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shiroboshi2
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ジュセー
@shiroboshi2
「キリネ？……キリネ！」か細い少年の声が、少女の耳に届いた。少女は、キリネは、目を覚まし、冷たい床から身を起こした。そして声の主、サトキを寝ぼけ眼で見る。彼は心配そうな顔をしていた。「オハヨ」キリネは軽く会釈する。「オハヨ……じゃないよ！遅刻しそうだよ！」1 #S57Ninja
2015-10-14 22:02:30
ジュセー
@shiroboshi2
サトキは慌ただしく言う。「私が遅刻しそうだっていうなら、アンタもそうでしょ」キリネはぶっきらぼうに返し、フラフラとしながら立ち上がった。「だってキリネが起きないから……」「先に行っておけばよかったのにね」……二人は他愛のない会話を続けながら部屋を出た。2 #S57Ninja
2015-10-14 22:05:55
ジュセー
@shiroboshi2
そうして、冷たい廊下を歩く。鉄の壁には『明日が大事』『よく睡眠』『ユウジョウ』などと書かれたシャドーがズラリと掲げられている。キリネはそれらを不快そうに横目で流す。サトキはそんな彼女を見上げながら、不安そうな顔を作っている。3 #S57Ninja
2015-10-14 22:09:57
ジュセー
@shiroboshi2
キリネはサトキの表情に気づき、彼の頭をポンと叩いてやった。二人は長い廊下を歩く、歩く。そして、カーボンフスマの前に辿り着く。二人はフスマを開き、中へ入る。そこにいた者たちが、一斉にキリネとサトキを見た。そして、アイサツをした。「「「「オハヨ！！」」」」4 #S57Ninja
2015-10-14 22:13:52
ジュセー
@shiroboshi2
彼らは、年齢の大小こそあれど、みな子供だ。その目に活気はない。虚無的な目だ。キリネは、他者から見た自分も、きっとこういう眼をしているのだろう、と思った。彼女は不安そうなサトキの手を引き、二人分ポッカリと空いているスペースに歩いていく。そして、その場に座った。5 #S57Ninja
2015-10-14 22:17:53
ジュセー
@shiroboshi2
「オハヨ。今日は、少しばかり遅かったようだね」キリネとサトキに投げ掛けられた言葉。キリネはゆっくりと、サトキは慌てながら、声の主の方を見る。最奥に座する、身長6フィート程はある、筋肉質な男。彼はニコニコと笑いながら、二人を眺める。「いやなに、遅刻ではないよ」6 #S57Ninja
2015-10-14 22:22:02
ジュセー
@shiroboshi2
男の太い首から掛けられたタグには『ユミヤス・モリヤ』と書かれている。これが、この男の名だろう。キリネはそう結論付けている。ここに来た時に自己紹介をされたが、彼女はその時のことを殆ど覚えていない。覚えようともしなかった。思い出す気もない。7 #S57Ninja
2015-10-14 22:25:07
ジュセー
@shiroboshi2
「よし。これで揃ったね」ユミヤスは言い、室内を見渡す。そしてスピーチを始めた。毎朝の日課だ。サトキは聞き逃さぬよう必死に耳に入れる。キリネは何もしない。ボーッとしながら、室内の子供達やサトキ、ユミヤスを眺めるのみだ。スピーチがいつ終わるのか、彼女は知らない。8 #S57Ninja
2015-10-14 22:30:02
ジュセー
@shiroboshi2
暗い室内に、三人の影。一人はキリネだ。残る二人が誰なのか、どういった身分の者なのか、彼女は知らない。性別が男性であることはわかる。何をしているのか、何を目的としているかも、わかる。彼女はただただ、息を殺し、耐え凌ぐ。男達の荒い息が、彼女の顔に吹きかかる。10 #S57Ninja
2015-10-14 22:33:51
ジュセー
@shiroboshi2
「アイエエ！」ナイノラは泣き叫びながら、獰猛なる獣から逃げる。だが厳重な檻が、彼の逃亡を許さぬ。「コロセー！」「コロセー！」「コロセー！」その様を見ながら熱狂する観衆。「アイエエ！」ナイノラは振り向き、悲鳴を上げた。刹那、鮮血が散った。「「ウオオーッ！」」12 #S57Ninja
2015-10-14 22:38:14