ヴォリンガー『ゴシック美術形式論』文庫化までの15年の経緯

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文春学藝ライブラリー @bunshungakugei

ヴォリンガー『ゴシック美術形式論』を2016年2月に刊行します。刊行に至るまでには15年にわたる物語が。これから少しずつお話ししていきます。今、その物語の最重要人物からの解説を待っています。#本当に売る

2015-12-15 23:26:13
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ヴォリンガー『ゴシック美術形式論』が文春学藝ライブラリーより発売中です。goo.gl/Txm1p3 行き届いた石岡良治氏の解説を得て、この本を送り出すまでには、15年ほどの歳月が流れました。ここからは刊行の余談として、その物語を。

2016-02-23 12:06:39
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『ゴシック美術形式論』の文庫化担当・波多野が石岡氏に会ったのは、2000年前後だったでしょうか。道端の通りすがりに友人に紹介されたのが最初だったような気がしますが、記憶がおぼろげです。2001年に岡﨑乾二郎氏の『ルネサンス経験の条件』の刊行が石岡氏との再会を促します。

2016-02-23 12:10:49
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当時、「文學界」編集部にいた波多野は、『ルネサンス経験の条件』を拝読して、驚愕。理解を越えるところもたくさんありましたが、とにかく興奮しました。見境なく数冊を購入して、身の回りの人にやみくもに勧めてしまったほどです。そんなとき、著者に会いに行けるのが、編集者の仕事です。

2016-02-23 12:13:09
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広島県の灰塚で岡﨑氏によるワークショップが開催されていることを知り、単身、飛行機とバスを乗り継いで、灰塚に辿りついたところ、そこには何とワークショップの指導を手伝う石岡氏がいました。それからしばらくして、私は現代美術批評の基礎を石岡氏に講義していたくことにしました。

2016-02-23 12:17:15
文春学藝ライブラリー @bunshungakugei

もちろん、テキストは「モダニズムのハードコア」です。すでに刊行から数年が経っていましたが、その影響は絶大でした。「ハードコア」に訳出されたグリーンバーグ、フリードなどのテキストを原文とともに石岡氏に講義していただきました。

2016-02-23 12:19:41
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「ハードコア」路線が、あるとき、リーグル、ヴェルフリン、ヴォリンガーなどのドイツ美術史に分け入っていきます。きっかけは、ロスコの絵をグリーンバーグが論じて、ヴェルフリンを引用していたことです。曰く、ロスコの絵のすごいところは、色彩の体験と絵画の開放性を両立しているところだと。

2016-02-23 12:21:47
文春学藝ライブラリー @bunshungakugei

石岡氏によれば、このグリーンバーグの記述は、ヴェルフリンの『美術史の基礎概念』をもとにしている。ロスコはルネサンス絵画の特徴である色彩の体験とバロック絵画の特徴である開放性を兼ね備えている。このようなルネサンスとバロックのフォーマリスティックな規定をしたのが、ヴェルフリンだと。

2016-02-23 12:24:15
文春学藝ライブラリー @bunshungakugei

ここから「現代美術批評講義」は、ヴェルフリンの『美術史の基礎概念』、ヴォリンガーの『ゴシック美術形式論』の講義へと入っていきました。双方ともに非常に刺激的でしたが、とりわけヴォリンガーの「思弁」には興奮しました。数年後、私はフランスのゴシック教会めぐりに旅立ちます。

2016-02-23 12:27:01
文春学藝ライブラリー @bunshungakugei

そのときに撮影した一葉が、帯のランス大聖堂です。石岡氏の解説によれば、『ゴシック美術形式論』は、現代の美術史や建築史では、「思弁的」だとあまり受けがよくないそうですが、強烈に面白い。人は美術史家や建築史家になるために生まれてくるわけではありません。

2016-02-23 12:29:40
文春学藝ライブラリー @bunshungakugei

ヴォリンガーの面白さに多くの人がとりつかれてほしい、という思いは、絶えることがありませんでした。その思いが、今回の文庫化に結実しました。この場を借りて、講義から解説までを与えてくれた石岡氏に感謝します。ありがとうございました!

2016-02-23 12:32:29