Love me Do(後編)

りえぷぅ @riem124blue

197 ―――――― 目が覚めたら、錦戸さんの腕の中に抱きしめられてて、長い睫毛がすぐ傍で見えた。 ミッション…達成できたのに…なんでこんなに悲しいんだろ…。 嬉しくて…すごく幸せなのに…悲しい…。 あの時、もう恋なんてしないんだ、できないんだ、そう思った。

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198 なのに…。 好きになってしまったら、その人しか見えなくて、そしてあたしだけを見ててほしいって思っちゃう。 それが重いらしくて、何人もの人があたしから離れて行った。 挙げ句にあの男はあたしの友達に手を出した…。 もうあんなこと、繰り返したくない…。

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199 あたし、どうするべき…？ 繰り返したくないんだったら、離れないといけない…？ 錦戸さんはカッコよくてステキで…きっとこれまでにないほどに重い女になる…。 でも…好きだから離れたくないよ…。 ほとんど無意識で寝ている彼にキスをした。

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200 普通の女の子なら、素直に好きになってもらう努力するんだろうな。 あたしって、本気になってもならなくても、なんてイヤな女…。 やっぱりあの人の血を引いてるんだな…最悪だ…。 錦戸さんの目が少しずつ開いて、ちょっと照れたように笑った。 錦戸「おはよ…。」

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201 ◇◇「おはよ…。」 錦戸「寝込み襲おとしたん？」 ニヤリとする。 ◇◇「してないもん。」 薄目で色っぽい顔になったかと思ったら、頬に手を添えてキスされた。 あーもぉ…朝からズルイよぉ…。 錦戸「…今日どうする？どっか行きたいとことかある？」

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202 ◇◇「どぉしよ…何も考えてなかった…。」 そんなこと考えてられないくらい、他に考えることいっぱいで。 錦戸「短い休み有効に使いたいけど…今日大晦日やろ？年末年始って世の中どぉなってんの？」 そういえば去年…その前も…男の為におせちの用意をしてたっけ…。

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203 ◇◇「うーん…あ、おせち…とまではいかないけど、何か作りたいから、スーパー行きたいな。」 錦戸「またなんか作ってくれるん？」 ◇◇「作りますよ♪それでゆっくりテレビでも見て年越ししましょ？」 錦戸「おん……俺はえぇけど…ほんまにそれでえぇの？」

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204 ◇◇「もちろんですよ！錦戸さんが一緒にいてくれるんだったら、それだけですっごく嬉しいです！」 錦戸「おまえ、またぁー…、///」 あ、なんか今…自然とホントの気持ちが言えたな…。 このまま素直になれたらいいのに…。 このまま錦戸さんが好きになってくれるような女に…。

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205 錦戸「つか、今何時？」 錦戸さんに背を向けて、ベッドの下にあるスマホに手を伸ばした。 スマホで確認したらまだ６時を過ぎたところ。 背中にくっついてきた錦戸さんも、あたしの肩越しにそれを確認した。 錦戸「なんやぁ、まだめっちゃ早いやん。」

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206 そういえばきのう眠りについたのって、随分遅かったよね…。 きのうの出来事が急に思い出されて、ちょっと恥ずかしくなる…。 そんなあたしに追い打ちをかけるように、錦戸さんの唇が背中を這う感触。 ◇◇「にっ…にしきどさ、ん…、」 錦戸「…その呼び方もぉやめたら？」

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207 ◇◇「えっ……あ、……なんて呼んだらいい……の…？」 背後から回された手が、胸を撫でた。 錦戸「この前みたいに下の名前で呼んだらえぇやん…。」 ◇◇「う、んっ……、りょー、くん…？」 錦戸「ん……、」 ダメだ……やっぱり…もう……負けだ……。

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208 きちんと起きたのは、もうお昼前だった。 スーパーへ行くついでに、近くのお店でランチ食べて、それからお買い物して帰宅した。 彼が弾くギターを聴きながら、料理を作る。 こんなに幸せでいいのかな…。 そういえば、あたしの最悪な恋愛の中にもこんな幸せ感じる瞬間はあったかも。

