【レッズ・エララ神話体系】「サラマンダー、疾走する嫉妬」
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レッズ・エララ神話体系 【サラマンダー、疾走する嫉妬】 ーー神代の神話。ある獣の話。(レッズ・エララの世界に古代より伝わるはなし。主に古代南天王国のあたりにて) (だいたいツイート換算で6~7ぶん)
2016-01-24 10:50:38昔むかしのことです。ある獣がいました。かなり神的存在に近いのですですが、どうしても神的存在になれない獣でした。その名を炎獣、サラマンダー。かれの炎は、満たされぬ嫉妬によって燃えています。1
2016-01-24 10:59:29一日の23時間、嫉妬に燃えています。この世の成功者を妬んで、この世の幸福者を妬んで、この世の平凡者を妬んでいます。残り1時間は、猛烈な鬱感情に苛まれて冷たくなります。地獄の生とは彼のための呼び名です。2
2016-01-24 11:02:28ある時、南国の美しい姫君に出会いまして。当然サラマンダーは妬むわけです。ところが、姫君はこう言いました。「暇なの?」炎獣は勢いあまって、焼き殺してしまいそう。ところが姫君「暇ならわたくしを守れば?」3
2016-01-24 11:05:26そんなケッタイな発言から、どういうわけか気まぐれか、サラマンダーは姫君に付き従うようになりました。姫君を狙う悪人、敵国を返り討ちにする日々です。……すると炎獣は、いつしか嫉妬する時間が減っていました。4
2016-01-24 11:10:25姫君は正しかったのです。「暇」と「自分だけ」の人生は、嫉妬に狂わせるのだということを。サラマンダーは深く姫君を忠慕しました。ところめが、実は姫君は不治の病に侵されていました。炎獣は敵からは守れますが、姫を治せません、救えません。5
2016-01-24 11:13:44姫君は最期に言いました。「サラマンダー、自分の幸せのために生きなさい」バカを申すな姫君、と獣は言いました。貴女あっての生だろう、貴女の教えと矛盾しているだろう。「矛盾して……いないのよ」さらっと息を引き取りました。6
2016-01-24 11:16:16それ以来ずっとサラマンダーは南十字星の空を駆けています。姫を悼む為に、忘れないために、空を赤くして刻むために。サラマンダーは知ってか知らずか、認められずか。姫君が託した「自分の幸せ」のありかを。 暁の空が、赤く悲しく見えるのは、そういうことなのですよ。7
2016-01-24 11:20:45【解題】炎獣サラマンダーの神話類型は南国の騎士道精神の発露として、永く伝承された。が、その実、以外なほどに、ここで描かれている「人生を狂わす嫉妬のタネ」は、教訓として語られてはいない。人間とは、なかなかに度し難い。(文:比較神話研究家「星詠み」)
2016-01-24 11:24:30