『カム・アウト・スウィンギング』

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きゃんてら @Cantera36

言わんこっちゃねえ、ほとんど即死じゃないか! #S57Ninja

2016-02-21 23:46:14
ジュセー @shiroboshi2

「アバーッ!」タイヤに引き摺られていく少女。こんなはずではなかった。少し当たってみるだけのはずだった。車は止まらなかった。彼女を跳ね飛ばしても、止まらなかった。そのまま数メートルか、若しくは数十メートルか……彼女は引き摺られていった。12 #S57Ninja

2016-02-21 23:48:14
ジュセー @shiroboshi2

「……アバッ……」逃げるように走り去っていく車を、少女は霞んだ視界のなかに見送った。身体が冷たくなっていく。「……ナンデ……こんな……私、は、ただ、カネが欲しかった……だけ……」眼に涙を浮かべながら、ドクロめいた月を見上げる。インガオホー、と月は言った。13 #S57Ninja

2016-02-21 23:52:42
ジュセー @shiroboshi2

少女、ハナバタ・ナナはあまりにも愚かだった。自らが招いた死に、彼女は幾分かの恐怖を覚えた。どんどん身体は冷たくなっていく。「……?」ナナはふと、違和感に気づく。ここは何処だ。僅かに首を巡らせる。うらぶれた道路ではない。今彼女は、海に居る。沈んでいっている。14 #S57Ninja

2016-02-21 23:58:15
ジュセー @shiroboshi2

底へ、底へと。遅くもなく、早くもなく。ナナは底の方を見やった。ただ暗闇が広がっているだけだったが、そこに至れば自身に死が訪れるということを彼女は悟った。海上へ昇っていく泡に釣られて、上を見上げる。泡は01のノイズとなりながら海に溶け込んでいった。15 #S57Ninja

2016-02-22 00:07:11
ジュセー @shiroboshi2

現実感のないこの状況に眩暈を覚え、彼女は一時眼を閉じた。 ……再び眼を開けた時、彼女の前には先程までは無かったものがぶら下がっていた。ブッダの降ろす蜘蛛の糸であれば、ナナは喜んでこれを掴んでいただろう。だがそれは蜘蛛の糸ではなく、何らかの触手であった。16 #S57Ninja

2016-02-22 00:13:22
ジュセー @shiroboshi2

触手の根元の方を目線で追う。人影。朧気なシルエットが海上に浮かんでいる。その腕の辺りから、触手は伸びていた。(((定命者よ。生を求めるならば我が手を掴め。死を求めるならばそのまま沈んでゆけ)))超自然的なエコーがかった声が、ナナのニューロン内に響く。17 #S57Ninja

2016-02-22 00:19:09
鹿奈しかな a.k.a SS @RiverInWestern

ニンジャソウル……! 本当になんかまともな人って感じだ! ニンジャだけど #S57Ninja

2016-02-22 00:19:44
ジュセー @shiroboshi2

(((選択権は貴様にある))) ……声が遠のいていく。「エ……?」ナナは触手と朧気なシルエットを交互に見る。朧気なシルエットは、ただジッと佇んでいた。「生きるか、死ぬか?……そんなの」彼女は手を伸ばそうとし、そして……手を止めた。「そんな、の……」18 #S57Ninja

2016-02-22 00:26:14
ジュセー @shiroboshi2

沈んでいく。01の泡が幾つも浮かんでは消え、浮かんでは消え。「そんなの、決められない」ナナは物憂気な顔を浮かべながら言った。このまま生を選んだところで、またあの苦しい生活に戻るだけだ。かと言って、死に抵抗がないわけではない。「……実際迷うよ、こんなの」19 #S57Ninja

2016-02-22 00:32:28
ジュセー @shiroboshi2

こんな状況で選択権を委ねられたくなかった。生きることを強要するか、いっそのこと死へと突き放すか。そのどちらかにして欲しかった。朧気な影は、そんな彼女を見下ろしながら、静かに佇んでいる。こちらが決定を下すまで、そうしているつもりなのだろう。20 #S57Ninja

2016-02-22 00:36:57
ジュセー @shiroboshi2

ナナはもう一度底を見た。無限に広がる暗闇を。沈みきってしまえば案外楽なのかもしれない。底を見つめながら、彼女は口を開いた。「あなたの意見を聞かせて欲しいな。参考までに」……少しの間が空いたのち、またあの超自然的なエコーがかった声がニューロンに響いてきた。21 #S57Ninja

2016-02-22 00:42:20
ジュセー @shiroboshi2

(((私の意見などない。生を選べば貴様は生を得る。ニンジャとしての生を)))「……ニンジャ?ニンジャ、ナンデ?」思わずナナは言った。ニンジャ。フィクションの産物……だがその響きは今、妙な現実味を帯びていた。「ニンジャ……」彼女は吊るされた触手を見据える。22 #S57Ninja

2016-02-22 00:47:52
ジュセー @shiroboshi2

彼女の中で、少しの好奇心と、欠片にも満たない希望が顔を覗かせた。ニンジャ。ニンジャになれば、何かが変わる。力を得ることができる。何故かそう確信できた。ナナは辿々しく手を伸ばし、触手を掴む。(((そうか。ならば貴様は私になり、私は貴様となる)))23 #S57Ninja

2016-02-22 00:52:51
ジュセー @shiroboshi2

周囲が01ノイズに塗れていく。朧気なシルエットは溶けていき、そしてナナの中へ入り込む。01ノイズはどんどん増えていき、海は消失していく。最後に少女は、あの超自然的なエコーがかった声を聞いた。(((ドーモ、ハナバタ・ナナ=サン。私は……)))24 #S57Ninja

2016-02-22 00:58:26