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209 でもいつも悪いことが起きて、そんなこと記憶の中から消えた…。 じゃあこの幸せも…？ 錦戸「うっわ、すごいなぁ！全部うまそぉ～♪」 亮くんの好きなものなら、とっくにリサーチ済みだし！ 時計の針は18時を回ったとこ。 テーブルに色んな料理を並べて聞いた。

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210 ◇◇「もう食べる？」 錦戸「食べる！えぇ匂いするからオナカ減ったもん！」 無邪気に笑う彼の為に飲み物を取ってきて、乾杯。 それからお料理食べて、テレビを見ながらまったり…。 錦戸「なぁ…？こんな年越しでホンマに良かったん？」 ◇◇「もちろん！」

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211 錦戸「実家…連絡はしたん？」 ◇◇「う、うん！電話したよ！」 嘘。 また嘘ついちゃった…。 だいたい連絡先も知らないし、教えてもない。 錦戸「そーなんや。ほんならとりあえずえっか。」 安心したように笑う彼。 ごめんなさい…亮くん…。

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212 あたしはこんなふうに２人きりで過ごす時間がホントに幸せだよ。 年越しだとか、そんなの関係なく。 そして、いつの間にか日付が変わる時間に。 錦戸「３、２、１…あけましておめでとーぉ！！」 楽しそうに言った彼に抱きついて、「おめでとう！」と言った。

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213 錦戸「俺…家族旅行なんか行かんと…これのが楽しいわ…。」 抱きしめてくれて、耳元でそう言われた。 どうしよう……そんな事言われたら、期待しちゃう…。 こんな嘘つき女、もしかして好きになってくれるかもって…期待してしまう。

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214 そもそも錦戸さんとお近付きになりたいって時に、自分がどんな女だ、とか考えてもなかったんだけど…。 こうやって考えちゃうなんて、もう戻れないくらい好きになったんだなぁ。 自分は変われることができるのだろうか。 錦戸さんに相応しい女に…。 嘘はなかったことに………。

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215 次の日、錦戸さんが約束通り初詣行こうって言うから、行ってからそのまま自宅に戻ることにした。 明日は仕事。 ここ２日、コンビニの下着でごまかしてたけど、さすがに帰らないと…。 錦戸「女って大変やなぁ…化粧とかって、めんどくさないん？」

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216 ◇◇「めんどくさいよー？でも、隣にいる女はちょっとでもかわいい方がいいでしょー？」 錦戸「んー……まぁ…そうかもやけど…おまえ、すっぴんもそんな悪ないで？」 ◇◇「そんな、ってことは、ちょっと悪いんでしょー？」 錦戸「やっ、そっ、揚げ足取んなやぁ…！」

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217 ◇◇「あはは！はいっ！化粧おわり！亮くん行こっ！」 なんかでも…ちょっとずつ自然でいれるようになってきたっていうか…。 ちゃんとカップル？みたいっていうか。 車で行こうって、初めて彼の車の助手席に座った。 錦戸「ぅわっ、さっむいな！」

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218 目的地に着き外に出ると、彼がポケットに両手を入れて身を小さくした。 しばらく歩くと、どんどん人が多くなってくる。 錦戸「すごい人やな…。」 ほんの少しだけ先を行く彼。 ポケットから片手を出して、前を向いたままあたしの前に手が差し出される。 これは…繋いでいいって事？

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219 正解はわからなかったけど、慌てて手を掴んだ。 彼はやっぱり前を向いたままだったけど、その手はギュッて握り返されて。 瞬間に胸もキュッてなった。 でもすぐに手水舎に着いて、手を離す。 手や口を清めて、ハンカチで冷たくなった手を拭いた。 彼を見たら手をパタパタとしてる。

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220 すぐにハンカチを渡す。 「ありがと」って残った水を拭いてハンカチを返したら、何事もなかったように自然に繋がれた手に、再び胸がキュッとなった。 こんなことでいちいちトキメクなんて、まるでコドモみたい？ 自分があまりまともな恋愛をしてこなかったことが、身につまされる。

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221 お賽銭投げ入れて並んで参拝。 このまま亮くんと幸せに…。 自分の性格とか嘘を抜いたら、身も心も相性は悪くないと思うんだけど…。 「おみくじひく？」 「あ、お神酒あんで。」 手を離してはまた自然と繋いで…。 こんな自然がいちいち嬉しい。