- Douron1211
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そんなある日のこと、スポンサーREXの社長が自ら現場視察に来るという。何もよりにもよってなぜこんなクソ忙しいときに来るであるか、全く。
後に聞いたところでは、スポンサー側の直接の担当であるミスターREXは、上司に現場視察を仰せつかっても、監督以下現場の人間の顔を見るのを怖がって 新宿のゲームセンターで時間を潰していたというくらいで、並の神経なら修羅場のアニメスタジオに顔を出すような真似はしない。
それを平気で出来るのが「社長」の器というものか。
ともかく金を出してくれている人間だ、丁重に迎えねばなるまい。それに何と言っても「社長」だ。その差し入れには期待大というもの。
(中略)
「どうもお世話になってます。」
社長が快活に白い歯を見せる。
「どうもご苦労様。アニメのことは分からないけど大変なんでしょう?」
メチャメチャ大変です。
「どうも遅れていて申し訳ありません」
「それでも一月後には完成した物が見られるそうですね」
ギクリ。思わずプロデューサーの顔に目を走らせる。出来るわけねぇだろ。
「は……鋭意…努力しております」
嘘ではないさ。
「これ、スタッフのみなさんでお召し上がり下さい」
差し出された包みに一瞬目を疑う。
ヒロタのお菓子。
「ありがとうございます……」
以前参加した「老人Z」という作品で、スポンサーのソニー(ミュージックエンタテインメント、だと思う)から“カップヌードル”ワンケースが届い て「アニメーターを舐めてるのか!?」と言いながらも、夜食に有り難く食べたことがあったが……ヒロタのお菓子。ヒロタのお菓子を差別するわけではない が、「社長」には不似合いな気がするのは私だけの感想ではないはず。気持ちが大事とはいえ、仮にも「レックスエンタテインメント」、エンタテインメントと いうからには、まずは周りの人を楽しませるくらいの神経をもっと持ち合わせて欲しいぞ。
(強調はまとめ主)