【レッズ・エララ神話体系】時雨とエヴィル ~人斬りお嬢と変態天才黒魔術師 第1話「エヴィルの手記」

レッズ・エララ神話体系、中世篇クロニクルです(連続連載長編) 当神話体系とは? http://togetter.com/li/845372 続きを読む
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8TR戦線行進曲/レッズ・エララ神話体系 @RedsElrla

生まれつき病弱だった、というのもある。だが、これは天才だけにしかわからん領域かもしれん。運命というものを、早いうちから悟ってしまっている。俺様は、そんなに長く生きられない。駆け抜けるようにしか生きられない。

2016-02-25 08:00:06
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だったら、この世のすべてを舐めつくすようにして、味わいつくそう。そして、この世にまだまだある「可能性」を知りたい。城の中で、沢山の書物を読んだ。読みまくった。そして魔術を修めた。学問を修めた。だが、それは書物の知識でしかないことを知っている。

2016-02-25 08:04:05
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書物を読んでこと足れり、とする一群がいるのは知っている。俺様もそうなりがちな人間であった。それにならなかったのは、魔術を修めているときの、「意外にどうにもならなさ」が大きかったといえる。魔術は、理論だけではない。現実を書き換えるものだ。

2016-02-25 08:08:02
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それにならなかったのは、魔術を修めている時の「意外にどうにもならなさ」が大きかったといえる。魔術は、理論だけではない。現実を書き換えるものだ。そこで、理論がいかに出来上がっていようと、この世の自然とミスマッチするとき、理論を書き換え、魔術式を書き換える。自然とはままならぬものだ。

2016-02-25 08:15:11
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そこで知る。この世は、書物で「だいたいこのようになってる」というよりは、もっともっと不可思議だということを。

2016-02-25 08:15:45
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ともかく、俺様は旅に出ることにした。知らないことを知るために。知ってる事の「こんなもんじゃねえだろ」を知るために。そして住んでいた廃墟の城を後にし、遠くまで出ることにした。荷物は、時空魔法「倉庫(ロッカー)」にだいたい収めてある。四次元空間のスペースにモノをぶちこんでおける魔法だ

2016-02-25 08:16:05
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ていうか、俺様のように時空魔法を修めていれば、所帯持ちが保有する荷物くらいはどこにでも持っていけるのだが、そもそもそんなにモノを持っていってどうすんだ、この旅に、ちうのがある。

2016-02-25 08:18:02
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はじめの町は、収穫がなかった。人間っていうものはよほど、確定性がない噂話と、ちょっとばかりのしょぼい小遣い稼ぎに汲々としているということを知ったくらいだ。俺様からしたらつまらんかった。

2016-02-25 08:21:03
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俺様が知っているはずの経済学は、もっとマクロを相手にしたダイナミクスで、人間の欲望が竜のごとくうごめくものだと思っていた。それがどうだ、たいして旨くないトマトの額を、店先で1割切った張ったがすべてかお前ら、といわんばかりの経済しかないのだ、この町には。

2016-02-25 08:24:00
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魔術のレベルも知れたものだった。この程度の白魔術、黒魔術、俺様が五歳のときに覚えたぞっていうのを、町の魔術師ギルドの長が偉ぶって講義しているのは頭がいたい。 どうやら、人間の世界というものは、ずいぶんレベルが低いらしい、と思った。

2016-02-25 08:27:03
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次の町も同じようなモンかと思っていた。だが、ここで意外な賢人と出会う。 そいつは、物乞いをしていた。周りの連中はそれを遠巻きに見ていたが、俺様はぎょっとした。そいつの魔力量が、異常すぎるほど莫大だったからだ。俺様よりも多い。純度も高い。なのに、物乞い?

2016-02-25 08:30:06
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「ちょいとそこ行く旦那様お嬢様、この恵まれないナイスガイに少しばかりの金子を……」 お前何がナイスガイなんだよ、と突っ込みたい気持ちは誰もが共有してるだろうが、まあ面白い見世物ということで落ち着いているのだろうか。しかし俺様は、興味が勝った。

2016-02-25 08:33:05
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「アンタ、どうして物乞いの真似なんかしてるんだよ」 「フフフ、私は物乞いのナイスガイに過ぎません……」 「嘘付け」 俺様は、その場に四本の巨大な氷柱をつくった。周りの連中はギャーギャーわめいた。俺様はそれを浮遊させて、刃を向けるかのように、物乞いナイスガイに向けた。

2016-02-25 08:37:03
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するとナイスガイは、ちょんちょん、と指で氷柱に触れて雲散霧消させた。 「ほらな、やっぱり」 「その御歳で具現化幻術を修めているのは、驚いたな。才気あふれるとはこのことか。だが、人を試すような真似は関心せんな」 ガラッと声色を変えたナイスガイ。その眼光一閃だけで、周囲が凍りついた。

2016-02-25 08:41:04
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そいつの眼光には、そいつの放ったことばには、なんというか、オーケストラが音を「ぐわんっ!」って鳴らしたときの圧力がそこにあった。 「ついてこい、若き天才よ」 13歳の天才の俺様はついていくことにした。

2016-02-25 08:45:02

第1話(3)「ナイスガイは師匠だったのか!!!」

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レッズ・エララ神話体系 中世篇「時雨とエヴィル ~人斬りお嬢と変態天才黒魔術師」 第1話「エヴィルの手記」(3)ナイスガイは師匠だったのか!!! #レッズエララ

2016-02-29 00:34:05
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2016-02-29 00:37:15
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【前回までの簡単なあらすじ】13歳の天才・エヴィルは世の中をナメくさっていた。そんななか、ナイスガイな物乞いに出会った。

2016-02-29 00:38:19
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町の外の洞窟。 「何が出来る?」とナイスガイは聞いてきたので(そういえば、こいつの名前を最後まで聞かなかった)、俺様は出し惜しみをせず、最大の禁呪まで披露しようとしたら、ナイスガイに頭をはたかれた。 「てめえ何をするか!」 「エヴィル、お前こそそれが何だかわかってるのか!?」

2016-02-29 00:39:09
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「そりゃあこの圏域一体を死の大地にする……」ナイスガイはため息をつく。「お前さんに足りないのは、バランス感覚だな」「それは俺様もないと思っているが、世間の他人(ひと)に合わせる必要なんてないだろ」「抜き身の刀のような人間だな。そんなんじゃ……」「もっと凄い奴にノされる、ってか?」

2016-02-29 00:51:03
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その手の説教は聞き飽きた。人生訓ってやつは好きじゃねえ。俺様のような規格外の人間にはそれは通用せんのだ。 だがナイスガイは、ちょっと別のことを言った。 「……案外、そういう過激な生き方って、ツマンナイもんだぞ」 俺様は、ナイスガイが奇妙に言いよどんだことに気になった。

2016-02-29 00:54:03
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こいつが魔術や真理を修めていることはよーくわかったが、こういう形で奇妙に染み入るように話すことは珍しいからだ。 「……ナイスガイ、何が言いたいんだ?」 「お前さん、自分は今のところ、このままいけば、すべてが見通せる、って思ってるだろ、自分の魔術や学問で」 「当然だろう」

2016-02-29 00:57:02
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「それは、学問の客観性によるものか?」 「それが学問だろう?」 「……それは、違うぞ」 再び、オーケストラのような圧力で俺様に対峙するナイスガイ。

2016-02-29 01:00:01