれもって、その結果がこれ。 いつもはあっちから来る連絡がずっとなかった。 気になり始めたころ、しばらく忙しいって、それだけメッセージで。

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9 別に待ってないし、そんなこと聞いてないのに。 でも少しホッとして、少し寂しくて。 段々と他の仕事もしなくなった。 操立てとかそんなんじゃないけど…何となく。 別に他意はない、はず。 そうやって放っておかれたある日、授業中に届いてたメッセージ。 「26日行ける？」

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10 いきなりそれだけ。 ずっとほっといたくせに…もっと何かあるんじゃない？ 別に無視してもよかったんだ。 あっちが勝手に言ってきたことだし、いつものように拒否してしまえばそれで終わり。 家を知ってるわけでもないし、まさか学校まで押しかけてはこないはず。 でも。

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11 『うん』 震える指で返事をした。 「一日中でもええ？」 すぐに帰って来るメッセージ。 ドキンって胸が鳴った。 一日中って…やっぱりそういうこと？ これでダメって言ったらどうなるんだろう。 『大丈夫』 この返事は受け入れたことになるんだろうか。

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12 よくよく考えてみれば、そうはっきりと求められたわけじゃない。 私がそう解釈しただけ。 全然違う意味なのかも。 何となくそう言い聞かせてみる。 「どっか行きたいとこある？」 『海』 それっきり返事は帰って来なくて、その後の授業は全然耳に入って来なかった。

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13 今まで何してたの？ 何で連絡してこなかったの？ 言い訳くらいしたらどう？ こんな寒い時期に本当に海に行くつもり？ そんなこと思ってたら、日本史の村上に教科書で頭叩かれた。 もう…全部あの人のせい。 馬鹿正直に海に連れてくつもりなら、冬の海に叩き落としてやるんだから。

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14 その後また連絡もなく、悶々とした日々を過ごして。 そして明日。 今まであの人に貰ったものを出してみた。 改めて見ると凄い量。 そしてきっとすごい金額。 これだけお金使ったなら、やっぱり…しなきゃダメ、だよね…。 ふぅって溜息ついた。

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15 別にそうはっきり言われたわけじゃない。 ほら、今までだって似たようなことはしてたし。 触って、触られて、たくさん気持ちいいこと。 ただ最後までしてない、だけ。 拒否しても口で不満を言うだけで、あの人は乱暴なことも無理矢理なことも絶対してこなかった。

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16 ただふたりで気持ちよくなるだけ。 何だかんだで優しかった。 でも明日、最後までしたいって言われたら私はどうするんだろう。 約束？契約？そんなこと言い出されたら。 私自身はどう思ってるの？ 考えてみるけど…嫌じゃないんだ。 それが困る。 こんな関係なのはあの人だけ。

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17 それでもわかるように、多分私はあの人に好意を持ってる。 でも私たちの間はお金で成り立ってるから、これ以上どうしたらいいかわからないんだ。 そもそも明日が終わったら、もう連絡なんて来ないかもしれないし。 処女が好きなだけのロリコンかもしれないし。

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18 よくよく考えたらあっちだってむさくるしいオッサンだし。 どうせいつもみたいに髭面で適当な服装で来るんでしょ？ はぁって息を吐いてベッドに倒れ込んだ。 ずっと会ってないから、すっかり消えてしまった約束の印。 それをなぞるように首筋に触れる。

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19 明日何着て行こう…。 あの人が買ってくれた服たち。 どれが一番可愛く見えるかなって思ってる自分に気付いて、胸がチクチク痛んだ。

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20 指定した待ち合わせの場所にあの人はいた。 車にもたれかかって缶コーヒー片手に煙草をふかす姿。 こっちに気付いて、よっ！って手をあげる。 その姿に目を見開いて立ち止まってしまった私。 『…え？どしたの、それ…？』 「何？何や変か？」 『ぇ…髪の毛、とか…ヒゲも…』

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21 前見たときはツンツンの猿みたいな頭してたのに、髪の毛はすっかり伸びてヒゲだって綺麗に剃ってる。 「あ…忙しくて切る時間なかってん」 『…』 「伸びっぱなしになってもーたし、ヒゲもさすがに汚いか思てな…」 頭ぐしゃぐしゃにして顔をつるりと撫でる。

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22 アカンか？って不安そうに聞くから、思わず、んーん…って素直に言っちゃった。 『…そっちのがいいよ』 「…ならええけど」 ちょっと吃驚した顔で照れ臭そうに笑って助手席のドアを開けた。 何となくふたりとも無言のまま走り出した車の中。 チラッて隣を見る。

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23 正直髪型と髭がないだけでこんなに変わると思わなかった。 確かに整った顔してるって思ってはいたけど、それでもあんな男臭いオッサンが…こんなに可愛くなるなんて…反則…。 実際の年齢も知らずにオッサンとか猿とか言ってたけど、ほんとはもっと若いのかも…。

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24 この人のこと、名前しか知らない。 渋谷すばるって、まるで芸能人みたいな名前。 もしかして偽名かも。 変な仕事してる人かも。 こんなにお金使って…もしかしたら危ない人なのかも。 そんなこと思ったこともある。 でも…今ハンドルを握ってる姿はそんな風には見えなくて。

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25 あ…どうしよう、ドキドキする。 途中で怖くなったり嫌なことされたら逃げようって思ってたのに…。 あ、そういえば。 『ねぇ、どこ行くの？』 「ん？海行きたいんやろ？」 言葉の通り、車は高速に乗って湾岸線を走る。 本気？こんなに寒いのに？ばっかじゃないの？